コラム

日本酒で太る理由と太らないようにする方法

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「日本酒って太るからちょっと…」とか「日本酒は糖質多いからなあ」とか、そういう軟弱な声が昨今多くなってきていませんか?そもそも日本酒は本当に太るんでしょうか?この際ですから徹底検証してみましょう!

『「日本酒は太る」はウソ』はウソ

「日本酒 太る」で検索すると数々の反論がヒットしますが、逆に日本酒は太ると言い切っているサイトが見つからなかったので、ここで断言します。

残念ながら日本酒は、飲み方次第で太ります。少なくとも、全く飲まない人と比べれば確実に太る要因になります。

なぜ太るのか

実のところ日本酒が太るというより、酒全般、言い換えるならアルコールの問題なんですよ。正確に表現するなら「アルコール摂取は脂肪の蓄積を促す」という感じでしょうか。

ていうか「日本酒は太りますか?」という質問は前提条件が曖昧過ぎます。「ご飯って太るの?」と聞いてるのと同じです。そりゃ、食い過ぎれば太るし、適量なら太らねえよ。

日本酒だって同じ。飲み過ぎれば太るし、適量なら普通はそれほど太りません。

え?そんなことを聞きたいわけじゃないって?わかりました。じゃあ、もうちょっと突っ込んだ解説をしていきましょう。

肝臓の働き

皆さん、肝臓の役割を知っていますか?

お酒が好きな方が多いでしょうから、まずはアルコールなど有害物質の分解(解毒作用)が挙がりますよね。もちろん正解です。

あと二つあります。一つは胆汁の生成と分泌。これは、ここではあまり関連がないので深く触れませんが、胆汁は脂肪の消化吸収を助ける消化液なので体にとっては大事な役割です。 さあ、残る一つは何でしょう?

それは「代謝」です。

代謝

よく聞く単語ですが、案外ちゃんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。

代謝とは広義ではある物質が別の物質に変換されることですが、ここでは三大栄養素である「糖質」「タンパク質」「脂質」が肝臓によって利用しやすい形に分解・合成されることを指します。

それが酒と肥満にどう関係するのかって?

ごく簡単に言ってしまうと、(1)アルコールを摂取すると、肝臓は真っ先に解毒・分解に取り掛かります。何せ毒ですから、これを放置したら命にかかわります。そして、(2)分解されたアルコールはエネルギーとして利用されることになります。

(3)これを行っている間、肝臓さんは大忙しなので他の仕事は無理!ということで「糖質」「タンパク質」「脂質」ら栄養素の代謝作用は抑制されます。中でも問題になるのは脂肪ですね。(4)ここで肝臓に受け入れ拒否されて行き場を失った脂肪は、仕方ないのでそのまま体脂肪として蓄積されてしまうのです。

ご理解いただけたでしょうか。要するに肝臓がアルコールを代謝している間は脂質が代謝されづらいため、体に脂肪が溜まりやすくなるということです。

なお、これに加えて、過剰にアルコール摂取をすると内臓脂肪の蓄積を促す作用もあるコルチゾールというホルモンが分泌されると言われています。

また、アルコールを代謝の結果産生された酢酸が、末梢組織での脂肪分解を抑制するという話もありますが、これに関してのエビデンス(論証)は見つけることができませんでした。

Point

日本酒を含むアルコールは脂肪の代謝を抑制し、体脂肪として蓄積しやすくなる

酒飲んで、つまみを食べたら即、脂肪

急にしょうもない川柳が飛び出しましたが、これは事実。

先ほど説明したようにアルコールが体内に残っている間、肝臓はその代謝に忙殺されています。その状態で、つまみを摂取したらどうなるかという話をしたいと思います。

つまみは二種類ある

ここではつまみを「炭水化物」と「タンパク質」のグループに分けます。

炭水化物

炭水化物って何なのかはわかりますよね?米や麺、パンなどです。これらは糖質に変換され、通常はエネルギーとして消費されます。

ここでエネルギーとして使われなかった分は肝臓に備蓄されます。しかし肝臓に備蓄しきれなかった分はどうなるか。そうです、皆さんの嫌われ者、脂肪に変換されて体に蓄積していくのです。

まず、飲酒時にそんなにエネルギー消費をするほど激しく体を動かす人は普通いませんよね(たまにはいますが)。それに、すでにアルコール代謝から生まれたエネルギーがありますので、それが優先的に使われます。つまり、エネルギーはもはや有り余っている状態。そうなると、大半は肝臓の備蓄用に回されます。

ここで、アルコール摂取した際の肝臓の働きを思い出してください。アルコールの代謝でいっぱいいっぱいになっているんでしたよね。実はその状態では糖を備蓄することもできません。あとは自明の理ですね。残念ながら余剰分の糖はほぼほぼ脂肪となってしまうわけです。

ちょっと複雑なので図で説明します。

(1)アルコールが肝臓で分解されます。(2)エネルギーとなって体を動かします。(3)糖質もエネルギーとして使ってよ~と懇願しますが、間に合ってます!と拒否。(4)いいもんね、肝臓さんに備蓄してもらうんだから、と思ったら肝臓さんも忙しいから今度にして!とつれない対応。(5)最終的にムカついた糖質君は体脂肪へと変貌を遂げるのでした。

つまり、通常時であればエネルギーとして代謝されたり肝臓に備蓄される糖も、アルコールと一緒に摂取することで少量であっても脂肪に変換されやすくなるんですね。

タンパク質

じゃあ、肉類や魚などのタンパク質中心のつまみにすればOKなの?と思いますよね。しかし、残念ながらそんなに簡単な話ではありません。

タンパク質は体組織の原材料となる栄養素です。これらは、新陳代謝に伴って消費されますが、そこで使われなかった余剰分は、体を動かすためのエネルギーになります。しかし、そこでも使われなかった分は糖質と同様に脂肪となります。

成長期を過ぎた大人になると、それほどの材料を必要としませんので、かなりの割合でエネルギーに回されることに。

何度も言いますが、肝臓ではアルコールを代謝して優先的にエネルギーとして消費するんでしたよね。そうなると、結局タンパク質から得たエネルギーも使い道がなくなり、最終的には脂肪となってしまうのです。このあたりは結局糖質と同じ流れですね。

Point

アルコールと同時摂取したつまみは、ほぼ脂肪になる

日本酒は他の酒よりも太りやすいのか

とりあえずアルコールが脂肪を蓄積する原因になるのは分かった。じゃあ、同じアルコールでも日本酒は他の酒と比べてどうなのか?気になりますね~。

以下で詳しく説明していきましょう。

カロリーについて

消費しきれないカロリー(=エネルギー)が多ければ多いほど脂肪蓄積につながるという前提で、まずは代表的な酒類のカロリーを見ていきましょう。

※100gあたり

日本酒103kcal
ビール40kcal
赤ワイン73kcal
焼酎(乙類)146kcal
ウイスキー237kcal

出典:文部科学省 食品成分データベース

これだけ見るとやはり日本酒は比較的高カロリーに見えますね。しかし、この表には落とし穴が。これ、全て100mlあたりのカロリーなんです。

あなたはビールや日本酒をどのくらい飲んだらヘロヘロになりますか? 私の場合、ビールだったら2000mlくらい、日本酒だったら4合(720ml)くらいかな。日本酒をビールと同じ量(2リットル)飲んだら多分死にます。

つまり、酒によって飲む量は違うということ。ですので、今度は1日の適量とされている日本酒1合=180mlの純アルコール量に基準を合わせた表を作ってみました。

酒類(度数)摂取量純アルコール量総カロリー
日本酒(15.1%)180ml21.6g
185kcal
ビール(4.6%)583ml21.6g233kcal
赤ワイン(11.6%)232ml21.6g169kcal
焼酎乙類(25%)105ml21.6g153kcal
ウイスキー(40%)64.6ml21.6g153kcal

※純アルコール量の算出式
摂取量(ml) × 度数 / 100 × 0.8(比重) = 純アルコール量(g)

いかがでしょうか。適量を飲む分には大差ないでしょ?

ただ、このままではまだ正確な値とは言えず、正しい比較をするにはここから更にエンプティカロリーを差し引く必要があります。

エンプティカロリーとは

エンプティカロリーとはその名の通り「栄養素を含まないカロリー」という意味ですが、アルコールもその一つとされています。

アルコール自体には栄養素がなく、代謝の過程で熱になって消費されてしまうため、摂取してもカロリーとしては計算されない=太らない。ということが言われます。

これをもって「酒はエンプティカロリーだから、どれだけ飲んでも太らない」という人もいますが、半分正解、半分不正解です。

ウイスキーや焼酎、ウォッカなどの蒸留酒に関しては、ほぼアルコール分のみなので一応当てはまると言っていいでしょう。ただ、それ以外の酒類には糖類をはじめとする栄養素が含まれます。

要するに、エンプティカロリーとして計算していいのは純アルコール分のみなのです。

というわけで、先ほどの表の総カロリーからエンプティカロリーを引いた実質カロリーを算出してみます。

純アルコール1gあたり約7kcalとされていますので、21.6g×7kcalで151.2kcalを引けばOK。

酒類(度数)摂取量総カロリー実質カロリー
日本酒(15.1%)180ml185kcal33.8kcal
ビール(4.6%)583ml233kcal81.8kcal
赤ワイン(11.6%)232ml169kcal17.8kcal
焼酎乙類(25%)105ml153kcal1.8kcal
ウイスキー(40%)64.6ml153kcal1.8kcal

なるほど、大変面白い数字が出てきました。

ははは、ビールすげえ。日本酒もなかなかですね。蒸留酒である焼酎やウイスキーはさすが。ほとんど純アルコールのみであることがここからもわかると思います。

この段階で、日本酒と蒸留酒(焼酎・ウイスキー)の差は32kcal。この程度であれば一緒に食べる料理などで簡単に逆転されてしまう数値ですし、大した問題ではありません。

普通、1合では満足しない

しかし、この量で満足する人は少数派だと思います。では仮にこの4倍量飲んだとしたらどうでしょうか。

酒類摂取量実質カロリー
日本酒720ml135.2kcal
焼酎420ml7.2kcal
ビール2332ml327.2kcal

日本酒4合で135.2kcalになりますね。まあこのくらいはどうってことありません。

最低値の蒸留酒と比べてみましょう。焼酎なら420mlで7.2kcalとなりますので、日本酒4合のほうが128kcal多く、最高値のビールと比べると日本酒のほうが192kcal ほど少なくなります。

いずれも料理であっという間に逆転してしまう数値ではありますが「どの酒を飲んでも大差ない」と言い切るのはちょっと無理があるかな。

ちなみにビールと蒸留酒だと320kcalの差になります。ここまで来るとさすがに無視できる値じゃなくなってきます。加えて、ビールには揚げ物が定番だったりするので、何も考えずに毎日の晩酌で唐揚げ食ってビール飲んでってやってると明らかに太るということは言えます。なるほど、これがビール腹のメカニズムか…!

Point

日本酒は蒸留酒に比べればカロリーが高めだが、適量であればその差は問題にならない。

脂肪蓄積を最小限に抑えるには

ここまで、日本酒に対してネガティブな情報をお伝えしてきましたが、あくまで私は日本酒を推奨する立場。このままでは業界の裏切り者として夜道で刺されかねません。

まだ死にたくないので、ここからは日本酒を飲みつつも脂肪蓄積を最小限に抑える方法を考えていきます。

適量なら大して問題はない

上でも書きましたが、カロリーに関しても肝臓の代謝の観点からも、適量+α程度であればさほど問題になるほどではありません

むしろ酒と一緒に食べるつまみのほうがはるかに影響が大きくなります。

糖質もタンパク質も脂肪も結局脂肪になっちゃうんでしょ…じゃあ、食べられるものって野菜とかこんにゃくとかしかないじゃん、とお嘆きのあなた、安心してください。ここではそれは推奨しません。

なぜなら、ここはペアリングを追及するサイトだから!イタリア人みたいですが、美味しい料理とそれに合う酒を楽しむことにこそ人生の喜びがあります。そこでカロリーを気にして選択肢を狭めてしまっては意味がありません。食いたいものを食いましょう。

そうは言っても、やっぱり太るのは嫌?それはまあそうですよね。でも大丈夫。

翌日リセット

皆さん、毎日毎日豪勢な料理と適量を超えた晩酌をするわけではないですよね。ですから、仮に食べ過ぎてしまったとしても翌日の食事を工夫すれば問題ありません。

栄養素が肝臓で代謝されて、余剰分が最終的に脂肪細胞に蓄えられるまでどのくらい時間がかかると思います?実は18時間~48時間と言われています。

理屈としては、その間に基礎代謝や運動で消費してしまえば、脂肪として蓄積しないということになります。

つまり、翌日の食事を控えめにすれば、前日の悪影響は最小限に留められるのです。あ、だからといって絶食はダメですよ。

これを語りだすと本題から激しくズレていくので、詳しくはこちらのサイト他、「食べ過ぎ 翌日 リセット」で検索してみてください。

本格的に糖や脂質の代謝のメカニズムを知りたい人(いるのか?)はこちらがわかりやすいです。

事前に筋トレをすべし

筋トレをすると、その後数時間の間、筋肉はタンパク質や糖質を欲するようになります。先の説明でアルコールと一緒に食ったつまみはほとんど脂肪に回ると書きましたが、それらが筋トレの刺激を加えることによって脂肪になる前に筋肉の材料として消費されるのです。

酒を飲む前にわざわざトレーニングをする人も稀でしょうけど、もしタイミングが合ったなら、是非筋トレをしてからの飲酒+食事をおすすめします。

ちなみに、純粋に筋肉をつけたい人はアルコールは厳禁です。アルコールによって筋トレの効果が激減するとも言われています。

飲酒のために筋トレをするか、筋肉のために酒を断つか、そこは個人の考え方次第ですが、両者の関係性は理解しておきましょう。

小技集

最後に、焼け石に水かもしれませんが、できる限りの対処をしてみましょう。いずれも明確なエビデンスはないので効果は約束できませんが、何もしないより多少はマシかと。

ヘパリーゼ

お酒を飲む際にウコンまたはヘパリーゼ(肝臓加水分解物)をはじめとする、肝臓の働きを助けるサプリを取ると良いかもしれません。

肝臓の動きが良くなることで、アルコール代謝の効率を高めて、より早く脂質代謝に移れるからです。

和らぎ水

お酒と一緒に水をたくさん飲みましょう。

水を大量に飲むことで、摂取したアルコールの一部がそのまま尿として排出されるそうです。割合にして1割程度らしいですが、それでも肝臓の負担を少しでも減らして、脂質代謝へ仕事をシフトさせることが大事です。

ちなみにこれは太るとか痩せるとか以前に、体のことを考えると必須事項と言えます。人はアルコールを摂るとかなり脱水しちゃうんですよ。

冷酒より燗

人は体が冷えると代謝が下がり脂肪を溜め込むから、燗で体を温めることで代謝UP!みたいな話。

正直、冷えとか代謝とかってキーワードが出てくると一気に頭の悪い感じになりますね。温めたほうがいいのは確かだと思いますが、冷酒を燗に変えた程度で果たしてどのくらいの効果があるのかは疑問が残ります。

また、ペアリングを考えたら冷酒のほうがベターな場合も多いので難しいところですが、冷酒でも燗でもどちらでも合う料理であれば試してみてもいいかもしれません。

まとめ

ここまで煽るような書き方をしてきましたが、結局のところ日本酒で太るも太らないも、飲み方次第ってことです。

適量を守ればほとんど影響はないですし、飲み過ぎたとしてもまだまだリカバリーは効くのです。

しかし、逆もまた然りで、毎日適量以上の酒と調子に乗ってハイカロリーな食事を同時に摂っていたならばそりゃあ太りますとも。それは日本酒だろうがワインだろうが焼酎だろうが同じことです。

結論として、日本酒は太らないと言い切るのは無理がある、しかし、太る可能性があるのは日本酒だけじゃない!ということでごきげんよう!