コラム

電子レンジで熱燗にしたら本当にまずくなるの?実験で徹底検証してみた。

レンジ

お燗をつけるときって湯煎しますか?面倒だから電子レンジでやっちゃいますか?

レンジは確かに速くて便利ですが、せっかくの美味しい日本酒を台無しにしてしまうこともあるのです。

実験のきっかけ:衝撃の体験

ずいぶん前、今ほど日本酒の知識も燗の技術もない頃、とある純米酒(雄町使用 精米歩合65%)をなんとなくレンジ燗してみたんですよ。

そしたらこれが驚くほど不味い! 最初は自分の舌を疑いましたよ。そのくらい不味かった。

口当たりはピリピリして苦味が増し、旨みはむしろ後退して痩せてしまった印象。温めることで旨味が減退するなんてことがあるんだろうか。

湯煎と比較してみた

そこで、これはちょっと湯煎と比較検証せねばなるまい、ということで実験をしました。

条件

まずはレンジ燗の条件。

  • 温度:45℃
  • 量:60ml
  • レンジ出力:600W
  • 加熱時間:30秒

次、湯煎の条件。温度と量は当然合わせますが、どうしても加熱時間は4分ほど長くなります。

  • 温度:45℃
  • 量:60ml
  • 湯温:70℃
  • 加熱時間:4分30秒

結果

結果発表!やはり湯煎はすごく美味しい。まろやかで染み入るようなスムーズさ、豊潤な旨味。うむ、これこそ燗。そしてレンジは相変わらず不味い。

いやいや、ちょっと待て。もしかしたら電子レンジはダメという先入観が判断を迷わせているのかもしれない。というわけで、念のために少し時間を空けて舌と頭をリセットしてからもう一度同じ条件で比較

しかし結果は変わらず、やはり同じようにレンジは激しく不味く、湯煎は美味かったのです。

別の酒で再検証

実は過去に別の酒でレンジ燗したときはそこまで悪い印象はなかったんです。

というわけで、今回新たに以下4種類の酒で再検証のために実験。

  • 辨天娘 純米(火入れ 玉栄 75%精米 3年熟成)
  • 特別純米酒(火入れ 備前雄町 60%精米 )
  • 長珍 特別純米(火入れ 山田錦/五百万石 60%精米 )
  • 濃醇辛口純米酒 80(火入れ 使用米不明 80%精米 2年熟成)

条件はもちろん最初の実験と同じです。

検証結果

結論としては、どれも同じように、レンジではやや硬くまろやかさに欠けるが、湯煎ではそれなりに柔らかくなり、味のエンベロープがスムーズに。さらに甘みと旨みが若干増す印象。

とはいえ、いずれも最初の酒での衝撃的なまでの差は感じられず。

ちなみに、レンジは香りが飛びやすいという話もありますが、ここでは特に差はなかったです。

さて、これはどう考えるべきか。

考察

仮説1

もしかしたら最初の酒は、潜在的に苦味とか雑味のようなものは持っていて、それを他の要素でうまくマスキングしたり調和をとったりしていたのが、どういうわけかレンジのせいでバランスが崩れて表出したのかもしれません。

ただ、これに関しては検証が非常に難しい。雄町のせいかな?とも考えて、実験対象に雄町使用の酒も入れましたが、大した差はなく。とりあえず、ここは置いといて別の可能性を考えましょう。

仮説2

もう一つ大きな要因として考えられるのは目標の温度に至るまでの時間。

レンジ燗の場合は温度が急激に上がりすぎるので、それが悪影響を及ぼした可能性はあります。下記記事でも紹介してますが、やはり基本的にはゆっくりじっくり4~5分ほど時間をかけた方が美味いので。

となると、この4種類であらためて、湯煎で短時間の燗つけを試す必要があります。

再実験:短時間の湯煎

なるべく短時間で燗をつけるために沸騰したお湯の中に徳利をつけました。もちろん火はつけたままです。しかし、どうしてもレンジの速さには追い付かず、目標温度の45℃までに1分強の時間がかかりました。

結果

いずれも同じく、レンジ燗に近い結果が得られました。比較するとやや柔らかいニュアンスもありますが、燗つけ時間が30秒以上違うので、そこの差である可能性は否めません。

再考察

レンジの出力を弱めて、短時間湯煎と同じだけの時間をかけて45℃まで燗つけすることも検討しましたが、これは実験するまでもなく湯煎に近い結果になるだろう、つまりレンジ特有のマイナス要因は見つけられないと判断してやめました。
(ていうか、すでにベロベロでこれ以上の検証をする気が起きなかったのが正直なところ)

つまり、燗酒の味に最も影響するのは燗つけの時間であり、用いる道具は問わないのではないかと。

とはいえ、最初の酒のあの恐ろしいまでの差は何だったのか、そこの解明はできませんでした。今回の一連の実験から言えることは「酒によってはレンジ燗が向かないものもある」ということですね。

まとめ

今回の実験を通して、やはりお燗は「ゆっくりじっくりが基本」ということを学びました。

湯煎で数分かけて燗つけしたほうが、柔らかさやスムーズさ、まとまりが増すことは間違いありません。

ただ、酒によってはゆっくり燗つけすると必要以上に香味が飛んで、芯がないボケた味わいになっちゃうものもあるんですよね。そんな酒はあえて早く燗つけしてエッジを効かせたほうが美味しい。

ですから、一概にレンジはダメ、絶対に湯煎しか認めない!みたいな頭の固いことは言いません。もちろん基本的には湯煎推奨ですが、ケースバイケース、ということで。

皆さんも暇があったら、レンジと湯煎でどのくらい差があるものか、一度比較してみると面白いかも。そんなことをする酔狂な人はほとんどいないと思いますが、もしいたら是非その結果をお知らせください。

ではまた!

※追記

ひとつ、気になっていることとして、温める酒の量があります。 今回は60mlで試しましたが、1合以上だともしかしたらムラが出やすく、例えば一部は70℃まで上がり、一部は25℃で、それが混ざって全体で40℃くらいになる、ということもあり得ると思います。

事実、徳利のくびれた部分はレンジで温度が高くなりやすいという研究結果もありますので。

そうだとすると、味が変わる可能性は大きくあります。このあたりは機会があれば再び実験していきます。

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