熱燗完全マニュアル

熱燗(お燗)を上手につけるコツ

熱燗

お燗なんて適当に温めればいいんじゃないの?とお思いの方、ある意味正解です。

しかし、ここで紹介するテクニックを使えば、適当につけるより、さらに一味も二味も違うレベルの燗酒を作れるんです。

これまで「熱燗完全マニュアル」と題してお燗の効果やペアリング燗上がりする酒の選び方、実際に燗に向く銘柄の紹介と続けてきましたが、ようやく実践的なテクニックについて説明する時が来ました。ここまで長かった…!

準備編(お燗グッズの用意)

まず、お燗をする前に大事な準備があります。そう、道具の用意です。

意外に軽視されがちですが、酒器はそれなりに味に影響します。

まあ鍋とマグカップでもできますけどね…

徳利(とっくり)・ちろり

最低でも徳利(とっくり)かちろりはほしいところ。

ビジュアルや雰囲気も味(気分)を左右するものなので、せっかくならおしゃれなものを選びたいですね。

陶器の徳利(とっくり)は熱伝導がゆっくりなため、時間をかけてまろやかな燗にするのに向いています。

一方、金属のちろりは、その逆で熱伝導が早いのでお燗も早くつけられますが、そこは良し悪しですね。

また、錫のちろりを使うと雑味が消えて酒の味がまろやかになるという話もありますが、クソ高いので無理にそこまでする必要もないでしょう。

温度計

それから、温度計もあると便利です。

プロのお燗番は指で徳利の底をちょいと触って温度が当てられたりしますが、けっこうな熟練の技が求められます。無理せず、文明の利器を使いましょう。

オススメはデジタルです。アナログだとどうしてもタイムラグがあって狙った温度帯で引き上げるのが難しくなります。

さらにお店であればタイマー付きがおすすめ。

忙しい合間を縫って少ない人数でオペレーションしなければいけない場合、非常に有用です。

できれば防水・防滴の機能もほしいところ。

平杯

おちょこでもいいですが、お燗には口の広がった平杯がおすすめです。

平杯は香りが拡散してより味に広がりが出ます。

また、構造上、口内全体に酒が広がるので、より酒の味を感じやすくなります。

なお、ワイングラスなど口がすぼまった酒器は香りがこもるので燗酒には基本お勧めしません

あえて、効果としてそこを狙いたいなら無理には止めませんが…

実践編

基本のお燗方法

もっともスタンダードな、徳利(とっくり)を使って湯煎する方法をご紹介。

ここで目指すべき着地点は「マイルドでスムーズ、旨味が開いた状態」です。

なお、このサイトでは原則電子レンジ燗は推奨しません。理由は以下で。

1.徳利の8分目まで酒を注ぐ

・たくさん注ぎすぎると温度が上がったときに膨張してこぼれます。

・少ないと温度が早く上がりすぎてしまい、うまくつけられません。

2.お湯を沸かす

・湯量は少なくとも酒の入っているライン以上~多くても首が漬かるくらいまで。

→酒のラインより湯量が少ないと下部を中心に温まることになり、温度ムラの原因になります。

3.湯温が70℃~80℃くらいまで上がったら火を止める

・基本、火は必ず止めましょう

ただし、あえて60℃以上につける場合は、火を消さずにごく弱火をキープするのもアリ。

いずれにしろ、グラグラ沸騰させてしまうと煮切り酒になってしまいますのでご注意を。

4.徳利をつける

・この際、おちょこか平杯もお湯につけるか水を少しつけてレンジで温めておきましょう。冷たい酒器にお燗を注ぐと一気に温度が下がってしまいますので。

5.狙った温度になったら引き上げる

・最初はぬる燗~上燗(40~45℃)を狙いましょう。この温度帯が多くの酒におけるスイートスポットです。

・時間の目安は5分程度。短すぎると刺々しさが残る仕上がりになることも。

ポイントあせらずゆっくり温度上昇させるのが、口当たりを柔らかくするコツ。高温、短時間を推奨するサイトもありますが、それだとマイルドさに欠けて、アルコール感が鼻につくことが多くなります。

応用テクニック

ちろり燗

ちろり燗などと無理やり名前を付けましたが、要するに徳利じゃなくちろりを使うというだけです。

ちろりは口が広がっており、香りを確かめやすい構造です。

燗をしていると、ふわっと香りが開くタイミングがありますので、温度計に頼らず、この香りで判断して引き上げるテクニックもあります。

このタイミングに関しては、酒によっても違いますし、ひたすら経験して最適なポイントを探るしかないですね。

割水燗

酒の味が濃すぎる場合にごく少量(180mlに対して10ml~20ml程度)の水を加えることで、口当たりが柔らかくなります。

アルコール度数も下がるので適度に飲みやすくなりますね。

もちろん、ペアリングを考える際にも有用です。

例えば、この料理に合わせるなら、もう少しボリュームが軽いほうがいいんだけどなあ、といった場合など。

ただ、割り水に関しては賛否両論

水を足すくらいなら、最初から軽めの酒を使えばいいのであって、蔵が設計した本来の味を生かすべき、といった意見もあります。

まあ、このあたりは皆さんの考え方にお任せします。

蒸し燗

せいろなどの蒸し籠に徳利ごと入れて温める方法。よりまろやかな仕上がりになるといわれています。

恐らくですが、湯煎に比べて温度が上がるまでに時間がかかるので、それが最も味に影響を及ぼしているのではないかと思われます。

蒸気によって、酒の香気が抜けにくくなるということも言われていますが、いずれも科学的な根拠は不明です。

ちなみに、白隠正宗の蔵元杜氏 高嶋氏が積極的に推奨している方法でもあります。

急冷法

高めの60~65℃に付けた燗を一旦水につけて40℃くらいまで急冷する方法。

いわば燗冷ましを人為的に行う手法です。

燗冷ましとは、その名の通り燗の温度が徐々に下がっていくことですが、温度が下がるまでの間にアルコールと香気が揮発していきます。

これにより、マイルドさが増して、やや軽くなるメリットがある一方で、香気が抜けて味気なく感じるというデメリットもあります。(高温である時間が長いほど揮発が進む)

そこで、香気が抜ける前に急冷して適温に下げてしまおうと。そういうわけです。

いやいや、わざわざこんなことしなくても、最初から狙った温度になったら引き上げればいいじゃない、とお思いでしょう。

私もそう思います。でもね、よくわからないんですが、このやり方のほうが美味しくなる酒も確かに存在するんですよ。

何らかの科学的な理由はきっとあるんでしょうが、そこまで探求する研究者がいないので原理は謎のままです。

ちなみに、生酒をお燗するときは急冷がいい、と千葉麻里絵さんがおっしゃってます。

ちょい足し燗

燗をつけたあとに少しだけ常温の酒を加える方法。

これは、燗で香気が飛んでしまった場合や、燗付け前の力強さをあえて加え戻したい場合に行います。

生酒で行うと、燗酒のマイルドさと冷やのフレッシュさを同時に感じさせることができます。

加える量に関してはお好みで。

お燗タージュ(ジョボ燗)

ワインで言うところのデキャンタージュをもじったネーミング。別名ジョボ燗。

やや高めに燗を付けた酒を、別の容器に一度移すことで温度調節をする手法です。

ポイントは別容器に移す際になるべく高い位置から注ぐこと。

これにより空気が取り込まれて、まろやかさが増したシルキーな燗酒が出来上がります。

比較的寝かせが足りない硬い酒の味を開かせたり、アルコール感が気になる普通酒・本醸造酒などをまろやかに仕上げるのに向いています。

まとめ

プロになってくると、ここで紹介した手法を組み合わせたり、複数回温度を上げたり下げたり、別の酒をブレンドしたり(ここまでくると燗関係ない気も)、いろいろとやる方もいらっしゃるようです。

このレベルまで来ると完全に経験と勘の世界になってくるので、踏み込んで説明することは到底不可能です。

複雑な手法に果たしてどこまで意味があるのかも検証してみないとわからないですしね。

とにかく、お燗にルールはないし、やり方も無限ということで、皆様もいろいろとお試しになってみてください。

ではまた!

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