日本酒消費の現状
清酒の消費は年々減少傾向にあり、最盛期である1975年の1/3まで落ち込んでいるのが現状です。しかし、データを詳しく見ると日本酒全体の消費量は目減りしているものの、純米酒、吟醸酒など特定名称酒に限っては僅かながら増加の途を辿っていることがわかります。
これは本醸造や普通酒などスタンダードクラスの日本酒を日常的に消費していた世代が高齢化して消費量が減少し、代わりに若い世代が新たな価値観を持って日本酒に接するようになったことが大きく影響しています。
イメージの転換
極論すると不味い日本酒は駆逐され質の高い日本酒が受け入れられつつある証拠ともいえるでしょう。造り手側も世代交代が進み、様々な挑戦や新たな酒の開発を行っており、日本酒そのものの質の向上は明らかです。
今は旧来からの古臭い酒からスタイリッシュな酒へとイメージの転換が行われている最中といえます。無理やり音楽に例えるなら、旧来の酒が演歌だとすれば、昨今の酒はシティポップでしょうか。(演歌がダサいとか悪いとかいうわけではなく、あくまでイメージです!)
日本酒ブーム、そして終焉
こうした背景も後押しして、ここ数年で「日本酒がブーム」という言葉をあちこちで聞くようになりました。しかし実際それは清酒市場全体を大きく底上げするほどのものでもなく、そのブーム自体もすでに陰りを見せてきているように思えます。
この局面で求められるのは流行から定着への流れですが、このままではそこに至るとは考えづらい。昨今のブームで日本酒のイメージ転換をして間口を広げることには成功したかもしれないですが、そこから先の消費へ繋がっていないんですね。
日本酒の厄介な側面
日本酒の世界は独特かつ複雑で非常に奥が深いものです。そこが大きな魅力でもありますが、逆にビギナーを遠ざける要因にもなっています。
自分で酒を選んで購入またはオーダーするには、それなりの知識と経験が必要になってきます。日本酒は、その種類の多さに加えて、同じ酒であっても温度帯や開栓からの時間、熟成などで大きく味が変わるといった、豊かな多様性を持っています。日本酒の世界は、ここがある程度理解できてようやく楽しむことができるようになるという、厄介な側面を持っているのです。
消費が伸びない理由
それゆえ、流行に乗って日本酒に触れた人たちの大半はどう飲んだらよいのかがわからず、徐々に興味を失っていきます。
もちろん中には深掘りしようと頑張る人もいます。しかし、一般的な飲食店では、置かれている種類も限られているし、多様な飲み方をする余地もありません。そこまでするには個人で酒を購入して家で地道に経験を重ね、webや書籍から知識を得ていくしかありません。
果たして、一般的なユーザーの中でたかが嗜好品にそこまでの情熱を持つ人間がどれだけいるでしょう。結局、一時興味を持ったとしても、多くはこうしたハードルに阻まれ脱落していくのです。日本酒ブームにも関わらず消費が伸び悩んでいるのはこうした原因もあるように感じています。
自分ができること
じゃあどうしたらいいのか?これはもう、地道に啓蒙していくしかないですよね。
ブログやSNSで日本酒の知識や素晴らしさを発信するのもいいでしょう。友人と飲みに行って日本酒を薦めるのもアリです。
ただ、個人が草の根でできることは限られています。影響力の大きさを考えたら、やはりここは飲食店さんに頑張ってほしいんですよ。例えば、お酒の飲める飲食店でビールを置いてない店はないですよね?日本酒もそのくらいになれば、価値観も立場もだいぶ変わってくるんじゃないでしょうか。
すでに日本酒の基礎知識を教えるサイトは数多くあります。今さら自分がそこに参入する意味もないでしょう。
それよりも 自分は、日本酒を扱っていないお店では日本酒をメニューに加えたくなるような、すでに扱っている店ではより自分の店に合ったクオリティの高いチョイスができるような記事を発信していきたいと考えています。
それではまた!