コラム

情緒的なペアリング

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酒や料理の味わいは「先入観」や「経験」または「気分」「環境」といった曖昧な要素に大きく左右されます。今回はそんなお話を。

飲む人の状況で味は変わる

日本酒を飲んで「美味しい」と感じるのはどんな時ですか?

そんなの美味しい日本酒を飲んだ時に決まってるじゃないかって?はい、正しすぎるくらい正しい答えです。でも、仮に最高に美味しい日本酒であっても、その日の気分が最悪だったらどうでしょう。不味いとまではいかなくとも、以前飲んだ時とは大きく印象が変わるんじゃないでしょうか。

また、同じ酒を4合1万円の高級酒だと聞かされて飲んだ場合と、1000円の安酒ということで飲んだ場合でも味わいの感じ方に変化は現れるはずです。

つまり、私たちは酒そのものの持つ純粋な味わい以外に、外部からの情報や飲み手の状態・環境などにいくらでも引きずられてしまうということです。

外在的要素と内在的要素

こういった、酒のスペック、誰それによる評価、杜氏の想い、蔵の歴史などの付加的情報や、飲む環境、飲み手の状況などの外的なファクターを「外在的要素」と呼びます。それに対して、酒そのものが持つ科学的な成分値やそれに基づく客観的事実が「内在的要素」です。

基本的に、このサイトで提唱するペアリング理論はこの内在的な要素同士を論理立てて組み上げています。ただ、決して完璧な理論ではありません。

いくらこちらが思うベストなペアリングをお客様に提供したとしても、お客様自身の好みや体調、気分に合わなければどうにもなりませんから。

逆に、まあまあ、中程度の完成度のペアリングだったとしても、そこに心を動かすストーリーが秘められていたり、上手くお客様の気分が乗りさえすれば、結果的にそのペアリングのレベルがぐっと上がることもあります。

これが外在的要素によるペアリングの効果です。

日本人らしい感性

あなたが旅行に行って、その地ならではの食材で作った料理に合わせて、そこでしか飲めない地酒をふるまわれたら、多くの人は間違いなくノックアウトですよね。正直、細かいペアリング理論なんてどうでもよくなります。

地のものに地酒を合わせる。このペアリング手法については、科学的根拠がないとバッサリ斬り捨てた記事を書いていますが、これはあくまで内在的な視点から無意味と言っているにすぎません。

こんな記事を書いておきながらアレですが、こういった歴史・文化のバックグラウンドを知った上で導き出すペアリングは、むしろ風情があって粋なものであると言えます。 日本酒に関わる以上、情緒や趣を大切にする日本人らしい感性をないがしろにはできません。

付加情報は知っておいたほうがいい

ですから、地方や産地に加えて、杜氏が女性であるとか、日本で唯一の〇〇を使用しているとか、何とかの賞を取ったとか、杜氏の想いだとか、酒造りに秘められたドラマだとか、こういった付加的情報も知っておくに越したことはないんです。

もし、それらの情報と何らか関連のある食材や料理があったなら、それは積極的にペアリングに生かしていくべきだと思います。

ただ、そういった外在的要素だけに着目してしまうのは、これまた違うと思うのです。ペアリングにしろ日本酒自体の評価にしろ、純粋な内在的要素、つまり論理的な根拠が土台になければ本当の意味での向上や発展は望めませんから。

大事なのはバランスなんですよね。

まとめ

人は結局、自分の主観で物事を評価します。当然ですよね。だから、その観点からすれば究極的には内在的要素なんてものは無意味なんです。どれだけ客観的に素晴らしい成分やバランスを誇っていても、飲んだ人が不味いと言えばそれが全てなんですから。

もちろん、内在的要素を無視していいということではありません。ただ、最終的に人間を相手にする以上は、相手の情緒や情動、つまりは心の部分に踏み込んでいくことで、さらに一歩先に進めるんじゃないでしょうか。

それではまた!

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