4月20日、鎌倉は銭洗弁財天近くのスペイン家庭料理店「CASA PEPA」にて、スペイン料理と日本酒とのペアリング会にペアリング担当として呼んでいただきました。

今回は事前にメニューだけを伺い、試食なし、想像だけでお酒をセレクトするという、ちょっとしたチャレンジングなセッティング。
とはいえ、料理の方向性や構成からイメージを膨らませ、まあまあうまくやれた気はします。

以下、当日のメニューとそれぞれに合わせたお酒のご紹介です。
◆ Tapas(小皿)
トルティージャのピンチョス × Cava(Dibon Cava Brut Selección)

まずはスパークリングで乾杯。軽い卵の甘みとじゃがいもの旨みに、すっきりとしたカヴァの泡がよく合います。ここは会の意向でのセレクトなので私は関与していません(笑)
生ハム盛合わせ × 辨天娘 純米吟醸 玉栄 H30BY


さて、ここからが私の出番。
塩気とうま味の強い生ハムに、うま味と乳酸が映える熟成酒を55度の飛び切り燗で。
はい完璧です。うまー。
実は日本酒ペアリング界隈では生ハムと熟成酒のお燗はもはや定番化してるんです。ぶっちゃけ以前検証してますしね。これに関してはほとんど苦労しないでチョイスできました。
ただ、クセがあるので日本酒慣れしてない方の反応が気になるところでしたが、単品では微妙でもペアリングすることで美味しいと感じてもらえたようで一安心。
◆ Sopa(スープ)
サルモレホ(冷製トマトスープ)× 生酛のどぶ 夏生


アンダルシア地方発祥の冷製トマトスープ。トマトの濃厚なテクスチャーとガーリックの効いた風味には、夏らしい清涼感と複雑な旨みを持つにごり酒をセレクト。トロリとしたどぶの口当たりが、サルモレホの粘度と同調。味わいとしてもドライなのでスープとよく合っていたと思います。
このお酒はあまり酸がないんですが、レモンを絞ってあげることでトマトの酸と結びついて、よりシンクロしました。
◆ Primero(前菜)
ミートボール ぺパ風 × 初雪盃 純米吟醸 無濾過生原酒 槽搾り 2017BY


さあ、問題はこの料理です。アーモンドソースがかかったミートボール。
全く食べたことがない料理だったので悩みましたが、レシピからアーモンドの香りと、やや油っぽさがあるのではと想定して、生熟成特有のナッツ香と、軽い甘みと厚みのあるこちらをチョイス。
実際に料理を食べてみると、アーモンドの香りはほんのり、意外にシンプルな味わいで塩気と肉の旨味にアーモンドの油分をまとわせてマイルドにしたような感じでしょうか。
そしてペアリングの予想も見事に当たり。若干酒のほうが強かったですが、香りの部分でリンクしてくれたのでそれほど気にならず、良い組み合わせが実現できました。
◆ Segundo(メイン)
シーフードパエリア × 不老泉 杣の天狗 純米吟醸 うすにごり 生原酒


魚介の旨みがギュッと詰まった米料理には、米のうま味を感じさせる一本を。今期の杣の天狗は例年より若干硬さがあって軽めなのですが、味の強すぎないパエリアに対しては逆にそれが奏功しました。
乳酸が同調した後に、じんわりとした旨みの広がりがパエリアの余韻に寄り添ってくれます。
イカ墨のパエリア × 北島 純米吟醸 辛口完全発酵

炭のような香ばしさとコクが立つイカ墨パエリアには、切れ味鋭く辛口に振り切った北島を。後味ですっと断ち切ってくれるような設計です。
北島は酸が弱いため、トマトの酸を感じるシーフードパエリアにはもうひとつでしたが、米のうま味を同調させる想定はしっかりハマりました。
ちなみに杣の天狗はどちらにも合いましたね。
◆ Postre(デザート)
バスク・チーズケーキ × 李白 純米仕込み 本みりん


ラストは遊び心で。バスクチーズケーキの焦げの香ばしさ、濃厚なチーズ感に、極甘口の“本みりん”を。ちょっとした驚きがあったようで、参加者にも好評でした。
単体で飲むと甘すぎる印象のあるみりんですが、スイーツと合わせることでバランスが取れます。逆にスイーツよりも甘味が弱いお酒を合わせてしまうとお酒の甘味が消されてしまうので難しいのです。
◆ まとめ
試食ナシの一発勝負という緊張感はありましたが、全体としてはイメージ通りのペアリングに仕上がりました。
これまで、洋食、カレー、中華、エスニック、スイーツなど幅広く日本酒ペアリングを試してきましたが、スペイン料理もまったく問題なし。味わいの濃淡がはっきりした構成が多いため、むしろやりやすかったですね。
やはり日本酒の柔軟さは計り知れません。五味の構成、温度、酒質、熟成…それらを見極めて合わせれば、まだまだ未知の可能性が広がっています。
いずれにしろ、学びのある会でした。めちゃくちゃ楽しかったです!