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甘口日本酒に合うおつまみ選びのコツとおすすめ銘柄13選

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女性を中心に甘口の日本酒が人気ですが、今一つ料理に合わせづらいし、そもそもどれが甘口なのかわからない、そんな声にお応えして、甘口酒と料理のペアリング方法および、おすすめの日本酒をご紹介。

甘口日本酒とつまみの相性を理論的に紐解く

甘口の日本酒は料理との相性が悪い?いやいや、それが意外とそうでもないんです。

要素を細分化してシンプルにする

確かに、甘口の日本酒に対して頭の中で料理をあれこれ合わせてみるもイマイチ良いイメージがわかないことは多いと思います。

なぜでしょうか。それは様々な要素が物事を複雑にしているから。つまり、それらを分解、細分化していけば考え方がシンプルになって解決策に結び付けやすくなるのです。

甘いがフルーティではない日本酒を選ぶ

まず、甘口日本酒におけるペアリングの難易度を上げているのが、フルーティな香りなんですよ。これがあるだけで一気にペアリングの幅が狭まります。もちろん、クリアするための方法論はあるのですが、香りが弱いほうがペアリングしやすいことは確か。

というわけで、今回は思い切って華美な香りの日本酒は除外しましょう。ほら、少しだけ悩ましい要素が減りましたよ。

なお、フルーティな日本酒のペアリング方法については以下で詳しく解説しています。

次に考えるべきは味覚について。

味覚同士の相性を考える

今回は日本酒を「甘味」と捉え、塩味・旨味・酸味・苦味・甘味の五味それぞれとの相性について考えます。

と、その前にこちらの「味覚相互作用」については予備知識として読んでおいてください。

では五味それぞれの相性を一つずつ見ていきましょう。

甘味×甘味

この組み合わせは同調の考え方を基準にして考えますが、日本酒より甘味が強い食材もしくは料理はペアリングが難しくなります。

スイーツでいえば、ケーキや和菓子はやはりどうしても甘味が強いので難易度は上がるんですが、ゼリーや杏仁豆腐、くずきり、わらび餅なんかは甘みが控えめなので合わせやすくなります。

料理でいえば、イタリアンやフレンチでは基本的に砂糖を使わないので、あてはまる料理がありませんが、中華でしたら豚の角煮は甘口日本酒とめちゃめちゃマッチします。

甘味×塩味

言うまでもなく好相性な取り合わせですね。いわゆる、甘じょっぱいという感覚はご理解いただけるかと。

同調すべき甘みと塩味を含んだ煮物・煮つけなどは間違いないでしょう。生ハムなんかもコントラストがはっきりしていいですね。

甘味×酸味

日本酒の甘みによって料理の酸を穏やかにする抑制効果および甘みを際立たせる対比効果も期待できます。

少し酸味のあるぬか漬けや浅漬けなどの漬物は鉄板です。ピクルスまで行くと酸が強すぎるので同調はしないんですが、抑制効果で酸を和らげてくれるので、これはこれでギャップの観点からすると面白い取り合わせです。

西欧料理ではバルサミコソースを使ったものも好相性。白身魚のポワレとかいいですね。ややフルーティさがある日本酒でしたら、オレンジソースを使うのも手。

中華なら酢豚もアリ。分かりやすく甘味と酸味がコラボレーションした料理ですから、甘い日本酒とは無理なくマッチします。

甘味×苦味

この組み合わせの抑制効果としてはコーヒーと砂糖の例が有名です。食材ではゴーヤやピーマン、菜の花春菊など、また洋風食材ではエンダイブなんかも合わせやすいですね。

料理であれば(またもや中華でアレですが)青椒肉絲はいかがでしょうか。ピーマンの苦味をほどよく抑制しつつ、オイスターソースの甘味が同調します。

甘味×旨味

これはもうここで言及するまでもなく皆さん感覚的にご存知でしょう。甘みと旨みは中毒性のあるヤバい組み合わせです。上述した煮物とか酢豚とか、みんな旨味と甘みを上手に組み合わせています。

あえて一つ上げるとすれば、ゴルゴンゾーラ等のブルーチーズかな。塩気も強いですが、基本は旨味の塊です。ゴルゴンゾーラにハチミツの取り合わせも定番ですので、そのイメージで甘口日本酒をペアリングさせることが可能です。

甘味×脂

五味ではないですが、脂と甘味の相性が良いことは意外に知られていないかも。ここまで、やたら中華が出てきたのは、そういう理由もあるんです。

以下でも書いてますが、脂を含む肉と砂糖の相性の良さを考えてもらえれば、理解しやすいのではないかと。

おすすめの甘口日本酒

では実際にどんな日本酒が料理と合わせやすいのか。実飲したものからお薦めを紹介します。

ペアリングのことを考えて、比較的香りが控えめなものを中心に選びました。また、このテーマで貴醸酒を選ぶのはさすがにダサいので除外してます。

鷹長 菩提もと 純米

人気の「風の森」を醸す奈良の油長酒造の別ブランド。風の森とのコンセプトの違いははっきりわかりません。

菩提もとは比較的濃醇で甘酸っぱくなる傾向にありますが、中でもこれは特に甘くて濃い。スペックを見ても日本酒度-25、酸度3.2と極端。日本酒度だけで甘辛は測れませんが、さすがにここまで行くと間違いなく甘いです。

三諸杉 菩提もと 純米 無濾過生原酒

ちょっと個人的な話をさせてください。日本酒にハマる前はケーキバカとして都内中心にケーキを日夜食べ歩いてたわけですが、そんな甘党の私が一口飲んで衝撃を受け、日本酒にハマるきっかけになったのがこの酒。

今飲むとそこまで激しく甘いわけではないんですが、当時は「こんなに甘い日本酒があるのか!」と驚いたのを鮮明に覚えています。

熟成のニュアンスもあり、含み香で糠っぽさも感じる個性派。甘味と酸味のバランスが絶妙な複雑系濃醇甘酸っぱ酒です。

H.森本 純米 勘造り六十五

原則、静岡県内でしか流通してない銘柄(ネット通販では買えますが)。なぜ知ってるかというと、私の地元だからです。この蔵は小夜衣という銘柄も出していて、そちらのほうがまだ若干知名度は高いかも。

どの酒も爽やかでフルーティな静岡の酒らしさはまるでなく、がっつり濃醇系が基本。いずれにしろ地元向けの小さな蔵なのにどの酒もハイクオリティで素晴らしいです。

肝心の酒ですが、 やはり濃醇系の食中酒で非常に落ち着きがありますね。

立ち香はやや乳酸っぽさがあり、含むとそこそこの甘みともちっとした柔らかな酸。立ち香どおり乳酸によるヨーグリッシュな旨みが最高。キレも良し。日本酒度+3.5とは思えないなあ。

ちなみに燗も悪くないが甘みが増してややぼやけるか。常温の方が酸が効いて締まりがあってベターでした。

奥 夢山水十割 生 低温熟成

華やかな香りがあり、しかも出来るだけ濃いお酒を造りたい。そんなコンセプトの奥ですが、絶対に熟成モノのほうが出来が良いと思います。

こちらは二年半低温熟成したもの。テクスチャーはトロっとしており、濃くてジューシー、丸みがあります。熟成感はほとんど感じませんでした。十年熟成もあるけど、そっちも興味あり。

萩乃露 特別純米 十水仕込 雨垂れ石を穿つ

萩の鶴と間違えやすいですが、あちらは宮城、こちらは滋賀。

この蔵の酒は、ふくよかで柔らかい甘さを持った酒質が特徴だと勝手に思ってますが、今回ご紹介のこちらは中でも特に甘味が際立っています。

十水仕込みというのは江戸時代に行われていた仕込み水を少なくする手法だそうな。その結果、甘味が強くなるんですね。

立ち香は穏やか。口当たりは柔らかく、ふくよかな甘みを感じます。濃醇で旨みたっぷり。熟成感も若干あるか。きれいな酸が爽快感やフレッシュネスさえ感じさせます。

弥右衛門 カスモチ原酒

大和川酒造は江戸時代より続く福島は喜多方の由緒ある蔵ですが、26BYより佐藤哲野氏に杜氏が変わってから、野恩(やおん)、別品(べっぴん)、素品(すっぴん)など野心的で素晴らしい酒を次々リリースしています。ちなみに佐藤杜氏の兄上が専務なんですが彼はDJ時代の友人だったりします。

で、こちらは昔から引き継がれている伝統の超甘口酒。日本酒度は-20。もち米四段仕込みで麹も多めに使うことでこの甘さになるとか。蔵元ではオンザロックも推奨してますが、確かに悪くないです。

鏡山 純米原酒 秋あがり

埼玉県は川越の小江戸鏡山酒造。実は平成19年創立というまだまだ若い蔵元。

もともと「鏡山」という銘柄は明治初期に創業した鏡山酒造株式会社が造っていたもの。しかし平成12年に惜しまれつつ閉蔵。そこから地元の有志でこの銘柄を復活させるべく立ち上げたのが「小江戸鏡山酒造」なのです。

乳酸を感じる立ち香。強い甘みとバランスのいい旨み、軽い熟成感。賛同を得られない場合も多いんですが、これ、いつもチョコバナナを連想しちゃうんですよね。

菊姫 山廃純米 無濾過生原酒

日本酒好きの間ではいわずと知れた名工、農口尚彦氏が1961年から1997年まで36年の長きにわたり杜氏を務めたことでも有名な菊姫。

オールドスタイルの山廃らしく良い意味で雑然とした酸と甘さが力強い酒です。生のフレッシュ感と熟成感が同居して本当に素晴らしい味わいです。

甘さももちろん強めなんですが、同じく酸もかなりしっかりあるので、単純に甘口とは言えない深い魅力があります。この濃さこそが、まさに菊姫らしさ。肉との相性(特に牛)もバッチリ。

北安大國 純米 無濾過生原酒

長野でアルプスの伏流巣を使って仕込む小さな蔵。まだまだマイナーな知る人ぞ知る蔵ではありますが、甘口といったら絶対にはずせません。

立ち香は柑橘を思わせる爽やかさがあり、ふわりと香ります。ゆっくりと口に含むと、ほんのわずかな発泡感とともにジューシーで凝縮感のある甘みと酸が一緒に押し寄せてきます。旨みも雑味が少なくスムーズで、酸と旨みが一体となった独特なコクが舌の上に残るのです。最後は軽い苦みの余韻でキレ。いやはや、本当に美味い。

なお、今回ご紹介の純米 無濾過生原酒がスタンダードで比較的入手しやすくはありますが、その他どのスペックでも、キレを同居させた濃醇甘口を貫いています。特に「純米酒 もち米仕込」の強い甘味とコクは、甘口好きなら一度お試しいただきたい。

ちなみに、こちらでは居谷里という別銘柄もありまして、そちらも最高ですのでぜひ。

山陰東郷 生酛純米生原酒 玉栄60%

山陰東郷は鳥取の蔵らしく、ガツンと武骨で燗上がりする酒がフラッグシップでした。

ただ、数年前より極端に甘口に振った酒もリリースするようになったんですよ。肩ラベルがハート型に切り抜かれているやつです。で、これがまた絶品だから困る。

チャレンジ酒というわけではないと思いますが、同じ甘口の玉栄でも毎年スペックが変わるので、あくまで参考ということで。

立ち香は穏やかで若干の熟成香があるかな。含むと強い甘み、ただ熟成から来る馴染みのいい酸も同居しているため全くクドさはありません。山陰東郷らしく終始力強さが。熟味は浮いておらず、酸と同様、全体に馴染んでいます。

生ではありますが、生にありがちなムレた感じはないため燗もばっちりはまります。印象そのものは大きく変わりませんが、全体のまとまりがさらに増しますね。

梅乃宿 奈良流五段 露葉風 純米吟醸

ハイクオリティな高コスパ酒をリリースし続ける奈良の梅乃宿。こちらは江戸時代初期の技法である「奈良流」で仕込んだお酒。通常三段で仕込むところを五段にしているのだとか。

※ 酒造りにおいては、酒母の入ったタンクに、麹と蒸米、水を数回に分けて加えます。現在の主流は3回で、これを三段仕込みといいます。一般論としては、この回数が増えるほど甘みが増す傾向にあります。というわけで、五段仕込みはいかにも甘そうってことがお判りいただけるかと。

お味は純米吟醸(60%磨き)とは思えない濃醇さ。乳酸系の立ち香から、柔らかなアタックを持つ甘みとジューシーな酸がすぐにやってきます。旨みは軽い乳酸系ながら突出しすぎていません。

基本的には濃醇甘酸系の典型的な味わいですが、特に酸が強いですね。おかげでキレもいい。

燗にするとアタックがより強く、果実味が出てジューシーになりますが、中盤以降は柔らかくまとまります。これはこれでいい感じ。

花巴 山廃本醸造 生詰原酒

奈良の小さな蔵ですが、都内では取り扱いも多く意外に知名度は高いんじゃないかな。

この蔵が醸す酒は基本的にチャレンジングな造りが多いんですが、中でもこれはマニア向けかも。一般的には薄いとか安っぽいとかいうイメージを持たれがちな本醸造でありながら、めっちゃ濃くてしかも熟成耐性があるんです。だいたい2年くらい寝かせたもののほうが、より変態度が増して面白いと思います。

で、味わいですが、まず立ち香は熟成香もあって甘みと乳酸を感じさせるもの。含むと予想通りの非常に濃醇でやや癖のある甘みがガツンと。その甘みを纏ったままこれまた濃醇な旨みに移行します。いやあ、濃い。

燗もすごくいいですね。軽めのチョコと合わせると最高です。

ちなみに、花巴の極甘口は以下もおすすめです。

  • 花巴 水酛×水酛 無濾過生原酒
  • 南遷 プレミアムオーガニック 山廃純米四段仕込み 無濾過生原酒
  • 花巴 山廃 純米 極甘熟成酒

日輪田 山廃純米酒 ひまわり

萩の鶴の萩野酒造による一本。萩の鶴はすっきりめの爽酒であるのに対して、日輪田はやや濃醇系になるのかな。

銘には「お日様」と「田んぼ」の恵みを皆で「輪」になって楽しんでほしいという意味も込められているそうな。(萩野酒造HPより)

夏酒のくせにしっかり濃醇なのがいいですね。

穏やかで軽いカプロン香の後、濃厚な甘みと程よくフレッシュな酸が。旨みはスムーズに過ぎてフィニッシュで軽い苦みを感じます。完全に甘口なんだけど最後の苦みが面白いですね。

まとめ

甘い酒なんて酒じゃねえ!という方もいると思いますので、そういう方は無理しなくてもいいですが、めくるめくペアリングの世界を楽しみたいのであれば、ぜひチャレンジしてみてください。

ではまた!

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