日本酒オタクの立場から見て「おっ、この店やるじゃん」と感じる日本酒取り扱い店について書いてみます。
酒のメニューがない
前回の日本酒愛のない店で書いてあることと一見矛盾するようですが、逆にここまで振り切ってくれると潔く感じます。
店の意図としては「酒のチョイスは私どもに完全にお任せください」ってことですね。これはよほど自信がないとできません。
客の立場からすると自分で選ぶのも楽しいですが、完全にお任せすることで未知の出会いやペアリングを体験できるかもしれないわけで、これも一つの楽しみ方。
お客様がどの程度日本酒に馴染みがあって、どんな好みで、何と合わせようとしているか。もっと踏み込むとその日の体調や気分までも察知してベストな日本酒を提供する。酒の知見はもちろん相当なコミュニケーション能力も要求されるスタイルですが、ここまでできる店は強いですよね。
ただし、一人に一人の対応に手間がかかりすぎるので、業務のバランスを取りながら客単価を上げていく努力は必要になると思います。
どんな酒でも燗をつけてくれる
大吟醸などに対しては燗付けを拒む店があるとかないとか。僕自身はそういう店に当たったことはありませんが、そもそも燗付けをやってない店は多いかな。
ご存知のように日本酒は温度で味が変わります。日本酒ファンとしては、とりあえずどう変わるか試してみたいんですよ。
ある程度経験値が高くなると、燗付けに向いた酒とそうでない酒は試すまでもなく大体わかるようになりますが、それでもたまに驚くような変化をする酒もありますから、やはり経験値にあぐらをかいていてはいけないのです。
少し話がずれました。
とにかくこういった面白さや顧客心理をちゃんと理解してくれている店は、どんな酒でも燗をつけてくれます。もちろん、失敗して不味くなることもあり得ますが、それはそれ、事前に「香りがすごく強くなってバランス崩れますがいいですか?」などと聞けばいいんです。
日本酒のチョイスに一本筋が通っている
当たり前といえば当たり前ですが、日本酒のチョイスにしっかり意図が感じられる店はまた来ようと思えます。
例えばご主人の出身県の酒を中心に提供するとか、純米燗酒にこだわるとか、マニアックな酒しか置いてないとか、逆に入手しやすい酒を中心に揃えている店もいいですね。酒茶論さんみたいに熟成酒にこだわるというのも面白い。
とにかくテーマがあり、そこに店のメッセージが込められていれば店としての強度は上がります。
恐らくどの店もコンセプトはしっかり考えてらっしゃると思いますが、それに沿ったチョイスをすることが重要です。
自家熟成の酒がたまにある
日本酒オタクとしてはたまらないですねー。温度同様、熟成による変化も日本酒の魅力の一つですが、単純に他で飲めないものが飲めるという以上に、店主に対するシンパシーを感じてしまうのですよ。
ああ、この人は俺と同じ人種なんだ、探求心旺盛な日本酒バカなんだなあと。
ですから表面だけ真似て適当な酒をそのまま冷蔵庫に放置してうちの自家熟成ですと言って出すのはやめましょう。本当に好きな人じゃないと底の浅さがすぐに露呈して逆効果です。
常温保管と冷蔵保管を使い分けている
昨今は冷酒での提供が普通になっていますが、日本酒はなんでもかんでも冷やせばいいってもんじゃないんです。
その酒に応じた最適な温度があります。例えば山陰系の火入れ純米酒なんかは冷やす意味があまりないです。日置桜とか山陰東郷とか辯天娘とか諏訪泉とか、こういったタイプは酒質が強いので常温放置でもそう簡単には崩れません。むしろ冷やすことで味が閉じてしまい本来の力を発揮できないのです。
日本酒はデリケートだから必ず冷やして保管しなきゃダメなのでは?という声も聞こえてきそうですが、そんなことはありません。
確かに生酒は生老ね香が発生することもあるので、常温放置は推奨できませんけど、最近の酒の大多数は火入れならそうそう老ねたりしないと思います。
もっと言えば常温放置することで変化を早めるのもアリだし、なんなら銘柄によっては生酒でもあえて常温放置する店もあります。
とにかく、その酒の特質を理解して、それに合った保管と提供をすることが大事です。
禁煙もしくは香水禁止
池袋の希紡庵さんなどは入口に張り紙をしてますね。
香りも日本酒の楽しみの一つ。それをほかの強い匂いで混乱させるのは日本酒ファンにとって迷惑でしかない。
ちなみに自分でも、ついうっかり香りの強い石鹸などで手を洗ってしまい、それから酒を飲むと香りが混ざって気持ち悪くなります。
こういう店はせっかくの日本酒を台無しにされるのも嫌なんでしょうね。そして何より日本酒ファンを大事にしてくれてるのが伝わってきます。
以上、日本酒オタク視点からの日本酒愛にあふれた良い店でした。参考になりましたでしょうか?
それではまた!