秋の風物詩、銀杏。
あの独特の香りは苦手な人もいると思いますが、酒飲みは大体好きですよね。
でも、そんなつまみの定番感のある銀杏に合う日本酒って意外に深掘りされてこなかったんじゃないかと。
ネットで検索してもほとんどでてこないし。
というわけで、今回はいたってスタンダードな塩煎りと、ちょっと変わり種のチョコがけで試してみます。
銀杏の調理
塩煎りは別に詳しい説明いらないですよね?
ペンチか何かでヒビを入れてぱちぱち音がするまで煎って、殻割って適当に塩を振るだけ。
問題はチョコがけのほうですね。
チョコはなるべくビターなものを用意しましょう。
それを湯煎で溶かします。
煎って殻を割った銀杏をそこにドボン。
最後、ポイントです。塩を少々振ってください。これがないと味が締まらないのです。
合う酒を考える
最大のポイントはやはりあの匂い、いや臭いと書くほうがいいのか。
でも銀杏を目の前にすると不思議なもので食欲をそそる香りに感じるんですよね。
そして、そんな香りを内包した日本酒も存在します。
それが熟成酒です。
いわゆる熟成香にはこの銀杏的ニュアンスが少し隠れていることがあります(全ての熟成酒に共通ではありませんが)。
それから甘みも必要。銀杏は噛んでいるとほんのり甘くなるので、そこに呼応するのだと思いますが、細かい理屈はわかりません。
ただ、どういうわけかドライなものより甘めのほうが合うのは確かです。
選んだ酒2種
今回は2つ選びました。
まずは蔵太鼓 純米旨口 熟成古酒 2014BY。
福島の喜多の華酒造場が醸す熟成酒です。ここは星自慢という銘柄も知られていますね。
7年ほど熟成していますが、その割にはきれいな感じ。
このお酒は何といっても含み香に銀杏に共通するニュアンスがほんのりあるのがポイント。
かといって別に臭いわけじゃないですからね!
あとは甘みですね。柔らかくて肩書通りの旨口です。ふんわり、ふくよかな感じも良いです。
もうひとつは神亀の甘口2016BY。
神亀はもともとそれなりに甘いお酒ですが、これはそこをもっと強調した造り。
最近流行の甘いけど酸でジューシーにするタイプではなく、あくまで柔和で広がりがある感じ。
こちらはそれなりに熟香もあるので、チョコがけに合いそうですね。
実食&分析
塩煎り
まずは塩煎りからいきましょう。
熱々の銀杏を一粒。まずは塩気を感じ、噛むほどに独特の香りと甘味が口の中に広がります。
ここにぬる燗の蔵太鼓を。ああ、間違いない。酒の甘味がすぐに残った銀杏の甘みをキャッチして同調。
その後、銀杏と共通する含み香を感じて、優しく退けていきます。
これ、酒の旨味が強すぎたり、味の要素が詰まったタイプだと上手くペアリングしなかったでしょうね。
このふんわりした酒だからこそ、ややぼんやりとした銀杏の味わいに対応できたのだと思います。
チョコがけ
次、問題作のチョコがけ。
これも塩がかかっているため、最初に飛び込んでくるのは塩味です。それが次にやってくるチョコと銀杏の甘みに輪郭を与えます。
この甘じょっぱい感じは柿の種チョコにも似ているかも。
さあ今度は神亀の甘口。こちらも燗です。
一口含むと、チョコの焦げっぽい風味と銀杏の臭いが混ざった複雑な香り、ここに熟成香がリンク。そしてチョコの甘みと神亀の強めの甘さもぴったり合います。
なかなかに面白いペアリングとなりました。
まとめ
実は、塩煎りのほうには神亀の甘口もかなり良い相性だったんです。(蔵太鼓×チョコはダメ)
ここから言えるのは、「銀杏には甘口の熟成酒」ってことですね。
フレッシュなお酒は香りの相性があまり良くありません。
熟成していなくともお燗向けの酒で、あまり濃すぎず薄すぎず、そこそこ甘い酒が手に入ったら、ぜひ銀杏をお試しあれ。
それではまた!