晴れてSAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)に合格することができました。
この経験を生かして今後受験される方のお役に立てれば、ということで自分の勉強法や傾向などをお伝えしたいと思います。
SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)とは
2017年から始まった日本ソムリエ協会が認定する日本酒の資格です。
ワインの場合、飲食従事者向け資格が「ソムリエ」で、一般のワイン愛好家向けが「ワインエキスパート」と位置付けられますが、SAKE DIPLOMAはその中間といったところでしょうか。
2019年1月時点で2436名の有資格者がいます。合格率は初回の2017年が41.5%、二回目の2018年が38.1%、私が受験した三回目が35.3%、2020年の四回目が44.2%となっています。(出典:一般社団法人日本ソムリエ協会/資格保有者・合格率一覧[PDF])
唎酒師ではなく SAKE DIPLOMA (酒ディプロマ) を選んだ理由
肩書に箔をつけたいという理由だけであれば、実は日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(以下SSI)の「唎酒師」のほうが有利です。
明らかに知名度が高く、平たく言えば「すごーい」と思われる率が桁違いなので。
30年近い歴史があって3万人以上の認定者(※そのうち資格保持者は約1万2千名ほど)がいる唎酒師に比べたら、DIPLOMAはまだ発足してから4年しか経っておらず、認定者も4300人ほどですから、当然と言えば当然ですね。
ではなぜ唎酒師をとらないのか。一つは料金の問題。資格取得の方法によっても変わってくるんですが、初年度トータルで12万~15万円くらいかかるんですよ。その上、SSIに入会して毎年年会費を納めないと資格を保持できないのです。
そこにくるとSAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)はトータル45,000円~50,000円で、さらに日本ソムリエ協会に入会しなくとも資格は永久に保持できるというのは魅力ですよね。
さらにもう一つ、難易度とプライドの問題。唎酒師はそれなりに日本酒の基礎知識をもっていれば、大抵は合格できるようです。事実、合格率は80%ほどとのことですし。ただ、それってあまりに歯応えがないというか…。
一方のDIPLOMAは合格率35~45%で、そう簡単にはなれないってところが日本酒好きとしてのプライドをくすぐるわけですよ。
そんなわけで、私はSAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)を選んだのでした。数年後にはもっと知名度が上がり、誰もが「すげー!」と言ってくれるような資格に育っていることを期待して。
傾向と対策
一次試験の傾向
全100問、回答は全て4択で、制限時間は60分。時間内なら回答の見直しや変更も可能です。
旧来の紙ベースで全国一斉に行われる試験とは違い、WEBを利用したCBT方式で、 ある程度自分の都合に合わせて試験会場や試験日時を選ぶことが可能です。
ただ、このCBTは弊害もありまして。複数の会場において、それぞれのタイミングで試験が行われるということは、各々出題内容を変えていく必要があります。(同じだったら先に受験した人からリークしちゃう可能性がありますから)。
そのため用意するべき問題数が増え、結果的に本質から外れるような細かい設問がかなり出題されることになるのです。
そんなこともあって、テキストを軽く読んだだけで模擬問題を解いてみたら惨敗。自分でもそこそこの知識は持っていたつもりでしたが、それだけではほとんど通用しませんでした。
一般向けの書籍や雑誌・ムックで得られる情報だけだと、せいぜい3割~5割くらいしか正解できないんじゃないでしょうか。
だってさ、例えば「 JAグループ兵庫が取り扱う山田錦の全産地において、2011年に実施された動力米選機のふるい目調整でふるい目は何mmに変更されたか」とか「 酵母の酸性側の生育限界pHは? 」とか「酸性カルボキシペプチターゼが最も多くつくられる温度帯は?」とか言われても知るか!って感じでしょ。
抑えるべきポイント
そうはいっても、基本になるのはテキストです。というか、テキスト以外からの出題はありません。
ですから、テキストの丸暗記ができるならそれが一番ですが、普通無理ですよね…。そこで抑えるべきポイントをお伝えしておきます。
年号
これはかなり出題されます。語呂合わせでも何でもとにかく暗記!これが重要です。さらには、年号だけ覚えていてもダメで、問題によっては「○○時代の前半/後半」とかいう言い回しで出題されますので、そこも併せて覚えておく必要があります。
数値
いやらしいですが、これも多いです。課税移出数量、海外輸出数量、各県の特定名称酒の比率、酒造場数、醸造におけるpHや温度、時間なども覚えなくてはいけません。
山田錦関連
どういうわけか、テキストでは山田錦に関して相当なページ数が割かれていますが、その傾向は問題にも反映されています。
村米制度の歴史や特A地区の細かい地名なども出題されましたので、ここはぬかってはいけません。※村米制度は二次の論述でも出題されました。
多分、ワインのテロワール(土壌・畑)のノリで酒米をとらえようとしてるから、これだけ地区にこだわるのかなあと。個人的に日本酒においては、それほど意味はないと思ってるんですけどね。
食べ物との相性
テキスト第6章の、どの料理にどんなタイプの酒を合わせるべきかという話。これはやられましたねえ。後述する模擬問題にもあまり登場しないので油断してたんですが、私のときは4~5問出題されたと思います。
ただ、これは正直暗記しきれないので、感覚で答えるしかないのかなと。
ある程度経験のある方なら、明らかに自分の感覚と違うものだけチェックして覚えておくとか。
料理も酒も字面からは味がイメージできない人は、なんとか暗記するしかないですね。
焼酎
焼酎には興味ない人も多いんじゃないでしょうか。私もそのクチで、覚えるモチベーションも上がらなかったんですが、確実に数問は出ます。
同じ理由で、ここは捨ててる人も多いと聞きますが、テキストの内容は割とざっくりしているので、案外覚えるのは簡単だったりします。だからちょっとだけ頑張りましょう。
勉強法(+模擬問題リンク集)
以下は自分なりの勉強法ですが、参考にしていただけたら幸い。
1.テキストを通読する
先ほども書いたように細かいとはいえ出題範囲はテキストに載っているものに限られます。ですから、まずはテキストを読み込むことが大切です。
2.模擬問題を解いて理解の足りない箇所を洗い出す
とりあえず、ネット上で見つけた無料でできる模擬問題のリンクを貼らせていただきました。
実際に出題された問題も多く含まれているので、これらは絶対にやっておくべきです。
▸ 京都から世界へ -藤田功博の京都日記- >【保存版】Sake Diploma合格のための傾向と対策 1次試験編(2017年 過去問つき)
大事なのは、何となく解かないこと。
偶然正解してもそれは意味がありません。100%の自信がないものは必ず都度チェックして、理解の足りない箇所を洗い出しましょう。
3.テキストの該当箇所を熟読し、理解を深める
2の模擬問題で見つかった自分が覚えきれていない箇所を読み込んで理解を深めましょう。
4.自分で模擬問題を作成する(重要)
実はここが一番重要。ノートでも単語帳でも暗記アプリでもいいんですが、自分で設問を作って書き留めておく。
そして、毎日繰り返しそれを解く。これで理解も深まりますし、暗記もできるようになります。
自分が出題者になったつもりで、なるべくイヤラシイ問題を作るのがポイント。
問題を作成するためには、周辺含めてちゃんと理解している必要がありますから、必然的に覚えていくんですよね。仕事や勉強を人に教える立場になって、より理解が深まるアレと同じです。
なお、単語帳であれば、自分の中で完璧に覚えた問題は外していくことで苦手な問題に絞って勉強できますので効率も良くなります。
ちなみにこの方法、webやら本やらでいろいろ調べて最も効果的な勉強法と判断して取り入れたんですが、大学受験のときにやっておくべきでしたね…。
5.参考図書やWEBで理解を深める
これは余裕があったらぜひお勧めしたいんですが、テキスト以外の参考図書やWEBの情報を読むことで理解を深めることができます。
違う角度からだったり、別の言い回しをしていたり、わかりやすい図表が載っていたりするので、専門的で分かりづらい内容もすっと腑に落ちることがあります。特に醸造方法なんかではおすすめです。
2019年度の一次試験で明らかに間違えた問題
上に紹介した模擬試験をやりこんでもわからなかった問題を覚えてる範囲で少しだけ記しておきます。(設問の文章はそのまんまじゃないですが)参考にしてください。
- こいおまちは何県の産地品種銘柄か? →テキストP.26
- 朝廷用の酒造りのために設けられた造酒司は何時代の国家組織? →テキストP.16
- 21世紀になって立ち上げられた杜氏流派は? →テキストP.107
- 1936年に「 ? 」を山田錦と命名した。 →テキストP.39
- 蒸米の溶け具合を濃度%換算で示したものを何と呼ぶか。 →テキストP.82
- エチルアルコールの揮発による刺激が強く、調和が取れづらい酒器は? →テキストP.147
- 酵母の増殖と死滅について以下を正しい順に並び替えよ。[ 対数増殖期・死滅期・誘導期・定常期 ] →テキストP.59
まとめ
というわけで、一次試験の傾向と対策、および勉強法なんかをお伝えしましたがいかがでしたか。
実は自分の感覚では、試験で自信をもって答えられたのは7割くらい。結構危なかったんじゃないかと思ってます。
あくまで感覚なので、ここから合格ラインを推測するのは危険ですが、模擬問題をかなりやり込んでいてもこの程度ですから、難易度は相当なものだと考えてください。
とにかく、それが何の役に立つのかとか、日本酒の本質から外れているとか、そういうことを考えたら負けです。
割り切っていやらしい数字も年号も地名もみんな呑み込むこと。それが合格への近道だと思います。
これから受験される方は頑張ってください!