ラム好きの間では話題沸騰のアロスティチーニがテイクアウトできるようになっているじゃないですか!これはもう家飲みのお供にしない理由がない!
というわけで、アロスティチーニに合う日本酒を探ってみました。
アロスティチーニとは
2019年末よりサイゼリヤに登場したメニュー。ラム肉の串焼きですね。
サイゼのアロスティチーニ最大の特徴は独自の付属スパイスにありますが、本場のアロスティチーニではスパイスは使用せず、しかもラムではなく普通はマトンだとか。
ですので正確には異なる料理ですが、そこはそれ、堅いこと言わずに楽しみましょう。
付属スパイス
そもそも全くクセがない肉質で、さらにスパイスが効いているので非常に食べやすい。大衆店だから、万人に向けた味にしてきたんでしょう。
そのスパイスはクミンがメインで恐らくタイム、ガーリック、ジンジャーが加えてある(ような気が)。とにかくアジアと西洋の中間をいく風味になっており面白い。
羊以外の肉や油を使った野菜につけても美味しいですよ。
辛さはあまりないので、物足りない人は一味やカイエンペッパーなどを好みで加えてもいいと思います。
ちなみに、このスパイス、カルディで売ってる羊名人にそっくりですが、カルディのほうがやや抑えめかも。
五味分析
ベースの味付けはシンプルなので、付属スパイスをつけなければラムの味を素直に楽しめます。
スパイスにそこそこ塩味がありますが、それを足してこんな感じ。
肉系ではありがちのシンプルな五味チャートですが、ほとんど塩味と旨味で構成されていますね。ここに脂や香りなどが加わってきます。
合わせる日本酒を考える
まず考えるべきは、ラムのクセを活かすか殺す(流すorマスキング)か。
ただ、スパイスのおかげでかなりクセは弱まっていますので、ここは活かす方向でいきましょう。
日本酒系の店でラム肉を出す店も増えてきていますが、どちらかと言うと燗酒系の熟成したものを合わせることが多いイメージ。
それはそれで合いますがセオリー通りで当たり前なので、ここではあえて生熟成のクセをぶつけてみたいと思います。
生酒を熟成させると多かれ少なかれ「生ムレ」といわれる香りが発生します。
成分的にはイソバレルアルデヒドと言いますが、これが草いきれのようなクセで多くの人は不快に感じるようです。
ただ、微量であれば面白いアクセントになるので、今回はそこを狙っていきます。
十六代九郎右衛門 山廃純米 2018BY
なんとなく勘でラム+スパイスに合いそうな九朗右衛門の山廃、1年ちょいの生熟をチョイスしてみました。
開けたてはわりとフレッシュ感が残っているので、あえて開栓後数日常温放置して生ムレ感を出しています。
ただ、実際合わせてみると香りの相性は狙い通りだったものの、甘味が強く、全体的な強度もラムを凌駕してしまっている。
しかし、また別の酒を買いに行くのも億劫。こんなときはブレンドで薄めちゃえばいいんです!(暴挙)
割り水という手もありますが、ちょっと味わいが物足りなくなってしまうので、ここは万能選手の八海山普通酒に登場していただきます。
だいたい、九朗右衛門6に対して八海山4くらいかな。
これで濃すぎた五味のバランスが整い、アロスティチーニにマッチするようになりました。
五味チャートにするとこんな感じ。
実食!
串をつまみ、すっと皿から持ち上げるだけでクミンの芳香が漂う。
ラム肉の小片を無造作に口に突っ込むと、さらに芳醇でエスニックな香りが激しく鼻腔を刺激する。
まずスパイスに混ぜ込まれた塩がビビッドに立ち上がる。そして咀嚼するごとに肉の旨味が塩味と融合し始める。
飲みこむと同時にラム独特のクセがふわりとやってくるが、スパイスのおかげもあって嫌味は全くない。
ここで酒を一口。柔らかい甘味で一旦口内がリフレッシュされるが、すぐにラムの残り香と生熟の含み香が出会う。
完全に同じ種類の香りではないが、確かに共通点はあり、ほどなく両者の差が分からなくなる。
酒のおかげで、ラムの旨味は嚥下した後も途切れることなく継続し、ゆっくりとした余韻を残しながら薄らいでいく。
まとめ
スパイス×ラム×生熟、3者の香りの競演は非常に楽しいものでした。
これは完全にアリです。
生熟のクセは人によっては難しいところもあるかもしれないですが、今回のように薄味の酒をブレンドすることでそれが和らぐ効果もあります。
このブレンドのテクニックは覚えといて損はないですよ。人によっては邪道だ!と怒られるかもしれませんが。
なお、生熟のペアリングではカプレーゼと合わせたレポートもありますので、ぜひ参考にしてください。
それではまた!