このサイトでは、わりと独自の日本酒ペアリング理論を展開しているつもりですが、もちろん何もないところから自分の経験だけで確立したわけではなく、参考にさせていただいた文献はいろいろとあります。
というわけで、今回は日本酒に限らずフードペアリングを学びたい人が参考にできる本をいくつか紹介しようと思います。
フードペアリング全般
風味の事典
以下記事の香りと風味の説明でこちらの本の冒頭に記載されているフレーバーホイールを引用しています。
様々な食材の相性を著者独自の経験から論じていますが、目から鱗の連続で多くの発見・気づきを得られます。
結構いい値段のする本ですが、他では得られないユニークな知見は、プロの方であれば充分元が取れると思います。
ペアリングの技法 - フード&ドリンク
とにかく写真が美しくて食欲をそそられる本。
人気店のペアリングメニューが81品、全て簡単なレシピも掲載されているのは素晴らしいですね。料理の相手となるのはワインの他にも、日本酒やビール、カクテル、お茶など多岐に渡ります。
基礎理論に関しては本当に基礎の基礎の部分のみなので、この本独自の考え方や理論ってのは期待しないほうがいいかも。
料理王国 2017年2月号 人を呼ぶペアリング
こちらはパンペアリングやカクテル、ジュース、中国茶など多様なアプローチのフードペアリングを紹介しており、とても興味をそそられるものばかり。
まあ、実例として載っているものは創作系の料理が多いので、実際食べてみないことにはそれが合うのか合わないのかは分からないんですが、考え方は学ぶことができます。
それから、たったの見開き2ページなんですが「おいしいペアリングの基礎講座」は非常に理論的でわかりやすく参考になります。これだけのために買ってもいいかも?
酒とつまみの科学
日本酒だけでなく、あらゆる酒とつまみとの相性について包括的に紹介されています。日本酒を探求するだけでは得られない外からの視点で日本酒を見つめなおすことができるのでおすすめです。
ものによってはしっかり科学的な論拠に基づいて書かれているので、本サイトのように理系なアプローチをする場合に役に立ちます。
ワイン系
Winart 2014年4月号 マリアージュ手帖 合わせ方の基本20
ペアリングやマリアージュといえば、どうしてもワインを無視するわけにはいきません。食文化としては日本酒のずっと先を行ってますから。
同調・ギャップ、五味をどう扱うか、香りの合わせ方など、かなりわかりやすくまとまっており、ペアリング(マリアージュ)の基本的な考え方を学ぶことができます。
食材ではなくソース(調味料)を軸にペアリングを組み立てる手法がとられており非常に参考になります。
どの料理にどのワインを、という話ももちろん載っていますが、そのワインの味わいを日本酒に置き換えたらどんなものが合うだろうと想像することでペアリング力が上がること間違いなし。
Winart 2008年7月号 ワインと料理の方程式
日本酒ペアリングについて書かれたものの多くは酒ありきで、その酒に合う料理を探す手法をとりますが、それだとお店においては実用的ではありません。お店で提供する料理の品数と酒の数を比べれば理由は明白ですよね。数ある酒の一つ一つに対してそれぞれ合う料理を作るとなると、かなりのバリエーションが必要になるわけですから。
で、こちらは食材の特徴からワインを導き出すアプローチ。本サイトと同じ方向性ですね。
ただ、マリアージュを解説した特集部分のボリュームが少ないのがちょっと残念。
ワインの香り 日本のワインアロマホイール&アロマカードで分かる!
風味の辞典と同様にワインのアロマホイールを引用させてもらっています。
ワインは日本酒よりもはるかに多くの種類の香りを内包しているので、そのまま流用はできないんですが、香りの分類や近接したものを探る上では非常に役立ちます。
ワインに詳しい人にとっては、それほど目新しい内容は書かれていませんが、なんといっても実際に香りを体験できるアロマカードが付いているのが素晴らしいですね。
ワインスタイル 絶対にはずさない!! マリアージュの基本
かなりハードルを下げて、ワイン初心者にもなじみやすい内容になっています。理論的な部分はあまり詳しくないものの、具体的な料理とワインの実例が多く載っているので参考になります。
お遊びの企画ですが、駅弁とワインのペアリングもなかなか楽しい内容になっています。
日本酒系
最先端の日本酒ペアリング
GEM by motoの千葉麻里絵さんによる日本酒ペアリング本。メディアにも多く顔を出して日本酒の振興に努めてきた彼女が、満を持してお得意のペアリングというテーマで作ったものになります。
ここまで専門的に日本酒ペアリングをまとめたものは他にないので、日本酒を扱う飲食店の方は必携だと思います。
ちょろっと目次をみるだけでもこれですよ。
- 似た者同士 ― 料理と似た味や香りの酒を合わせる
- 対照的なもの同士― 料理と対比させて増幅させる
- 濃淡を合わせる―酒を時間軸でとらえる
- 味を重ねる ― 料理ありきで、ソースのように酒を重ねる
- 余白を埋める ― 料理を完成させず、酒と合わせて完成させる
- 陰影をつける ― 味に奥行きをもたせる
- 記憶にある味の再構築 ― 既存の料理を分解する
- 新たな味を生み出す ― 遊び心で味と香りを組み合わせる
- 余韻を長くする ― 味の印象を伸ばす
とりあえず、以下でレビューしていますのでぜひ参照してください。
日本酒のペアリングがよくわかる本
日本酒のペアリングをきっちり体系的に教えてくれる本はほとんどありませんので、この本はその意味でも貴重。
一般向けの平易な内容ではありますが、実例等で参考になる部分は多いです。料理を元に合う酒を導き出すのではなく、日本酒を4分類してそこから合う料理を考える方向性で書かれています。
それから、編集がきれいでわかりやすく、大変読みやすいのもポイント。
日本酒マリアージュ―お酒がもっと美味しくなる、日本酒×料理の組み合わせ術
理論的なことはあまり載っていませんが、実例として具体的な料理と日本酒の組み合わせが18種ほど。どちらかというと、レシピ本的な立ち位置になるのかな。
おしゃれな洋風の料理も多く掲載されており、インスピレーションを得ることができます。特にハーブ&スパイスのパートは面白いですね。
まとめ
どうしてもペアリング文化の先行者であるワインに関するものが多くなりますが、日本酒もこれに追いつけ追い越せでがんばらなきゃ、という気にさせられます。
本当は理屈より実践が大切なので、これらの本で紹介されているお店に日本酒を持ち込んでペアリングを探りたいところですが、なかなかそうもいかないのが歯がゆいところ。その意味ではレシピが載っているものは、自分である程度再現できるので重宝しますね。
それではまた!