老舗の居酒屋がひしめく日本酒の聖地大塚で、比較的若いながらも実力派のお店「地酒や もっと」に行ってきましたので、そのペアリングレポートを。
大塚Sake walkで少しだけお邪魔してずっと気になっていたんですが、ようやく訪問することができました。
JR大塚駅にほど近い路地にお店はあります。オープンは2013年なので6年ちょっとか。老舗にはあまりない自由度の高い料理が結構あるので、ひねくれたペアリングを求めている自分にとっては期待大。
酒のメニューを眺めると日置桜、辨天娘など山陰中心に西の酒が多くて、ほとんどが燗上がりする銘柄ばかり。熟成酒も多いのでテンションが上がります。
では早速一品頼んでみましょう。
鶏の白レバーパテ
まずは鶏の白レバー(withバゲットスライス)。食感はすごく滑らか、ほんのりとスパイスの香りも複雑に絡み合ってかなりレベル高い。
これはもう、濁りしかないでしょ。というわけで定番の花垣をチョイス。当然燗です。
花垣 にごり 純米65
程よい甘みと酸味でわずかなフルーティ感を残しつつ、しっかりとした旨みが包み込む。ビロードのようなテクスチャーゆえ白レバーパテと混然一体に。
いや、これは素晴らしい。一発目から完璧。
惜しむらくはパンが普通でちょっと面白味がなかったかなと。あくまでパンは脇役、パテの土台としての役割を求めた結果だとは思うけど、小麦の味わいが主張する焼きが強いタイプとか、オリーブオイルとかスパイスが隠し味程度にかかってるとか、そういうのがあっても面白いんじゃないかな、なんて。
仔羊と発酵白菜の水餃子
二品目はいかにも曲者っぽい「 仔羊と発酵白菜の水餃子」。最近ラム系はなんだかんだ言ってクセがなくて拍子抜けすることも多いんだけど、これは違いました。羊がめっちゃ主張してくる。でもすげえ美味い。
風味はクセが強いけど、味そのものは濃すぎることもなく案外さらっとしてるので、酒もそれに合わせてクセはあるが、あまり重くない酒ないかなーとメニューを探したらありました!
睡龍 生酛 涼
それがこちら。当サイトに頻出する「生酛のどぶ」を作る久保本家酒造の別シリーズ。がっつり熟成香があるのにアルコール度が14%とボディは軽いんです。そして日本刀のようなキレ。もともと夏向けとしてリリースしていたという経緯もあります。
で、仔羊の水餃子と合わせてみると…これは失敗。最初に羊のクセがわっと来て、そこに酒を含むと熟成香がぶわっ、そこで融合してくれたらよかったんだけど、後追いで羊が「俺も俺も!」と再度主張してくる。ちょっとケンカしちゃったなあ。
石鎚 純米吟醸 緑ラベル
そういうことなら、ちょっと趣向を変えて、あえて主張が弱いライトでシャープな酒と合わせたらどうか。ここは冷酒かな。
しかし、これもイマイチ。さっきよりはケンカしない分マシだが、ラムの暴れん坊っぷりを制御できない。
篠峯 愛山 純米無濾過生原酒
しつこくラムに挑戦。今度は無濾過生原酒でもう少しパンチがある酒ならどうか。うーん、あんまり変わらないか。悪くはないんだけど、ビビっとくるものはないよね。
ちなみに酒単体としては非常に美味しくいただきました。篠峯らしい骨格があって愛山にしてはドライ。とはいえ、やはり苺のようなキュートな甘さとジューシーさは愛山ならでは。
スパイスに漬け込んだ干し肉
とりあえずラムには見切りをつけ(食い尽くした)、目についた変わり種っぽいメニューを。大変申し訳ないんですが、ちゃんとしたメニュー名を失念&記録忘れ。豚バラ肉をスパイスとともに漬け込んで軽く干したものです。
これは素晴らしかった。干し肉と言ってもジャーキーのように固いものではなく、噛みしめるほどに脂が溶けてスパイシーな香味とともに口の中に広がっていく。
確実に熟成酒の燗と合うやつだ。
日置桜 生もと強力 27BY
あれ?こんなに軽い酒だっけ?もっとずっしり重い印象だったけど、高めの燗付け温度も手伝ってか案外すっきり飲める。とはいえ、熟成香はしっかりあるので、スパイスも軽々と受け止めてくれます。
恐らく店員さんの気遣いで、脂の多い干し肉に合わせて燗の温度高めにしてくれてますね。含んだ後の脂の溶け具合が絶妙だもの。
ちなみに、燗冷ましの睡龍でもかなり合いました。バラ肉に比べたらちょっと軽すぎるかなと思ったんですけど。ボディの太さが多少ちぐはぐでも、香りがぴったり同調すれば、高いレベルで成立してしまうことがよくわかりました。
まとめ
個人的にはスパイス系に注目しましたが、刺身などの魚介系をはじめとするスタンダードな居酒屋メニューもしっかり充実してます。今回は1時間程度の滞在で、店の魅力を堪能するには足りなかったので、また行かなきゃ。
しかし、返す返すもラムを攻略できなかったことが悔しい。
ラムって熟成酒と相性が良いと思っていたけど、これまで食ったのを思い起こすと必ずローズマリーとかクミンをふんだんに使っていたんですよね。でも今回の水餃子はそこまでスパイシーではなかったんです。つまり、繋ぎ役になっていた匂い消し系スパイスが弱くなるとペアリングの難易度が上がっちゃうのかもしれない。これはこれで一つ勉強になりました。
次回は自分でチョイスせずにお店のお任せでペアリングを試したいと思います。
それではまた!