今回の日本酒ペアリングは、なんとタンドリーチキン。ついに禁断のインド料理にまで手を出し始めました。
そもそもスパイスと日本酒なんて合うわけない!とお思いの方がほとんどじゃないでしょうか。実際、難しいケースもありますが、意外と合うものは合うんです。つまり、合うも合わないも選ぶ日本酒次第ということで。
タンドリーチキンについて
タンドール
タンドリー(タンドール)とは円筒形の土窯のことで、ナンをこのタンドールの内側に張り付けて焼いているのを見たことがある人も多いでしょう。
で、これを使って焼いたチキンなのでタンドリーチキンと呼ぶわけです。
タンドールを使うと炭火による遠赤外線の効果で、外側はパリっと、中はふっくらジューシーに仕上がるのです。
レシピ
作り方は簡単。ヨーグルトにスパイスとおろしにんにく、レモン汁、塩を混ぜて、骨付き鶏を1日漬け込み、あとは焼くだけ。
焼成にはタンドールを使うのがベスト。だいたい皆さん持ってますよね?もし万が一ないのであれば、仕方ないのでオーブンを使用しましょう。フライパンだとどうしても外側のパリッとした感じが出せませんので。
スパイスはクミン、コリアンダー、チリ、パプリカパウダー、カルダモン、ターメリックなどを使用しますが、一から調合するよりも市販のカレー粉やガラムマサラを使って、そこに適宜上記スパイスを足すのがお手軽だと思います。タンドリーチキン用のスパイスミックスも売っていますので、それを使っちゃうのもアリかも。
なお、鶏肉はできるだけ骨付きを使うのがベター。そのほうが縮みが少なく、骨からの旨みもでやすいので。ちなみに、骨なしのタンドリーチキンは「チキンティッカ」という別の名前で呼ばれることも。
タンドリーチキンの分析
今回はスパイスがかなり幅を利かせてますので、いつもとは違うアプローチになりそうです。
とりあえず、五味について。基本は肉とヨーグルトによる旨味、それに適度な塩味ということになりますか。数値化すると塩3、甘0、酸2、旨3.5、苦0.1程度です。
とにかくポイントはヨーグルトの乳酸感とスパイスの香りですね。
合わせる日本酒を考える
ちょっと反則気味ですが、今回は五味や香りではなく、すでに相性が確立されているものから、それに近いものを選んでみようと思います。
タンドリーチキン、もしくはインド料理に合う飲み物といえば、そうです、あれです。ラッシーです。乱暴に言ってしまえば飲むヨーグルトですね。
ラッシーはその脂肪分と甘さでスパイスの刺激を緩和してくれます。その上、今回のタンドリーチキンにはヨーグルトを使用しているので、相性は悪いはずがないわけで。
というわけでラッシーと似た日本酒を探しましょう。そんなもんあるのか、と思いきや、よく考えてください。僕らには「濁り」という素敵な選択肢があるんですよ!
甘酸っぱい濁り酒であればだいたいそれっぽい感じになりますので、正直何種類もあって逆に選ぶのに困るくらい。
とりあえず、今回は女子人気も高い特徴的な一本にしましょうか。
讃岐くらうでぃ
そんなわけで、今回の料理のお供には「讃岐くらうでぃ」を選びました。
雑誌や本などメディア露出も多いので知ってる方もいるかもしれないですね。
香川の川鶴酒造が造る、甘酸っぱくて超飲みやすい、まるでアルコール入りカルピスのような日本酒。っていうかたぶん中身カルピスだわこれ。
アルコール度数も6度とビール並みで手を出しやすいし、味わいや品質の面でも子供騙しではなく、バランスがとれていて上質。こういうキャッチーかつレベルの高いお酒がもっと出てきたら日本酒業界が盛り上がるのに。
このお酒の狙いは、先ほども書いたようにとろみと甘さによるスパイスの緩和、そして乳酸感の同調です。
実食!
御託はこれくらいにして、さっさと実食しましょう。
目の前にタンドリーチキンを置くだけで、わざわざ香りを確かめる必要もないくらいにスパイスが脳を直撃。これだけで一気にインドの空気感。
さっそく骨をつかんでかぶりつくと、鼻から抜けるスパイスのドラッギーな刺激と皮目のパリパリした食感で目が覚めます。そのままジューシーな肉汁が口の中を満たすと、そこはもはやガンジスのほとり(行ったことないけど)。
口中に香辛料の刺激がピリピリと残っているところにすかさずラッシー、じゃなかった讃岐くらうでぃを流し込みます。すると予想通り、とろっとしたテクスチャーの甘みが舌の上を覆うことで、辛みがすっと退きます。そしてわずかに残るタンドリーチキンのヨーグルト由来の乳酸風味が、見事に日本酒の乳酸感とマッチ。最後にしっかりした酸が脂を切って締め。
これは我ながら素晴らしいわ(素晴らしいのは川鶴酒造だけど)。
そのうち、カレーと日本酒のペアリング企画をやろうと思っていますが、その際は第一候補として再登場してもらうでしょうね。
それではまた!