生トマトに酢をかけて食べると、激しく日本酒に合うようになるというお話。
酢トマトとは
その名の通り、適宜切った生トマトに酢をダバーっとぶっかけただけの、もはや料理ともいえない料理。
あまりポピュラーな食べ方ではありませんが、こちらの本に紹介されていて、やってみたら驚きの美味しさ!
酢をそのままかけたりしたら酸っぱくなってむせ返るんじゃないかと思うかもしれませんが、意外にそうでもないんですよ。不思議なことに。
五味チャート
塩0 甘1.5 酸3.5 旨3 苦0
ただの生トマトだと酸と旨みの値がもっと低く、全体的にやや薄味になります。
しかし、酢トマトは酸が増すことで相対的に甘みも強く感じるようになるので全体的に味が濃いんです。
ですから、ちょっと味気ない市販の安めの未熟なトマトもこれでだいぶ美味しくなりますよ。
お好みで軽ーく塩をふってもいいと思います。
合わせる日本酒を考える
これ、実はかなり万能。相当幅広い日本酒に合わせられます。
冷酒系と燗酒系、それぞれ違った合い方をするんですよ。
トマトには、冷旨酸であるクエン酸と温旨酸であるグルタミン酸の両方を含んでいるためです。
ですから、冷酒であればクエン酸および酢酸が、燗であればグルタミン酸がリンクしてくれるというわけ。
なお、酸の系統については以下の記事を参考にしてください。
冷酒系
酢のことを考えると、やや酸度の高いものがベターです。その他のパラメーターは不問と言ってもいいでしょう。
すなわち、香り高いタイプでも、甘みが強いタイプでも、軽いのでも重いのでも。
燗酒系
これも深く考えなくて大丈夫。燗上がりするタイプであれば、大抵は合っちゃいます。
あえて言うなら、温旨酸系である乳酸が豊富な山廃か生酛を選ぶと間違いないでしょう。
酉与右衛門 特別純米 無濾過生原酒& 杉錦 玉栄 山廃純米酒 2015BY
というわけで、今回は全く違う2つの酒をチョイスしました。ていうか、たまたま家にあっただけ。
酉与右衛門(よえもん)は生酒で、岩手の特産米である吟ぎんがを50%精米で使用。柑橘のニュアンスを感じる酸が特徴で冷酒向き。
杉錦は静岡の誇るど燗酒蔵。5年熟成ということもあり、常温だとかなりクセが強くて苦手な人も多いと思いますが、燗をつけると見事に化けます。まろみと旨みが増して、クセはぐっと後退するんですよ。
また、山廃由来の濃厚な乳酸が間違いなくトマトのグルタミン酸と手を取り合ってくれるはず!
実食!
冷酒(酉与右衛門)
若干酢の匂いがするが不快ではない。箸でトマトを一口大に切り、酢に浸してから舌に乗せる。
当然それなりにしっかりした酸はある。それに後押しされてぐっと濃厚になった旨みが心地よい。
まずは冷酒をチビリ。
軽い甘みを感じた後、酒の酸がきっちり酢の余韻を掴む。フレッシュで非常に爽やかな印象。素晴らしい。
燗(杉錦)
次は燗だ。55度につけたものを45度まで冷ましてある。
もう一度、トマトに箸をつけ、口に運ぶ。
そこに杉錦を含むと冷たい口の中が一気に温まる。冷→熱のギャップが楽しい。
甘みはあまり感じないが、酸から旨みへの移行過程でレイヤーが重なるイメージ。
冷酒とは違って、重層的な厚みを感じる。山廃をチョイスしたのは正解だった。
爽やかな冷酒もなかなかだが、燗のほうがよりペアリングの妙を楽しめるかもしれない。
まとめ
先述したように、このつまみの最大の売りは合う酒の幅が広いことです。
生トマト単体ではむしろ狭いのに、酢をかけただけでそこまで広がるってのは面白いですね。
ぜひ、騙されたと思って手元にある酒と合わせてみてください!
なお、彩りとしてバジル、パセリ、オレガノ、大葉などのハーブを乗せても美味しいです。
また、応用でクリームチーズと一緒に食べたり、ゴマ油やオリーブオイルを少量垂らすのも変化があって楽しいですよ。
それではまた!