コラム

検索ワードから読み解く日本酒ペアリングの現状

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昨年11月末ごろに立ち上げたPonpairですが、もうすぐ約一年が経とうとしています。記事も100を超えましたし、いい機会なので、Google Analyticsを使って「ペアリング」を含む検索クエリを分析してみたんですよ。

その結果、日本酒のペアリングが世間でどのくらいの市民権を得ているのかが見えてきました。

分析結果を見る

まずは検索クエリの上位20位を見てみましょう。

検索クエリ表示回数分類
日本酒 ペアリング1,567全般系(ライトユーザー)
最先端の日本酒ペアリング1,124学習系(ヘビーユーザー)
日本酒 ペアリング 東京642飲食店系(ミドルユーザー)
日本酒ペアリング577全般系(ライトユーザー)
日本酒 ペアリング コース397飲食店系(ミドルユーザー)
フードペアリング理論 本263学習系(ヘビーユーザー)
イタリアン 日本酒 ペアリング226飲食店系(ミドルユーザー)
日本酒ペアリング 東京144飲食店系(ミドルユーザー)
ペアリング 日本酒139全般系(ライトユーザー)
日本酒 ペアリング 本106学習系(ヘビーユーザー)
ペアリング 東京98飲食店系(ミドルユーザー)
ペアリング 酒92全般系(ライトユーザー)
ペアリング お酒90全般系(ライトユーザー)
東京 ペアリング83飲食店系(ミドルユーザー)
ペアリング おすすめ82
お酒 ペアリング81全般系(ライトユーザー)
ワイン ペアリング 基本81全般系(ライトユーザー)
フードペアリング 本48学習系(ヘビーユーザー)
酒ペアリング30全般系(ライトユーザー)
フードペアリング 酒28全般系(ライトユーザー)

ここで言う検索クエリとは、Googleで検索をし、検索結果に当サイトが表示されたワードの組み合わせを指します。その後に当サイトがクリックされたかどうかは不問です。

期間は2019年4月1日から10月31日までの半年間。(サイト開始の11月から3月くらいまではまだ記事の数が少なく、当然検索しても引っかかってこないので対象外とします。)

検索ワードは3つに大別できる

これらの検索ワードを分析すると、大きく3つの検索語群に分類することができました。

日本酒ペアリングに興味があるライトユーザー

最も多いのが「日本酒 ペアリング」「酒 ペアリング」といった、日本酒ペアリング全般に関する検索。

これだけだと漠然としており、具体的に日本酒ペアリングの何を知りたいのか見えづらいところはあります。

日本酒と料理のペアリングに何らか興味がある人が検索していることは間違いありませんが、本気で知りたい人はもっと具体的で細かいワード指定をしてくるはず。なので、ここはいわゆるライトユーザーが大半ではないかと推測できます。

店を探しているミドルユーザー

次に多いのが「日本酒 ペアリング 東京」「日本酒 ペアリング コース」など飲食店を探していると思しきもの。

美味しいものは好き。だから日本酒のペアリングも興味があるけど、自ら勉強するのは面倒。とりあえず簡単に味わうためには、それを提供している店を探すの手っ取り早い。

そんな感じの、ライトユーザーよりはもう少し進んだ方々が検索していると思われます。

本を探しているヘビーユーザー

最後に「フードペアリング理論 本」「日本酒 ペアリング 本」などのワード。店を探している人と同じくらいか、やや少ないくらいの数になります。

このレベルの人はガチで日本酒ペアリングに興味のある人ですね。飲食店関係者か、食通か、日本酒マニアか。本当はこの層がもっと増えてほしいんですが、残念ながらまだまだ。

なお、この検索語群には千葉麻里絵さんの本「最先端の日本酒ペアリング」も含まれています。割合としては7割ほど。かなり多いですね。この方たちは学習意欲があるというより、千葉さんのファンだったり本そのものに興味があるというケースも多いでしょう。

ですから、それを勘案したら純粋にペアリングを学ぼうと思っている人の数はかなり少なくなってしまいます。

ペアリングの方法論には興味なし

このサイトのウリでもある、日本酒ペアリングの方法論に関する専門的なワード、例えば「五味」とか「酸」とか「香り」「テクスチャー」といったもので検索される方は、下位まで行ってもほぼゼロ。皆無と言っていいです。

そこまで突っ込んで学びたい人がほとんどいないんですね。というより、興味はあっても、その具体的なワードが思い浮かぶまでに至っていないんでしょう。

日本酒ペアリングは意外に盛り上がってない

一般レベルではほとんど浸透していない

ここまでの分析から読み取れること。それは「日本酒ペアリングは意外に盛り上がってない」という悲しい現実。

しばらく前からの日本酒ブームはまだしぶとく続いている印象ですが、それに伴って日本酒のペアリングに関する話題もちょいちょい目にします。

イタリアンやフレンチの店で日本酒を出すようになったとか、千葉麻里絵さんが日本酒ペアリングの本を出版したとか、一見盛り上がっているようにも見えますよね。しかし実のところ、一部のメディアや早耳の食通レベルが話題にしているだけで、およそ一般レベルに浸透するには至ってないんですね。

日本酒ペアリングを追求している店がどれほどあるのか

第一、日本酒ペアリングを真剣に追及して売りにしている店が非常に少ない。下記でもまとめていますが、ここに載っていない店も含めて洋食系では都内でせいぜい30店舗がいいところでしょう。

都内にイタリアン、フレンチなど洋食系の飲食店はおよそ5000店弱と言われますが、そこから考えたら雀の涙ほどもありません。

もちろん、普通の居酒屋にまで広げれば、日本酒と料理の相性を考えている店の数はかなり増えますが、それでも真剣にペアリングに取り組んでいる店はごく僅かでしょう。

大概はお客さんの好きなように、つまみも酒も選ばせるスタイルが主流です。もちろん、それはそれでいいんですが、せめてメニューに「この酒ならこの料理を」または「この料理ならこの酒を」というリコメンドくらいあったっていいじゃないですか。

そこまでしないにしても、店員に聞いたら即座に「これが合いますよ!」という答えが欲しいんですが、そこで満足させてくれる知識とスキルを持った店員がいる店はまだまだ少ないのが現状です。

要するに飲食のプロは、日本酒ペアリングにそれほど興味がないんでしょうね。まあ、勘でなんとなくやってもそれなりに合うし、別にそこまで躍起にならなくてもいいじゃん。と考えている方が多い気がします。

日本人の酒の飲み方

日本人の酒の飲み方として、難しいことは抜きにしてみんなで楽しく飲もうぜ!美味しければなんだっていいじゃない!みたいな風潮があると思うんですよ。酒に関してだけ変にパリピ気質というか。

フランスなんかでは逆で、文化やペアリングなど小難しいことを考えながらワインを飲みます。

こういった気質もペアリングに興味を持たれない一因なんでしょう。

食中酒という意味合いでも日本酒は発展途上。詳しくは下記を読んでほしいんですが、ペアリングが文化レベルで根付くにはもっともっと長い年月がかかりそうです。

今後について

冒頭の表の「表示回数」を見てください。半年であれっぽっちの回数しか検索されないんですよ。しかも、日に日にその数は減少する傾向にあります。もうこの時点でヤバいのはお分かりいただけるかと。

メディアが取り上げてくれれば一時的には盛り上がるかもしれませんが、このままだとジリ貧ですね。完全にマニアのためのジャンルになってしまいそうです。

ただ、ライトユーザーながら日本酒ペアリングに興味を持っている方はそれなりにいるわけで、その方たちを(不遜な言い方ですが)育てるというか、もっと深いところに導くというか、そういった方向も必要なのかなと思います。

入り口にいる方にとっては、現状のうちの記事は恐らく難しすぎるか、面倒くさすぎて敬遠されてるのかもしれません。なので、もう少しライトユーザー向けに分かりやすく間口を広げて、ハードルを下げた内容の記事も書いていきましょうか。

それから、感覚的に日本酒クラスタの人よりも料理好きや食通クラスタの人のほうが、むしろペアリングに対しては食いつきがよさそうです。そういった方々に向けての記事も検討したいですね。

それではまた!