名店レポート

和酒バルKIRAZで有難豚のグリルに合わせた日本酒はまさにソースだった

arigaton

先日、目黒の和酒バルKIRAZさんにお邪魔したんですが、そこでのペアリングレポートを。

和酒バルKIRAZ

まずはお店の紹介から。徳島にある気鋭の酒蔵、三芳菊酒造の娘さんがオーナーとして東京・目黒に開いたバルで、スペイン料理と日本酒とのペアリングが売りです。

住所:東京都目黒区三田2-9-5 1F
TEL:050-5590-7677
営業時間:【ランチ】 [土・日・祝] 12:00~15:30/【 ディナー】[火~金]18:00~24:00 [土]17:00~24:00
[日・祝]17:00~22:00 ※月曜日が祝日の場合、日曜は24:00まで
定休日:月曜日、その他不定休(要電話確認)
URL:http://www.kirazu.net/

この日はコースで料理を頼み、それに合う日本酒をお任せで見繕ってもらったんですが、「新玉ねぎのムース 帆立のビナグレタ添え」に赤色酵母の「流輝 桃色」を合わせてヨーグルトっぽい味を創出するなど、なかなか面白いペアリングがいくつかありました。

なかでも、最も好相性だったのが、コースの最後に登場した「有難豚のグリル」と日本酒の取り合わせ。

有難豚とは

「ありがとん」と読むそうです。ちょっと調べたらなかなか興味深いエピソードが。

先の東日本大震災による津波で、宮城にあった高橋希望さんの養豚場が全壊。二千頭ほどいた豚たちも流されて散り散りになり、ほとんどが命を落としました。しかし、そんな中でも近隣の方々が見つけた豚を安全な場所に誘導したり保護してくれていたそうで、数頭は生き延びることができたそうです。

で、その子孫たちが「有難豚」というわけ。

狭い豚舎に押し込められたストレスフルな環境ではなく、放牧式で豚らしい幸せな生活を送らせてあげることが美味しさにも繋がる、という理念のもと養豚を続けてらっしゃるそうです。

優しくしといて結局最後は食うんかい!ってそりゃそうですよね。でも、確かに命をいただくんだから、せめて生きている間は幸せに暮らしてほしいとは思います。まあ、いろいろと難しいですよね。下記の本も話題になりましたが、食に関わる以上は無視できない問題です。

少なくとも自分に畜産はできないなあ。確実にメンタルが崩壊する。

料理の分析

さて、本題に戻ります。この豚さん、バックグラウンドはとりあえず置いといて単純に美味いです。素材としてのポテンシャルがすごい。なんというか、旨みが凝縮されていて脂にも豚らしい甘みを感じられます。肉質もきめ細やかで柔らかい。

うーむ、これは確かに今回のグリルのようなシンプルな調理のほうが肉の旨さをダイレクトに味わえていいかもしれない。

お店の方に調味料など何を使っているのか聞き忘れてしまったのですが、それほど特別なものは使っていなかったように思います。ハーブやスパイスが隠し風味程度には使われていたかもしれませんが、少なくともそれらが前面に出てくることはありませんでした。

有難豚グリル 五味チャート

一応、いつものように五味を分析します。だいたい塩3、甘1、酸0.5、旨4、苦0.5ってところですか。

甘味に関して、砂糖などの甘味料はほぼ使っていないと思うんですが、質のいい脂を甘いと感じてしまうんですな。なので感覚に従って1としました。

合わせる日本酒を考える

さあ、ここにどんな酒を合わせるか。無難なのは旨みの強いクラシックな燗酒ですね。また、豚の脂と甘みの強い酒も相性がいいので、香りが弱めでこってり甘い銘柄を合わせても面白いかもしれません。

しかし、今回は全てお店にお任せ。どんなお酒が出てくるか非常に楽しみです。

伊根満開

満を持して登場したのがこちら。京都の伊根満開。しかも燗で。ああ、そう来たか!

見るからに日本酒としてはヤバい色でしょ?実は古代米である赤米を使用しているのでこんな感じなんです。精米歩合は不明ですが、恐らくはあまり削ってない(70~80%くらい?)かと。

日本酒度は-18なのでかなり甘いです。そして乳酸も結構効いてるので、結果甘酸っぱくフルーティな印象に。香りは独特。本当に独特。なんとも表現しようがない糠っぽさというかチーズというか。この酒以外だと寺田本家の「香取 純米90」も似たような雰囲気の香りがあったかも。

で、お店の方にこの酒を選んだ理由を聞いたところ「バルサミコソースを想像して、そのソース代わりに甘酸っぱい酒を合わせました」とのこと。なるほど!今までこのサイトではあまりやってこなかった手法ですね。

燗にしたのも、料理との馴染をよくしてよりソースっぽさを出す意図があるんでしょう。

実食!

では、さっそく実食。

一口大に切った豚肉を頬張ると、一気にジューシーな旨みがあふれます。軽い塩気が輪郭を整えて、非常にバランスがいい。ていうかこれだけで充分美味いんだけど、ここに甘酸っぱい酒ってどうなっちゃうんだろう。

やや熱め、55~60℃くらいの燗を口の中に豚が少し残っている段階で流し込みます。なるほど、こうなるのか!確かにこれはソース的役割を果たしています。

時間軸としては、口の中で徐々に味わいの変化が起こるタイプではなく、もう豚も酒も全部の味が一緒になってどーんとやってくるイメージ。

チャートにすると分かりやすいんですが、ソースとして料理に足りない味を補う役割を担っているのが見て取れると思います。

ただ、一点だけ気になったことが。それは全体のボリュームのアンマッチ。いや、アンマッチというほどずれてはいなかったんですが、若干、ほんの少し、酒のほうの味が強い

ベストなのは、酒を嚥下した後に料理の風味が少し戻ってくる程度なんですが、この場合、それはありませんでした。

こういうときは、2つの方法があります。一つは割り水、もしくはロックで酒を薄める。もう一つは口内調味のバランスを変える、すなわち口に含む酒の量を減らすということですね。

今回は割り水をして薄めるとソース感が消えると思い後者を選択しましたが、ばっちりでした。

まとめ

とりあえず、KIRAZさんの料理は前評判通りどれも非常に美味しくて満足でした。日本酒とのペアリングという意味では、まだまだ引き出しがありそうなので、次に訪れる機会があればアラカルトで料理を頼んでいろいろと試してみたいなあ。

あとは口内調味のバランスの問題。個人的にガバガバ飲んじゃうクセがあるもので、多分他の人より一口の量が多いんです。ですから、そこは今後のペアリングの際は意識していかなきゃなと。そもそも、口内調味についてもう少し深く考察する必要性がありますね。そのうち記事にします。

ではまた!

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