日本の酒と音楽

つばきファクトリー『低温火傷』と積善 純米吟醸に通じる「若さ」

つばきファクトリー「低温火傷」

日本酒と音楽の第三弾はハロプロ期待のグループ、つばきファクトリーを。

アイドル楽曲を掘る面白さ

え!?アイドルなんか聞くんですか?ここまでCharaとかLucky Tapesとかオシャレな音楽紹介してきてたのに!なんて偏見に満ちた心無いコメントが聞こえてきそうな気もしますが、おうよ、アイドルだよ。文句あるかこの野郎。

ぶっちゃけ、DJ時代は日本語曲を中心にかけることが多かったんですが、中でもアイドルの比率は非常に高かったですね。意外なところから良曲を拾ってくることは DJの醍醐味の一つ ですから。ていうか、単純に自分が最も活発に活動してた2010年から5年くらいの時期ってアイドル黄金期で、曲も素晴らしいものが多かったんですよ。

作詞作曲がやたら若い女子

で、本題のつばきファクトリーの楽曲について。まず、制作陣が恐ろしい。作詞の児玉雨子は 2019年1月現在 25歳で近年ハロプロ楽曲を多く手掛ける才媛。非常に情緒的というか女子の心情を美味く表現できる稀有な才能を持っていると思います。

そして作曲が これまた若くて2019年1月現在で22歳の大橋莉子。乃木坂やアイドリング!!!なんかにも楽曲提供してますね。ちょっともうマジでなんなのよ。前回のLucky Tapesでも書いたけど俺が22歳の時なんてほんとゴミみたいな人間だったからね(今はカスに進化しました)。

とりあえず、前置きはこのくらいにして曲を聴きましょう。

つばきファクトリー『低温火傷』


どうです、この絶妙なダサさ。これぞハロプロ、つんくは関わってないのに、そこはかとなく感じる寺田イズム。 まるで80年代後半~90年代のWink的なノスタルジーと哀愁。これ、間違いなく新宿二丁目界隈の人たち大好きだろうなあ。

この微妙なラインを突くことができる作曲の大橋さんは見事と言う他ない。そして「逸らしてる熱視線何ジュール?」なんてフレーズぶっこんでくる児玉さんの才能にもお手上げ。

積善 純米吟醸

そして、そんな俺大絶賛の曲に合わせる日本酒は、長野の積善 純米吟醸です。なぜこの酒なのか。やはり、この曲の持つ郷愁や絶妙な雰囲気を考慮して…というのはこじつけで、本当の理由は使用酵母が「椿の花酵母」だからです!イエス単純!

いいんです。大体、音楽と日本酒合わせるって時点で無理があるんだから、こじつけでも何でも思いついたもん勝ちです!

花酵母について

詳細は別サイトに譲るとして、簡単に花酵母についてご説明を。

まず、そもそも酵母とは何ぞやってところから。酵母ってのは醸造の際に糖分をアルコールに変える働きをするもので、その種類によって酸の出方や香りが大きく変わってきます。

きょうかい酵母と言って日本醸造協会から頒布されるものや、蔵付き酵母といってもともと蔵に存在している酵母を利用することが多いのですが、この花酵母ってのはそれらとは違って東京農大の偉い人が花から分離・培養して利用することに成功したものです。

ベゴニアやらヒマワリやらカーネーションやら結構な種類があって、それを使った醸造をする蔵も年々増えてきているようです。来福とか天吹なんかが有名ですね。そういえば来福にも椿酵母の酒ありますね。

ひとつ誤解されがちなんですが、花から分離したからといってその花の香りがするわけではありませんので、そこはご承知置きを。

酒の味わいと伸びしろ

さて、積善に戻りましょう。

なんとこのお酒、日本酒度が-13ということで、スペックだけ見ればかなり甘そうな気がしますが、実際飲んでみると酸が良い仕事をしているおかげか、そこまでべったりした印象は受けません。いわゆる甘酸っぱ系として非常に飲みやすく日本酒慣れしてない人にもお勧めできる味になっています。

実は杜氏の飯田氏は昭和59年生まれということで、杜氏としては非常に若い。だからというわけではないですが、正直に言ってしまえば、積善という銘柄はまだまだ粗削りというか改善の余地があるように感じます。

この曲を作詞作曲した二人や、主役であるつばきファクトリーと同じく、まだ未完成でたくさんの伸びしろがある銘柄なんですね。

そんな彼らの成長を見守るのも、また一つの楽しみ方と言えるんじゃないでしょうか。お前どこから目線だよってツッコミは認めます。

ちなみにこの積善を醸す西飯田酒造店はなかなかクレイジーで、27BYから全量花酵母仕込みに切り替えたそうです。全量ってあんた…。まあでも、厳しい業界ですからこのくらいエッジの効いたことしないと生き残っていけないかもしれないですね。飯田氏にはぜひ頑張っていただきたいです!

ではまた。