日本の酒と音楽

9nineの曲を聴きながら飲む酒は9(nine)しかないでしょう

9nine-best

ネットをぼーっと回遊していたら急に飛び込んできた9nine活動休止の報。全く驚かなかったと言えば嘘になりますが、予感はしていました。そう、川島海荷が脱退した2016年からずっと。

9nineの歴史と楽曲の変遷

初期の無名時代

9nineが結成されたのは2005年。なんと14年前なんですね。オリジナルメンバーの佐武宇綺と西脇彩華は当時12歳でした。

結成当初はその名の通り9人でのスタートでしたが、数多のアイドルグループがたどるのと同じく幾人かのメンバーの脱退・加入の末、ようやく安定的な体制が確立したのが2010年のことでした。

このときのメンバーは佐武宇綺、西脇彩華、川島海荷、吉井香奈恵、村田寛奈の5人で、川島が脱退する2016年までこの体制は続きます。

SMEへの移籍とagehaspringsとの出会い

2010年に新体制となって心機一転、レコード会社をSME(ソニーミュージックエンターテインメント)へ移します。

同年12月に移籍後初となるシングル「Cross Over」をリリース。これが神曲と言ってもいい実に素晴らしい楽曲で、オリコンシングルランキング25位とこれまでの最高位を更新しました。

このヒットの立役者となったのが全面的にプロデュースを受け持ったagehasprings。当時すでにYUKIやSuperfly、中島美嘉などを手掛けて大きなヒットを残し、気鋭のプロデュース集団としてまさに売り出し中でした。

9nineと同時期に手掛けたアイドル、Tomato n’Pineに代表されるような洗練されたコードワークと腰の強いビートが特徴で、そのセンスと手腕はJ-POPを一つ上のステージに引き上げたと言っても過言ではないでしょう。

黄金期(2010年~2012年)

ここから彼女たちの快進撃が始まります。

「SHINING☆STAR」(2011年3月)「夏 wanna say love U」(2011年7月)「チクタク☆2NITE」(2011年12月)「少女トラベラー」(2012年1月)「流星のくちづけ」(2012年6月)と、出す曲出す曲、全て文句のつけようのないフィーバー状態。「Cross Over」から数えて約2年半の間、これだけのクオリティの曲をリリースし続けるなんて奇跡に近いことですよ。

個人的には「夏 wanna say love U」 のカップリングであった「Wonderful World」が出色だと思っています。アコースティックサウンドを巧みに取り込んだアレンジはエバーグリーン。YouTubeの音質の悪いライブ音源しかありませんが、気になった方は「夏 wanna say love U」を買ってみてください。

ともかく、agehaspringsが全面的にプロデュースを請け負ったこの時期が間違いなく9nineの黄金期だったと言えるでしょう。

そして 2012年3月にリリースした、この時期の集大成と言えるアルバム「9nine」はまさに金字塔。マジで名曲しかないので少しでもポップスに興味のある人は全員聴くべきです。

蜜月の終わり

しかし、そんな奇跡は永遠には続きませんでした。2012年11月にリリースした「イーアル!キョンシー feat.好好!キョンシーガール」でagehaspringsから離れ、これまでの楽曲から180度以上方向転換したアッパーでコミカルな曲調で勝負をかけてきました。一発だけの企画モノであったとはいえ、ここで大きく流れは変わってしまいました。

音楽的には面白いんです。インドネシア発祥のファンコットという高速クラブミュージックを取り入れるという大胆な試みは相当革新的でした。ただ、これまでのagehasprings楽曲を期待していたファンからすると肩透かしを食らったのもまた事実。

これ以降、agehaspringsとは単発で数曲関わるのみとなり2013年の「Evolution No.9」のカップリングである「Just A 恋」を最後にタッグは組まれていません。

安定期(2013年~2016年)

2013年以降のリリースにおいては、どの曲もオリコンチャート上は5位~10位程度と好調を維持します。

確かに悪くはないんです。アルバム「CUE」はまだagehasprings時代の雰囲気を引きずっていて、粒揃いです。それ以降は過剰にEDMに寄せ過ぎた感が否めませんが、それでもトロピカルハウスのマナーの上にカントリー風味を足した「茜色」なんかはとても面白いし、いずれも一定の水準は保っています。ただ、どうしても物足りなさを禁じ得ない。何かこう、グッとくるものがなくなってしまったんです。

やはり黄金期の楽曲群があまりにハイレベルすぎたんですよね。結局最後までここを超えることはできなかったように思えます。

川島海荷という看板

ちょっと時間を2009年まで戻します。この年、グループの顔でもある川島海荷がカルピスウォーターの10代目CMキャラクターに抜擢されます。この頃から彼女の一般的な知名度が上がり始め、アイドルと並行して活動していた女優としての評価も「ブラッディ・マンデイ」や「アイシテル〜海容〜」への出演などによりうなぎ登りになっていきます。

もちろん、喜ばしいことではあるのですが、グループにとっては”終わりの始まり”でもありました。

あるグループの中の一人だけ突出して知名度が上がると、間違いなくグループとしてのバランスは狂っていきます。

例えば、1000年に1人のアイドルと言われて大きな注目を集めた橋本環奈は、福岡のローカルアイドル「Rev. from DVL」の一員でしたが、グループの知名度は全国区までは至らず解散しています。

このようなケースは枚挙に暇がありませんが、9nineも川島の活躍と反比例していびつなバランスの上で成り立つようになっていきます。

その他のメンバーが劣っているという意味ではありません。しかし、知名度や世間の評価というものは残酷で、実力や努力とは無関係にメンバーたちを翻弄するのです。

川島海荷の脱退

そして、2016年、グループにとって最大の危機が訪れます。川島の脱退です。

実は彼女の気持ちとしては2014年からすでに脱退の意向を持っていたようですが、周囲の説得でここまで続けたということのようです。

とにかく、グループの芯となるメンバーが抜けるということで、通常は大きなテコ入れが必要となります。新メンバーを補充するのが常套手段ではありますが、9nineの運営はそれを選びませんでした。

ここからは推測ですよ。当然残ったメンバーやファンの意向もあったと思います。ただ、それ以上に年齢的な部分も含めてこの時点で終わりを見据えていたのではないかと。変に大手術をして生き長らえるより、残ったメンバーでできる限りの活動を続けて、頃合いを見て散開する。これがもっとも美しい姿だと判断したのではないでしょうか。

4人体制(2016年~2019年)

4人になってからリリースペースは落ちていきます。

ライブは変わらずこなしていたようですが、アーティストの勢いはリリースに現れるもの。その意味ではグループとして苦戦を余儀なくされていたことは否めません。

そんな中でも気を吐いたのが2017年8月にトレヴァー・ホーン(※)をプロデュースに迎えての「SunSunSunrise」。アメコミの巨匠スタン・リー最後のアニメ作品となった「The Reflection」のエンディングテーマとして制作され、同アニメにも本人役で出演するなど話題を呼びました。

そこから再び波に乗ることを期待しましたが、2018年はデジタルリリースが2曲のみでMVも明らかに低予算。悲しいかな、再び大きな花火が上がることはありませんでした。

そして、2019年2月27日の活動休止発表。ついに彼女たちにも終わりの時はやってきたのです。

※実は9nineとトレヴァー・ホーンとの縁は浅からぬものがあります。端緒は2013年のシングル「Evolution no.9」でYESの「Owner Of A Lonely Heart」の著名なリフをサンプリングしたところから。また、2017年5月リリースの「Why don’t you RELAX?」もトレヴァー・ホーンがプロデュースしたフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの大ヒット曲「Relax」を大胆にモチーフにしています。

GOZENSHU 9(NINE)

長々書いてきましたが、大事なことを忘れちゃいませんか。そうです、ここは日本酒ペアリングのサイトです。

9nineに想いを馳せながら飲む酒と言ったら、これしかないでしょう!岡山は辻本店の醸すGOZENSHU 9(NINE)。

9人の若い蔵人が醸すことからこの名がついたらしいです。味のほうは濃醇旨口系ながら菩提酛由来の酸が効いていて意外にすっきり飲めます 。

菩提酛とは

この蔵の特徴でもある菩提酛について簡単にご説明します。

菩提酛とは日本最古の日本酒の製法で、奈良をはじめとする一部のチャレンジングな蔵で今でも受け継がれています。

暑い室温の中で生米と蒸米を水につけて放置すると天然の乳酸菌が発生します。このワイルドな液体をスターターとして醸造するのですが、これを「そやし水」と呼びます。別名「くされ酛」というくらいで滅法臭うらしく、そんなある意味劇薬みたいなものを使ってちゃんとした日本酒にまで昇華させた昔の人はすごいなあと思うわけです。(誤解の無いように言っておきますが、当然現在は完璧な衛生管理のもとに醸造されてますので、念のため)

味わいとしては比較的濃醇で酸がでやすい傾向があります。この製法で作ってる酒はほとんどが奈良産なんですが、どういうわけか岡山のこの蔵では菩提酛のお酒が蔵のトレードマークになるほど力を入れています。

最後に一曲

とにもかくにも、彼女たちは旅立ちます。新たな一歩を踏み出す彼女たちの背中を押すのにぴったりな曲がこちら。

14年間お疲れ様でした。たくさんの素晴らしい楽曲をありがとう。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう