ライター仕事などでいつも世話になっているSAKE Streetさんが企画・開発した「すごい!!アル添」というすごいネーミングの酒がすごくて驚きました。
「すごい!!アル添」とは
この酒は、日ごろいわれのない迫害を受けがちなアル添酒の復権を狙った企画商品になります。
その意図や想いについて詳しくは酒スト店長のブログ記事をお読みください。
私自身はアル添の効果も分かってるし、味も大好きなので偏見はないのですが、世の中はまだまだアル添を下に見てる人が数多くいるのが現状です。純米至上主義っていうかね。
商品内容
醸造元は岩手最古の酒造、菊の司酒造さん。
主力商品の菊の司は言わずもがな素晴らしいお酒でございます。
で、この商品は①米焼酎②純米酒③アル添酒の3点がセットになってます。
これらに加えてHARIOの計量カップとスポイト、解説・ブレンドレシピを掲載したパンフレットもついてきます。(このHARIOの耐熱カップがまたいいんだ。)
もうお分かりですね。そう、①米焼酎と②純米酒を好きな比率でブレンドして自分でアル添酒を作れちゃうのです!そして③蔵元が本気で作ったアル添酒と飲み比べてみようという、なんともマニアックな企画!
テイスティング
まずはそれぞれ単品でテイスティングしていきましょう。
①米焼酎
実は米焼酎ってほとんど飲んだことなくて、数年前にSAKE DIPLOMAの試験勉強用に安いカップのやつを飲んだきりだったんですが、これは驚きました。
めちゃめちゃフルーティで香り高いんですよ。
そしてほのかなアルコールの甘み。ふくよかな含み香。蒸留酒なのに旨みがあるんですね。
いい米焼酎ってのはこういう味なのか!!
これはちょっと他の米焼酎も試してみたくなったぞ。
②純米酒
立ち香は結構あります。カプロン系かな。上品な甘み、軽い口当たり、酸は弱めですが全体のトーンは明るいですね。うま味は軽く、ほのかな苦みと共にすっとキレます。アルコール度数が14度なので、ボディは軽やか。
ド直球で最近流行のタイプですわ。言わずもがな美味いです。
ちなみに、開栓後は早飲み推奨です。数日すると残念ながら輪郭がボヤけて甘ダレしてきます。
③アル添酒
②の純米酒をベースにして、そこにアルコールを添加したものになります。
これがもうすげえ美味い。
香りは純米よりやや控えめになりますが、甘やかでフルーティなのは同じ。
甘みも酸もがっつりある。むしろ度数が17%に上がった分、純米より濃くてパンチを感じます。うま味はほどほどで、とにかく甘酸っぱくてジューシー。
いやー、これは杜氏さんおよび酒スト店長藤田さんの挑発なのではないか。アル添は薄いって思ってるだろ?これ飲んでもそう思うかよ!っていう。
なんでアル添しただけでこんなに酸が出てくるの??
なんでアル添してむしろ濃くなってるの??
わけがわからない。面白すぎます。
ブレンドしてみる
では、いよいよ本題のブレンド。添付のパンフに従って純米酒に米焼酎を混ぜていきます。
純米酒50ml+米焼酎3ml
これでアルコール度数が約15%になります。
やや苦味と雑味、ボリュームが増します。で、確かにアル添らしい軽い後口になりますね。
とはいえ、純米とそこまで大きくバランスは変わらない感じ。
燗も悪くはないがもうひとつ。40度くらいは良いんですが熱燗まで上げるとバランス崩れちゃうかな。まあ、フルーティ系なんで、そこは仕方ないですね。
純米酒50ml+米焼酎7ml
添加量が増えた分、アルコール度数も上がって16%に。
クセが減った分、同時にジューシーさもなくなりました。いわゆる日常酒(普通酒)に近い味わいに感じます。うん、何にでも合うやつだわこれ。
ボリュームと旨みは増します。酸味の強さは変わらないはずなんですが、全体の味わいにおける役割が変わるとでも言いましょうか。
で、55℃の飛び切り燗、めっちゃいい。フルーティさがほのかに残りつつ何にでも合わせられる汎用性を獲得しました。
考察
アルコールの添加量について
正直、7ml以上に添加量を増やすとアルコールの苦味や雑味が目立ってきて、さらに純米酒の味わいもかなり薄れちゃうのでバランスは崩れます。
ただですね、めちゃくちゃ美味かった③のアル添酒は、ベースの純米酒50mlに対して7ml以上の比率でアルコールが添加されてるんですよ。(店長の藤田さんに確認済)
そう、おかしいんです。単純な理屈からすれば、この比率で③のアル添酒の味にかなり近づくはずなんです。
それが、結果としては全く違う味になる。
アルコール添加のタイミング
実は現行法では醪を絞った後にアルコールを加えることは認められてません。ですから今回の自作ブレンドは、厳密に言うと蔵元で作られるアル添酒とは似て非なるものです。
つまり、ただ単に純米酒に醸造アルコールを足しただけでは、あの味にはならないってことです。
本気のアル添酒には添加のタイミングや量など、杜氏の繊細な技術が詰まってるんですね。
それが今回のブレンド実験を通してよく分かりました。
本醸造と普通酒におけるアルコール添加量の違い
ちなみに本醸造はアルコール濃度95%換算で白米重量(※)の10%までのアルコール添加が認められてます。
※1升(1.8L)のお酒を作るのに必要な白米は約0.77kgと言われています。
計算したところ、50mlの酒に対しては醸造アルコール約6.5mlくらいが、その上限のようです(多分合ってるはず…)。
ただ、実際に市場に出回っている本醸造はその半分以下の添加量であることが多いようです。えーと、6.5mlの半分以下ってことは、ちょうど最初にやった3mlくらいですね。
確かに、3mlでは質のいい本醸造によくある柔らかさが出てました。
そして50mlに対して焼酎が7mlになると、本醸造としては法的な上限をややオーバーと言うことで、ほぼ普通酒のレベルと言っていいでしょう。
ん?ってことは、あの③のアル添酒、7ml以上の添加なんだから本醸造どころか普通酒ってこと!?マジですか!!!
ペアリングを考える
あ、そういえばここ、ペアリングの研究所でしたね。
というわけで、とってつけたようにつまみを選んでみました。
ここは本醸造に合わせ、ある程度酸が効いたジューシーなものにしましょう。
ネギのバルサミコマリネ
レシピ
ネギを耐熱容器に並べてマリネ液を注ぎます。
マリネ液は粒マスタード 小1、砂糖 大1/2、水 大2をちゃちゃっと混ぜただけ。
そこに塩コショウ少々とオリーブオイル適量をまわしかけます。
ラップをかけて3分レンチン、最後にバルサミコ酢 大2をかけて完成。
こちらのレシピ本に載っていたものを参考にしました。
このサイトで紹介するものとしては、やや手間がかかってるかも。
実食!
バルサミコの柔らかい酸とアル添酒の酸が呼応します。
言い方を変えれば、この酒はバルサミコと釣り合いが取れるくらいジューシーってことですね。
甘味のバランスも文句なし。マリネ液をつけすぎないようにして、ネギの甘味を活かすようにすると、日本酒ときれいにリンクします。
ちなみに、この酒でなくとも酸が強めのタイプであれば問題なくペアリングするはずです。
まとめ
とにかくアル添酒が美味すぎた。これが普通酒ってのが衝撃です。
アル添に対して偏見のない自分でさえ、にわかには信じられない高いクオリティ。
もちろんブレンド実験もいろいろ知見を得られるので楽しいんですが、この普通酒を飲むためだけにこのセットを買っても損ではないと思います。いやほんとに。
ご注文はこちらからどうぞ!→SAKE Street store
それではまた!