名店レポート

Spice飯店の独創的メニューと燗酒のコンボがヤバい

spice飯店

スパイスと日本酒の可能性を探っている昨今、どうしてもスパイス系つまみを出すお店が気になってしまうんですが、そんな中、西荻窪にあるSpice飯店がすごいという噂をお聞きして伺って参りました。

土日は15時から営業。伺ったのは土曜の16時半。さすがにこの時間だし空いてるだろうと高をくくって行ったのですが、すでに予約で埋まっており、2時間のみなら、ということでギリギリ滑り込み。後から来た予約なしのお客さんは断られてました。危なかった!

独創的なメニュー

入店してまずはメニューを拝読。こ、これは…!

字面からは味の想像がつかない独創的な料理ばかりで度肝を抜かれます。

ペコリーノよごしって何…

そうそうビビってもいられません。とりあえずは、軽そうなものからオーダーすることに。

お酒は「料理に合うものを」ということで全てお任せです。

鯖生ハムと焼かぶのカルパッチョ~ニラ&レモングラス醤~

まずは「鯖生ハムと焼かぶのカルパッチョ~ニラ&レモングラス醤~」。のっけから長い名前ですが、内容を詳細に説明していると思えばむしろ親切なのかもしれません。

写真が下手で申し訳ないですが、これがまた美味いんだ。サバはスモークしてあって塩気もあり、そこそこ強度があるんですが、カブと一緒に食すことでバランスがとれています。

レモングラスの風味はあまり表だって出てこないものの、そこはかとなく爽やかな存在感を発揮しており、これがなかったら全然違うものになっていただろうなと。

これに合わせる酒は王祿の冷酒。ああ、そりゃもう間違いないですわ。

猪ラグーと湯葉、百合根のグラタン

お次は「猪ラグーと湯葉、百合根のグラタン」。

うわー、これも絶句するレベルで美味い。全体のバランスがいいので猪のクセはあまり感じないのですが、よくよく味わうと確かに存在感はある。もちろん、猪肉はスパイス等で臭みを消してはいるんだけど、それ以上に食材のバランスと味付けの妙で調和させているのが凄い。

百合根はジャガイモの代わり。湯葉はラザニア(シート状のパスタ)の代わりなんですが、これらの食材はよく言えば日本的で繊細。言うなればちょっと強度が弱い食材なんです。

しかし、猪というかなり癖の強い肉と合わせるにあたっては、このくらい控えめなほうが全体のバランスが取れるんですね。

もちろん、フレンチ的なメソッドで強いものに強いものを当てるハイコントラストなペアリングもアリです。しかし、この店ではあくまで東洋的な差し引きの感覚でうまくバランスをとっているのがよくわかります。

ここに合わせる酒は神奈川の雄「いづみ橋 黒とんぼ 生酛 2015BY」を燗で。

あー、もうやられました。めちゃめちゃ合う。

まず料理と酒の強度がぴったりなので、同調するのは間違いないんですが、それに加えて生酛ならではの乳酸感とチーズの風味が恐ろしいほどにマッチ。熟成香はそれほど感じず。どちらかといえば熟成によるまろやかさを生かしたペアリング。まあ、とにかく素晴らしい。

柿と青菜 腐乳炒め

お次は「柿と青菜 腐乳炒め」。もうね、意味の分からないワードが二つもあるんですよ。まずは「腐乳」。何となく聞いたことはありますが、実際何なのかはよく分かっていません。調べると、豆腐を発酵させた調味料のようですね。

そして「」。牡蠣じゃないですよ。柿です。白和えなんかは食ったことがありますが、炒め物は初めて。果たしてどんなお味なのか。

…!これも驚き。柿の甘さが違和感なく青菜炒めと融合。腐乳は塩麹とチーズを足したような風味で、これもまた美味い。

そしてこちらに合わせるは、「酉与衛門 純米 2015BY 」を燗で。亀の尾使用の4年熟成。

いいですねえ。さりげなくこういう熟成酒を出してくるあたり最高です。

重すぎず、ほどよい熟成感が料理とぴったり合います。

牡蠣麻婆豆腐

どんどんいきましょう。次は「牡蠣麻婆豆腐」。今度は柿じゃなくて牡蠣です(ややこしい)。

やや醤油が立ったタイプの麻婆。麻婆豆腐にはオイスターソースを使うこともあるので牡蠣が合わないわけもなく。

「辣」つまり唐辛子系の辛みは日本酒となかなか合わせづらいのですが、この店ではどうペアリングさせてくるのか。今回ここが非常に楽しみでもあったんです。

で、出てきたのが「梅津の生酛 濁り」。なるほど、そう来ましたか。

辣の刺激をまったりした濁り酒で包み込んで緩和させる方向性ですね。もちろん、旨みの部分はきっちり同調させてきます。

しかも割り水燗というあたり、わかってるわー。梅津の生酛ってめっちゃ濃くてパンチがある酒なんです。アルコール度数も21度と最強クラスだし。

それを上手いこと加水調整して麻婆に寄せていく。さすがです。

鯖ビンダルー

〆は「鯖ビンダルー」。豚肉をワインビネガーに漬けこんだカレーであるポークビンダルーの鯖バージョン。チクショー!いちいち面白いなあ。

シナモンとクローブ、カルダモンが強めの、いわゆるスパイスカレー。米も長粒米でバッチリ美味い。さあ、ここにどんな日本酒を合わせてくるのか。

ほどなくやってきたのは「秘傳 竹鶴」の燗。なるほど、まあ合うよね。これだけなら普通です。しかし、これで終わらないのがSpice飯店の凄いところ。なんと、出てきたのはホールのクローブをぶち込んでのクローブ燗!

完全に予想を超えてきましたね。すごいわ。で、これがカレーとアホかってほど合うんです。まあ、クローブはカレーにも入ってるので当然といえば当然なんですが、この発想は驚きました。

まとめ

いや、本当に楽しかった。ちょっと偉そうな言い方かもしれませんが、日本酒を一通り知った人ほど、新たな気付きを得られる店だと思います。おいてある日本酒もちょっとクセがある燗上がり系のゴツいのがほとんどですしね。

とはいえ、単純に料理が美味いので日本酒初心者にも問題なくお薦めできます。いや、むしろ日本酒慣れしてない人のほうが先入観なく楽しめるのかもしれないな。

まだまだ食べてみたいメニューがたくさんあるので、今度は予約して再訪したいですね。実に素晴らしかったです。