日を追うごとに、「広く浅く」から「狭く深く」の方向にシフトしてきています。すなわち、1種類の酒をとことんまでいじり倒すのです。温度、熟成はもちろん、開栓からの時間でどう変わるか、ペアリングの相手によってどう印象が変わるのか、など。こんなことしてると1升あっても足りない。いわんや、飲み屋で半合飲んだところで、その酒の何が分かるというのか。
日本酒の沼は果てしなく深い…。
※特に美味かったものには★がついています。
龍力 熟成古酒 vintage1999
甘やかな熟成香。案外甘みは少ない。キレイな旨味と柔らかな酸。アフターで旨みの余韻が長く続く。
古酒にしてはクセがなく、ペアリングの際に使い勝手がいいので、ついついリピートしてしまう。自分もまさかアップルパイと古酒が合うとは思ってもみなかった。
十口万 24BY
6年熟成。熟成香はほとんどない。ふわっとした甘さと尖った酸がないあたりはいかにもロ万らしい。乳酸感が若干。旨味は品があっていい。美味いねえ。ほんと良い酒。
仙介 特別純米 白麹 無濾過生原酒
立ち香はややイソバレ(生老ね)、乳酸も感じる。発泡感とそこそこ強い甘味、白麹らしいクエン酸がキリっと。
これ、レモンかけて美味しい料理ならほとんど問題なく合うんじゃなかろうか。唐揚げとか、ステーキとか、はたまたポン酢代わりに水炊きとか。
まあ、俺はクロワッサンと合わせたけどな。
白影泉 山廃純米 28BY★
奥播磨で有名な蔵ですね。この蔵の山廃はとにかく美味い。
で、これは2年半ほどの熟成だが、まだちょい若いかも。
甘みは若干弱めでコハク酸が強い。冷やだと少しバラバラな印象もあるが燗で一気にまとまる。明らかに酸が旨みに変化するんだよね。 いやー、これは素晴らしく旨い。どこかフルーティさも感じるのは山田錦55%の精米歩合も関係しているのか。
新政 エクリュ 純米 29BY ★
製造年月日が2017年12月なので、ちょうど二年間自宅の押し入れで常温熟成。これが大正解。香りは穏やかで酸強めの生酛だし、なんだかんだ強い酒質なのでいけるだろうと踏んで寝かしてたんですが、よもやここまで上手くいくとは。
新酒だとドライでライト、柑橘系のフルーティさと酸が特徴なんだけど、熟成で明らかにまとまりと深みが増した。相変わらず軽めではあるんだけど、新酒に比べて芯の通った凝縮感があるので非常にジューシーでやばい。
日本酒文化祭の打ち上げで皆さんにふるまったんですが、大好評でした。これは数本買い足してまた押し入れで寝かさないと。飲めるのが最低でも二年後ってのがつらいが。
赤武 NEW BORN
言わずと知れた若手杜氏。年々上手くなっていくな。クセがなくジューシーで日本酒初心者もスムーズに飲める分かりやすい酒質。
癖の強い熟成酒も素晴らしいが、こういう分かりやすい酒にも別の良さがある。
白隠正宗 純米酒 生酛 誉富士
正直ね、今まで白隠正宗を特別に美味いと思ったことがなかったんですよ。静岡出身なのに。
良くも悪くも特徴がなくておとなしいんですよね。でも、ペアリングを追求していると、こういう、主張は弱いけど質のいい酒ってのが有用に感じるようになってくるんですよ。フレンチ的なガチンコ対決ってのじゃなくて、すっと寄り添うような、いかにも日本的な合わせ方ができるんだよね。最近はそっちの面白さにも気づいちゃって。
燗にしてゆるゆる飲むのに、ほんとちょうどいい。
なんでんの★
日本酒文化祭でいただいたんですが、これはヤバイ。
剣菱が地元向けにリリースしている商品なので、神戸以外ではほとんど飲むことができないと思われます。
剣菱のように熟成感はなく、その点では飲みやすい濃醇酒なんだけど、なんというかそこらの田舎酒とは違う気位の高さみたいなものを感じるんだよなあ。特A山田錦だからってそういう思い込みしてるだけなのかな。
とにかく、甘みと乳酸系の旨味のバランスが最高で美味すぎた。燗にできなかったことだけが悔やまれる。