今回はたこ焼きです。
和食なのか何なのかよく分からないところでもありますが、日本酒と合わせるという発想はありそうでなかったんじゃないでしょうか。
たこ焼きのバリエーション
さて、たこ焼きと言えばソースとマヨネーズ。
しかし、日本酒との相性を考えるとそれはイマイチと言わざるを得ない(そこに寄せようと思えばできますが)。
というわけで、今回はたこ焼きの新しい楽しみ方の提案もかねて日本酒との相性を探っていきます。
なお、使ったのはそのへんのスーパーで売ってる冷凍たこ焼きです。
おろしぽん酢
いきなり大本命。ぶっちゃけてしまうと、この後いろいろ試すんですが、結局これが最強でした。
大根おろしにポン酢しょうゆ、小口ねぎを乗せるだけ。
実はこの食べ方初めてやったんですが、マジうまいです。びっくりしました。
合わせる日本酒
かなりあっさりなので、それなりに酸があって冷酒向けの酒がいいでしょう。
ポン酢が柑橘のフルーティさを持っているので、同じくフルーティな生酒などでも悪くないとは思います。
ただ、たこ焼きそのものがあまりに地味な味わいのため、よほどボディが軽くないと香りが邪魔をする気もします。
というわけで、ここは香り控えめで落ち着いた火入れにしてみます。
隆 純米吟醸 五百万石 2019BY
丹沢山で有名な神奈川の川西屋酒造が醸すもうひとつの看板銘柄。
丹沢山が常温~燗でポテンシャルを発揮する酒であるのに対し、こちらは基本吟醸造りで冷酒向け(とはいえ燗も美味いんですが)。
キリっとした酸と五百万石らしい軽めの味わいが、おろしぽん酢と最高の相性だろうと見込んでのチョイス。
ちなみにこれは2019BYで約1年の熟成。いわゆる熟酒の複雑さや重みはなく、まとまりや深みを表現するための寝かせです。
実食!
月並みですが、めちゃめちゃ合います。なにこれ。
まず、おろしポン酢とタコ焼きがこんなにも相性がいいことに驚き。
おろしポン酢でスッキリしたところに、タコとたこ焼き生地の柔らかい旨味が後追いで表出してきます。
そこに隆を流し込むと、酸がおろしポン酢の余韻を引き継いで、程よい旨みが同調。
その後、すっとキレて完璧な流れを作り出すのです。
代わりの酒
熟酒や薫酒では酒が勝ってしまうので、やはり爽酒が合わせやすいですね。
中でも、酸がキリっとしていて旨味が広がりすぎないタイプが良いかと。
ぱっと思いつくのでは綿屋、ゆきの美人、澤の花、澤屋まつもと、真澄あたりかな。
おろし+麵つゆ
ポン酢しょうゆの代わりに麺つゆを使うのもアリ。
天ぷらと同じ発想で、おろししょうがを加えるのも味が締まっていいですね。
合わせる日本酒
酸がなくなる分、ほっこり系の酒のほうが合わせやすくなります。
香りは抑えめで、それなりに旨みの乗ったタイプがいいかな。ただし、濃醇すぎると酒が勝ってしまうので注意。
そうなると、やはり生よりは火入れですね。
丹沢山 秀峰
おろしポン酢が隆だったので、同じ蔵の代表的銘柄で行ってみましょう。
純米スペックの秀峰と純米吟醸の麗峰が代表的なところですが、ここはより落ち着きのある秀峰で。
優しく飲み飽きない味わいで、合わせられる幅はかなり広いお酒です。
実食!
先ほどと同じく大根のスッキリした感じに、少し甘みと旨味のある天つゆ。これだけでもつまみになる。
天つゆの味わいが、単体では地味なたこ焼きを包み込んで一体感がでてきます。
粉もんと天つゆってチグハグになりそうなのに、意外とまとまるんだなあ。
ここにぬる燗にした秀峰を。一体感が殊更増して、これはもはや酒ありきで成り立つ料理と言えます。
あー、ほっとするわあ。
代わりの酒
ポイントは華やかではなく、さらに濃すぎないこと。甘みと酸はあまり気にしなくて大丈夫。
なかでもほっこり優しい味で燗にも向くものがベストかな。
天穏、大七、東北泉、一ノ蔵、喜久酔、白隠正宗、旭菊など、地味めな味わいのものを。スーパーで売ってるような本醸造~普通酒も悪くないよ!
柚子胡椒マヨ
今度は打って変わって柚子胡椒を。
柚子胡椒のみでもいいんですが、マヨネーズを少し混ぜると酸とコクが足されて日本酒との相性が良くなります。
比率は柚子胡椒6:マヨ4くらいかな。ま、ここはお好みで適当に。
合わせる日本酒
実は柚子胡椒ってすごいんですよ。
どんな日本酒でもかなり近い関係に持っていけるマジックがあるんです。なので、ぶっちゃけどんな酒でも合う、と言っても過言ではありません。
とはいえ、ベースであるたこ焼き生地の比率が増える分、どうしたって味はぼんやりしてくる。そこに柚子胡椒がどれだけ輪郭をつけてくれるかってところなんですよ。
であるならば、やはりここも派手な酒は避けたほうが精度は上がってくるでしょう。
まあ、柚子が足されることで、香りがある酒でもかなり合わせやすくはなるんですけどね。
丹沢山 吟醸造り純米
ここまで川西屋酒造店の酒で来たので、しつこくその流れで通しましょう。
秀峰と似通ったタイプではありますが、精米歩合が55%と高めな分、ややソリッドでフルーティな印象。
その名の通り、ちょっと吟醸系に寄ってます。
実食!
もうね、なんだろうね。
美味すぎて面白くない。
普通に合うんですよ。なんの苦労もなく。
ビリっと痺れる刺激は最後まで持続するんですが、これがどういうわけか日本酒をグイグイ引き寄せるんです。
加えてマヨネーズの柔らかさと酸でたこ焼き自体との親和性もいいし、あーつまんない。
代わりの酒
もう何でもいいです、マジで(放り投げ)。
剣菱(めっちゃ濃い)とも合わせてみたんですが、これはこれで合うし、先の隆や秀峰も何の問題もない。
華やかで派手めな生酒ともフルーティな部分でリンクしてくれるし、幅という意味では最強ですね。
食べるラー油
一時期一世を風靡した食べラー。
辛みはほとんどなく、ほぼごま油とローストニンニクの味わいで構成。
しかし、これがまたたこ焼きに合うんですよ。
なお、マヨネーズを少量足すと酸味が足されて立体感が出ます。マヨじゃなく黒酢をほんの少し足すのでもよさそう。
合わせる日本酒
これまでのものとは傾向が変わて、格段にパンチが強くなるので、酒もそれに合わせて強度を上げていく必要があります。
ここでも香り系は避けたほうが無難。地味でどっしりした火入れの純米酒がよさそうです。
温度は冷酒より断然お燗ですね。油が相手なので、高めの温度で融解させるのがセオリーです。
神亀 辛口純米
濃いめの純米で安定して美味い酒と言えば、まず挙がるのがこの神亀。
(少なくとも首都圏では)入手しやすいってのもポイント高いです。
実食!
見た目とは裏腹に、意外に優しい食べラー。
とはいえ、油は油なので絶対的に重たくはなります。
ニンニクなど香味野菜のローストがカリカリとした歯ごたえを伴って、ふわっとしたたこ焼きにアクセントを与えます。
すかさず神亀の燗を含むと、ボディの強さがちょうどいい感じで同調。お好みで少々塩を振ってもいいかもしれません。
なお、ここでの一番のポイントはロースト野菜の苦味。この苦味がより日本酒との親和性をアップさせます。
代わりの酒
剣菱、白隠正宗、大七、開春、玉櫻…ちょっと甘いのであれば雁木なんかもいいかも。
とりあえず燗映えする火入れ酒を選べば間違いなしです。ただし、ボディが強すぎると酒が勝ってしまうので、そこだけ注意。
まとめ
以上、4種類試してみましたが、いずれも甲乙つけがたいくらい美味しく、たこ焼きの新しい世界が拓けました。
あえて優勝を決めるなら、冒頭にも書いた通りおろしポン酢×隆かな。個人的な好みも多分に入り込んでますが。
ペアリングの幅が広く、深く考えなくてもどれとも合わせられるのは柚子胡椒+マヨですね。
柚子胡椒パワーすごいので、今度柚子胡椒に特化した記事でも書きますか。
あと、スイートチリソースも試したんですが、これもかなり美味かったです。
ただし、日本酒とのペアリング検証が不十分なため掲載は見送ってます。
機会があったら、是非探ってみてください。
それではまた!