日本酒ペアリング実践

炙りベーコンにペアリングさせるべき日本酒とは

炙りベーコン

今回は「炙りベーコン」です。これといって深い理由はありません。たまたま池袋の希紡庵さんでいただいたベーコンと、この後紹介する日本酒がべストペアリングだったので。

まずは料理の味を分析していきますが、その前に基礎理論の簡単なおさらい。最初にすべきは料理の分析(味覚+香り)、それから合わせるべき日本酒の見当をつけて、そして実食して検証でしたよね?この順序で考えていけば合わせるべき酒が見つかりやすくなりますので。

炙りベーコンの分析

味覚チャート

まずは炙りベーコンさんを分析していきましょう。

炙りベーコンの味覚
炙りベーコンの味覚チャート

見ての通り、基本的には塩気と旨みで構成されています。

塩漬けとして仕込む際に砂糖も使うので、ほんの少し甘みもありますが、甘みというよりコクや塩気を丸くする役割で使用されます。

苦味に関してはローストした際の焦げです。

また、このチャートでは表現できていませんが、最も特徴的なのは、たっぷりの脂。この脂をどう攻略するかがポイントになります。

炙りベーコンの香り

普通ベーコンは塩漬けした後に燻製をします。ですから、まずはスモーキーな香りが飛び込んできます(使用するチップによって香りは変わりますが、ここではそこまで厳密には考慮しなくて良いでしょう)。

それから、臭み消しに使うハーブやスパイスもほんのり感じ取れます。作り方は様々で、使用するハーブやスパイスによって変わりますが、ポピュラーなのは
ローズマリー、ローリエ、セージ、コショウ、オールスパイス、ナツメグあたりでしょうか。

ただし、塩漬けした後の塩抜きで洗ったり、焼いた段階でかなり香りは飛びます。そもそも肉のブロックの内部まで香りがしっかりと染みこむことはないので、これも深く考えなくても良いと思います。

あとは肉をローストした香りですね。結局、ロースト臭+燻製臭=焦げ臭をメインに据えて考えるのが妥当でしょう。

合わせるべき日本酒の見当をつける

味覚チャートから検討

上の味覚チャートを眺めてください。ポイントは味覚のピークが2つないしは3つになり、かつ最大値(ここでは旨みの4)を超えないようなボリュームの日本酒を選ぶことです。

候補としては以下。

  1. 甘みは弱く、旨みが強いもの
  2. 甘みは弱く、旨みと酸が強いもの
  3. 甘みが強く、旨みも強いもの

ここで、最近多い甘酸っぱ系をチョイスしてしまうとやや口の中がガチャガチャしてしまいます。ピークが塩、旨、甘、酸の四つになってしまうからです。まあそこまで悪くはないですけどね。

ちなみに「甘みが強く、その他の要素は弱い」、要するに甘みだけが突出した酒という選択肢もなくはないんですが、この手の酒の多くは味気なく、日本酒としての完成度が低いうえ、出回っている数も多くないので考慮には入れません。

香りの共通点・近接点を探る

基礎理論でも紹介しているワインのアロマホイールを眺めてみましょう。大分類で焦げ臭にはスパイスや木の香りが近接していることがわかります。このあたりの香りをはっきりと持った日本酒といったらもう熟成酒か樽酒くらいしかないんですよ。

日本酒の見当をつける

ここまで来たらあとは簡単。数年熟成していて、なおかつ旨みが強いものだったら上述した1~3の条件は全て満たします。ていうか、いわゆる純米系の熟成酒って言ったら旨みが強いのが当たり前なので迷うことはないですね。

この手の熟成酒でも甘みや酸に関しては強弱いろいろありますので、そこはお好みで合わせてみてください。

で、今回私がチョイスしたのはこちら。

五橋 穏 山廃純米酒28BY

五橋山廃純米

2018年12月の美味しかった日本酒メモでも紹介済みですが、山口の酒井酒造(奇しくも同じ苗字!)の五橋から、あえて木香(きが)をつけたというちょっと変わり種の山廃を。1年半くらい熟成しています。ラベルのパンダはあまり可愛くありません。

香りは樽酒ほど強くなく心地よい程度。味わいとしては甘2.5・旨3.5・酸3.5くらいかな。ベーコンと合わせるとこんなチャートになります。塩と酸と旨みがピークを打ってますね。甘みがもうちょい強かったらごちゃっとしてダメだったかも。

ところで先ほど熟成酒を合わせるべし!みたいな書き方をしておいてアレですが、熟成によるいわゆる焦げ臭はあまりなく、木香に着目してチョイスした結果です。

実食!

では、いよいよ実食。今回は一旦50度近くまで燗つけしたものを人肌~ぬる燗くらいまで冷ましてからいただきます。これは、常温だとベーコンに合わせるには香りが弱く、逆に高めの燗では酸がやや強く、雑味も感じられたためです。

はい、それではベーコンをもぐもぐしてから酒をゆっくり流し込みましょう。

塩気と脂に包まれた旨みに軽い甘さが加わり、酸が脂を一瞬忘れさせてくれます。そこから酒の旨みがぐっと押し寄せて静かにフェードアウト。予想通り、木の香りもロースト臭に見事にマッチしています。

課題の脂の処理に関しては、酸で一旦切る「ウォッシュ」の方向ですね。

ただ、ベーコンの後口に対してはやや酒のほうが強いので、ベーコンを口に残っている状態で酒を投入する口内調味か、もしくは酒を少なめに含むのがおすすめです。

まとめ

今回は同調の方向でペアリングしてみました。充分美味しかったですが、その場で絶叫するレベルではないんですよね。脂と甘みの相性は自分の中で立証済みなので、今度は甘くて酸が弱い熟成酒も試してみたいな、と。

しかしね、ペアリング探求の恐ろしいところはここなんですよ。つまり、もっと美味い取り合わせがあるんじゃないか、と更なる高みを追い求めてしまうので、終わりが全く見えないのです。

とりあえず、ここまでややこしく理論化して書いてきましたが、ある程度経験のある人なら感覚ですぐに熟成酒という答えにたどり着けたのではないでしょうか。今回はわりとわかりやすい題材だったので簡単でしたが、これがややこしいものになるにつれて基礎理論が力を発揮すると思います。

今回に関しては、ひとまず「燻製には熟成酒か樽酒」とだけ覚えておけばいいんじゃないでしょうか。最後急に投げやりになりましたが、また第二弾でお会いしましょう!

ではまた!