コラム

味の強度とは何か

日本酒に限らず、フードペアリングを考える際の最重要事項である「味の強度」。しかし、どうにも漠然としていて人によってイメージやニュアンスが異なることも事実。ここでは、そんな味の強度について理解を深めるために詳しく解説していきます。

「強度」の定義

今回は味の強度について。これまでもペアリングと言ったら両者のボリュームを合わせろとか、強弱が同じじゃないと同調しないなどと繰り返し唱えてきました。

しかし、強度って一体何なんだ、説明してくれ、と言われても口ごもってしまうのが正直なところ。そこで、今回はじっくり考えてみようというわけです。

味の濃さとは違う

まず最初に言っておきたいのが、いわゆる味の濃さとはニュアンスが異なるということ。もちろん、味が濃いほど強度が上がるのは間違いないのですが、意味合いとしてはイコールではありません。

強度とは味の濃さも含めた、料理または酒の持つ力強さ、パワーのことを指すのです。

別の言葉に言い換えてみる

とりあえず、強度の代わりに思いつく単語をざっと列記してみましょう。

ボリューム、強弱、インテンシティ、パワー、ボディの太さ、濃度…

なんとなくイメージは伝わりますよね?

実はこのサイトではずっと「ボリューム」と言ってきました。ただ、ボリュームというのは量の多さを表す言葉なので、いつも(なんか違う…)と思いながら使い続けてきたんです。

ボリュームはボリュームで五味の解析のときなんかには使いやすいんですが、今回のテーマである強度の代わりになるかというと、ちょっと無理がある。

次にサッカー日本代表の元監督であったザッケローニさんによって有名になった「インテンシティ」ですが、これは「強烈・強さ・集中」なんて訳され方をします。単語の響きとしてはかっこいいんですが、ニュアンス的には「激しさ」のようなイメージがあるので、食べ物に使うのはやや違和感があります。

パワー」「ボディの太さ」も悪くないけど、どうも筋骨隆々のおっさんの姿が脳裏に浮かんでしまう。

最後に残った「濃度」ですが、最初に指摘した通りで、比較的近いニュアンスは持っているもののイコールではありません。また、どろどろとかサラサラといったテクスチャーの部分の意味合いも含んでいるのでそこで誤解を招く恐れは否めないんですよね。

んー、どれも決定打になりえない。その原因はある重要な要素を表現しきれていないからだと気づきました。それは「密度」です。

密度とは

密度とは何か。味の凝縮具合とでも言いましょうか。単純に塩気が強いとか甘味が強いということではありません。

例えば、水に塩を溶かしただけの塩水を飲んだとき、塩辛いとは感じてもボリュームがあるとは思いませんよね。

むしろ塩味以外を感じられないことで、薄っぺらく間の抜けた印象さえ持つかもしれません。

そこで、塩味、甘味、酸味、旨味、苦味など様々な味覚が塊のように混然一体となって舌と脳を刺激してきたらどうでしょう。そうです、このぎゅっと詰まった感じ、それこそが味の密度なのです。

その他の要素

で、その密度が凝集しているうえで、それぞれの味も濃ければそれで強度がある、ということになるかと言えば、まだちょっと足りません。

例えば、脂の分量だったり、とろみの濃さ、酒であればアルコール感の強さ(度数が高いほど強い印象になる)、先味である酸や刺激の強さ、そして香りに起因するクセの強さなど。

こういった要素が相互に絡み合って力強さに繋がっていく。それこそが味の強度なのです。

具体例

ここまではちょっと概念的すぎたので具体例を挙げてみましょう。

例えばカカオ70%のチョコレート。これは味の密度もガチガチに詰まってるし、油分もあって重い、強度で言ったら最上位に位置します。

次はスパイスが効いたカレー。テクスチャー的にもとろみがあって重く、味も濃い目。さらにスパイスによる刺激とアタックが強度を補強します。これもかなり強度が強い食べ物ですが、チョコと比べたら若干弱くなるイメージはあります。そこは味の密度、凝集具合の差ですね。

もう一つ、パクチーのサラダ。味そのものはあっさりしていますが、ご存知パクチーの強烈な香りとクセで強度はぐっと上がります。味が淡い分、最強クラスとまではいきませんが、普通のサラダに合わせるよりは強めの酒のほうが合わせやすくなります。

もうちょっとざっくりしたカテゴリーで言えば、洋食は強度が高いのに対し、和食は低い。ボルドー系の赤ワインは強度が高いが、新潟系の淡麗な日本酒は強度が低い。

まあこのへんは言わずもがなですけどね。

余談ながら、洋食とワインが合いやすいこと、逆に和食と日本酒が合いやすいことは、この強度が大きく関係しています。感覚的にも理解しやすいですよね。

強度の見極め方

では、ペアリングにおいて料理と酒、互いの強度を見極めるにはどうしたらいいか。正確に測る機械などないので結局は感覚に頼らざるを得ないのですが、ひとつの手段として味または香りの揺り戻しがどの程度あるかで判断することできます。

食べ物を食べ、口の中に味または香りが少し残っている状態で酒を含む。ここで口内が完全に酒の味に置き換わってしまったなら、それは酒の強度が強すぎたということになります。逆に、酒を含んでもなお食べ物の味や香りが支配的であった場合は、酒が弱いと言えます。

酒を含めば必ず一時的には酒の味と香りが支配的になります。しかし、バランスが取れている場合は終盤に食べ物の味または香りの揺り戻しが来ます。ここが見極めのポイントですね。揺り戻しが早すぎれば酒が弱い、揺り戻しが来なかったら酒が強いという感じで判断材料になると思います。

まとめ

ここまでいろいろな言い回しで強度を表現してきたつもりですが、ご理解いただけたでしょうか。

非常に概念的なことなので説明が難しいのですが、とにかく濃淡だけでなく、その対象が持つパワー、密度がどのくらいあるかを見極めること。それこそがペアリングにおいては重要であるということを分かっていただければ幸甚です。

それではまた!

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