日本酒ペアリング実践

澤屋まつもと守破離 忘年会を飲んでみた

日本酒好きなら「澤屋まつもと」もしくは「守破離」という銘柄を一度は聞いたことがあるでしょう。

私も愛好していますが、実に素晴らしいクオリティのお酒です。

その酒を醸すのが京都にある松本酒造。ご存知の方も多いと思いますが、11月末に、この松本酒造で大変な事件がおきました。

守破離ブランドを立ち上げて、ここまで育ててきた蔵元杜氏の松本日出彦氏が突然蔵を辞するというのです。

詳しくはご本人のFacebookを見ていただきたいのですが、要は株式会社化した松本酒造の取締役会で、これまで酒造りに携わっていない大株主によって社長を務めていた日出彦氏の父、松本保博氏が強引に解任となり、それに反発した日出彦氏も自ら蔵を去ることになったのです。

日本酒ファンの間ではいろいろな憶測が飛んでおり、新たな体制に対して不買運動をしようなんていう話も上がっています。

いろいろな考えがあるとは思いますが、これはあくまで会社内の話であり外部の人間がとやかく言うことではありません。経営状況から致し方ない措置だったのかもしれないし。

ひとつ言えるのは、(現時点では)引き続き残った蔵人が一生懸命酒を作っているということ。日出彦氏を応援したい気持ちは当然ありますが、あまりネガティブな行動はしたくないですね。私は。

まあそうは言っても日出彦氏の作る松本酒造での酒は今期が最後となるのは確かなわけで、ラストの作品となる酒は是が非でも飲んでおきたい。

というわけで、早速GETしたのがこちら。

守破離 忘年会 うすにごり生 五百万石

えー、ちょっとちょっと、「OTSUKARESAMADESHITA!」って、なんという皮肉なラベル…酒屋情報では、この話の前からラベルは作ってあって、コロナで大変だった1年、皆様お疲れさまでした、という意図で単なる偶然だとか。

味わいのレビュー

味のほうは当然さすがのクオリティ。

ほんのりフルーティな立ち香。守破離らしい発泡感、ミネラルを伴う旨味。これも出すぎずにバランスが良い。

甘みは比較的ドライで、うすにごり特有のまろみを帯びつつもミネラル感が強いので案外シャキッと骨格を形成しています。

五百万石の良いところを非常にうまく表現できていますね。

酸は目立たないものの、この骨格の形成に一役買っているのは確か。

最後に新酒らしい苦味がクッと感じられて口中を締めてくれます。

五味チャート

五味を数値化すると、甘2.5 酸2 旨3 苦1.5くらいかな。

オリーブオイル さんまときのこ

さて、この酒に合うつまみを考えることとします。

すっきり系なので、同じくあっさりしているものが基本になりますが、うすにごりのまろみも若干あるため、そのへんも勘案しましょう。

で、パッと思いついたのが「オリーブオイル さんまときのこ」。ややニンニクが弱いアヒージョだと思っていただいて間違いないです。

基本的には薄味ながら、オリーブオイルのまろやかさがちょうどいいんじゃないかと。

見ての通りセブンイレブンやイトーヨーカドーで売っているセブンプレミアムの缶詰です。

でもね、マジで侮れないですよ。ちゃんと美味しいので、最近リピートしまくってる商品なのです。

五味の分析

塩2 甘0 酸0.5 旨3 苦1で、旨味と苦味がリンクしてくれそう!

強度もだいたい同じくらいなのでいけそうかな。

実食!

とりあえず合わせてみるも…

蓋をパキャっと開けるとこんな感じでサンマのぶつ切りがごろっと入ってます。温めても美味いですが、面倒なのでそのままいただきます。

まずはサンマ一切れとキノコを一緒に口へ。あー、やっぱ美味いなあこれ。セブンすげえな。

では、モグモグしつつ、そのまま守破離を一口。おー…、んー?んー?悪くない。悪くないんだけど、なんだろう。どうもうすにごり特有の澱の風味がイマイチ合わないな。

ブルーチーズとの邂逅

腕組みをして、しばし考えます。

あ、そういえば冷蔵庫にゴルゴンゾーラチーズがあったな。チーズは濁りとも抜群の相性を見せるので、どうなるか分からないけど、ぶち込んでみよう。

そんなわけで、缶詰の中身を器に移し、ゴルゴンゾーラを少量乗せてレンチン。(アレな見た目だったので写真はなし)

再度実食

ふわっとゴルゴンゾーラの癖のある香り。アヒージョにチーズとか、聞いたことないけどこれは意外にいけるんじゃないか?

食べてみると、チーズの塩気とまろやかさが加わってかなりいい感じ!オリーブオイルのおかげで無理なく馴染みますね。

そして、守破離を含むと…

!!!

うまいー!これは大正解。一気に融合を果たしました。やや悪目立ちしていた澱の風味がチーズと完全に同調。その他の甘みや苦味の要素はサンマと複雑に絡み合って互いに高めあう感覚。

最高でした。

まとめ

特別な意味を持つ酒だったので、よいつまみと出会えて本当に良かったです。

この他にも白身のカルパッチョやレンコンソテーのゴルゴンゾーラあえなどを試しました。

いずれも充分及第点でしたが、やはりこのゴルゴンアヒージョが頭一つ抜けてましたね。

松本日出彦さんが今後新しい蔵に行くのか、新たに酒造を立ち上げるのか、はたまた酒造りをやめてしまうのか(それはないと思うけど…)、とにかくまたいつか、守破離のような素晴らしい酒が飲めることを信じて待ちたいと思います。

ひとまずは「OTSUKARESAMADESHITA!」

(今のうちにUltraも買っておこう…)