中華

弥栄鶴に肉団子の甘酢あんを合わせる

肉団子

今回は大好きな日本酒、弥栄鶴に合う料理を探ってみました。

弥栄鶴 山廃純米70

弥栄鶴は京都府・竹野酒造の代表的銘柄。京都の酒造好適米である祝や祭り晴を70%の精米歩合で仕込んだクラシックな一本です。

蔵内で3年熟成してから出荷してるという情報もありますが、今も同じ年数かどうかは定かではありません。

どちらにしろ、いわゆる古酒っぽい焦げ感は皆無で、まろみがあり落ち着きのある味わい。

そしてやや甘味があって、山廃らしい乳酸由来の爽やかさとコクが同居しています。このタイプ好きだわ。

しかし日本酒で乳酸っぽいってどういうこと?と思われる方も多いでしょう。

これはですね、ヤクルトやピルクル、飲むヨーグルトなどの乳酸菌飲料の味を思い起こしてもらうと分かりやすいかもしれません。

あの手の飲み物は甘みの奥に丸い酸味がありますよね。レモンなどの尖った酸とは違った旨みを内包したような。あれです。

五味チャート

五味を分析すると甘3酸4旨4苦1くらいかな。

甘味の判定が微妙なところで、一口目は酸の対比効果でわりと甘さを感じるのですが、そのうち慣れてきて甘味が弱まる印象があります。

まあ、とりあえず3にしておきますわ。

合わせる料理を考える

酒の味わいのポイントとなるのはやはり酸なので、ここで同調させる方向を狙ってみます。

料理の候補

酸味のある料理の候補としては、トマト系ではロールキャベツ、チリコンカン、ラタトゥイユ、鶏のトマト煮など。

中華系ではチキン南蛮、肉団子の甘酢あん、酢豚など。

酸のタイプ

トマト系は旨みもあって非常に日本酒との相性は良いんですが、今回の酒のタイプが温めて美味しくなる温旨酸系なんですね。

対するトマトはクエン酸がメインの冷旨酸系。もちろん、温めておいしいトマト料理はたくさんありますが、それはグルタミン酸など旨みの成分によるところが大きいと考えられます。

いずれにしろ、酸のタイプの相性という意味では若干親和性が落ちるんですね。

じゃあ、中華ならどうか。

こっちは酢をメインに使います。成分的には酢酸です。

実は酢酸も冷旨酸系なので、乳酸との相性はトマトと同等。

うーむ、どうしたものかと悩んでいるところで、ピンと閃きます。

黒酢

そうだ、黒酢があった!

黒酢って普通の米酢に比べてマイルドですよね。これは酢酸の他にアミノ酸を多く含んでいるためなんです。

中でも温旨酸であるグルコン酸を多く含むので、乳酸との相性がぐっと近づくはず。理論上は。

というわけで、黒酢を使った肉団子の甘酢あんを合わせることにします。

(別に黒酢の酢豚でもいいんだけどね…)

肉団子の甘酢あん

一応中華料理ですが、家庭料理の定番でもあるのであまり意識することはないかもしれないですね。

五味チャート

数値化すると塩2甘3酸3旨3.5苦1で、弥栄鶴とかなりいい感じで重なります。

実食!

黒酢の芳醇な酸っぱい香りが漂います。

まずは肉団子をひとつ。口の中は甘酸っぱいあんの味から、肉団子の旨味が混ざって非常にいいバランス。あらためて、完成度の高い料理だな、これ。

肉団子は全て飲みこまずに若干残して、弥栄鶴を常温で一口。

あー、悪くないですね。予想通り酸が同調しますが、思いのほか甘味が薄れる印象。

そのせいもあって、酒の酸がやや強めに感じますね。ちょっとあんが甘かったかな。

まあでも、こんなもんでしょう。酒が想定よりも強かったので、含む量を少な目にすれば、ばっちり合います。

まとめ

今回もなかなかのペアリングができました。

これまでも料理から山廃が導き出されることはありましたが、逆に山廃ありきで、それに合う料理を探すパターンって実は初めてかも。

酸が強めの山廃だからって、単純に酸味のある料理を合わせればいいってわけじゃないんですね。そこは学ぶことができました。意外に難しい。

酸のない料理に山廃で酸を加える、ギャップの方向でのペアリングも、もう少し研究したいところです。

それではまた!