日本酒と音楽、第4弾はRECOJOを取り上げます。RECOJOは昨年7月に惜しくも解散してしまったアイドルなんですが…って、またアイドルかよ!なんて言わずにしばらくお付き合いくださいな。
軽妙な世界観
別に典型的なアイドル曲を否定するわけじゃないですが、この曲はアイドルの枠を超えたアーバンなディスコでよくまとまっています。イントロのファンキーなカッティングから「おっ!?」と思わせてくれますね。 間奏のエレピもかっこいい。タイトで派手すぎないアレンジによってファンクの持つ熱さを適度にクールダウンしています。構成もわりと淡々としているしね。
そんな熱量ぬるめのバックトラックに呼応したのか、歌自体は良くも悪くもアイドルらしいというか、やや子供っぽくて感情表現に欠けるところがあります。また、歌詞も大して深い意味があるとは思えず、どっちかいえば語呂や韻を重視したんだと思いますが、そのおかげで非常に耳触りが良いですね。
これらの要素が軽妙にミックスされた結果、都会らしい気怠く退廃的な世界観を醸し出すことに成功しています。
制作側はそこまで狙っていないかもしれないですが、結果的には面白いバランスになったんじゃないでしょうか。これがもっとわかりやすく無感情・無機質だったりするとPerfumeみたいになりかねないし、逆にエモーショナルすぎたり元気いっぱいでやたら押しが強かったりするとせっかくの曲の雰囲気も壊れてしまう気がします。全然ジャンルは違いますが、こういう世界の作り方はなんかピチカート・ファイブを思い出しますね。
山城屋 standard-class
前回、前々回は酒のスペックからこじつけましたが、今回は飲んだニュアンスに音楽と共通するものを見出した「山城屋 standard-class」をチョイス。
→参考:Lucky Tapes 『22』の透明感が風の森 ALPHA TYPE2とシンクロする
→参考:つばきファクトリー『低温火傷』と積善 純米吟醸に通じる「若さ」
で、この山城屋、29BYから全量純米大吟醸かつ生酛、一回火入れ、中取りという極端な方針転換をしています。(余談ながら酒屋からするとその極端な方針のせいで売りづらい!との噂があるとかないとか…)
精米歩合40%の1st-classと精米歩合50%のstandard-classがラインアップされていますが、standardのほうがバランスがいいように思います。
味わいはといえば、爽やかな柑橘系の立ち香がほんのり、甘味も旨味もあまり強くないので控えめな印象なんですが、酸が良い仕事をして凝縮感を生んでいます。個人的にはこの手のしっかり芯がある淡麗酒がすごく好きなんですよ。
正直、悪い書き方をしてしまうと薄味というか地味だと感じる人もいると思います。引っかからない人は全く引っかからないかもしれません。すごくクオリティが高いんだけど、なんかスルーされてしまう切なさがあるっていうか。まさに今回取り上げた曲がそれなんですよね。
そういった良くも悪くも淡々としたところと、基本スタイリッシュなんだけど、まだ未完成なあたりが両者に通じるポイントですな。
ところでこの山城屋、ひやおろしポジションとして、しばらく寝かせたmaturedってのもリリースしてるんですが、まろやかさが加わった味わいで更に好みでした。RECOJOも、もうちょっと続いてたら円熟味が加わって面白いことになったかもね。
ではまた!