ここのところ中華づいてるんですが、今回は中華なんだか和食なんだか微妙な白身魚の甘酢あんかけをピックアップ。
醋溜魚(ツゥリュウユイ)
冒頭でも書きましたが、それほど頻繁に中華料理屋で見かけることもなく、どちらかというと弁当屋とか惣菜屋さんなんかで目にする印象がありますね。
でもこの料理、れっきとした中華です。中国では醋溜魚(ツゥリュウユイ)というそうです。
レシピ
白身魚と言ってもいろいろですが、とりあえず今回は入手しやすい鱈を使用しました。
こいつに片栗粉をつけて揚げたものに細切り野菜のあんかけをトッピングするわけです。
使う野菜はタマネギ、ピーマン、ニンジンの3種類で充分。
これらを細切りにして火を通し、砂糖、酢、醤油、ケチャップ、鶏ガラスープの素で味付けします。
詳しい作り方を知りたい方は、ググっていただければいくらでも出てきますので。
味わい
味のポイントは甘酸っぱいあんかけですね。
淡白な白身に野菜の旨味がほんのり移ったあんかけが絶妙にマッチ。
五味チャートにすると、塩1.5甘2.5酸3旨3苦1くらい。
鶏ガラおよび油の旨味を甘酸っぱさで彩りつつ、軽い塩味と苦味(ピーマン由来)が輪郭を作るイメージですね。
合わせる日本酒を考える
料理を食った瞬間に脳内の誰かが「酸がそれなりにあるフルーティな今どきの酒が合うんじゃね?」とつぶやきました。
完全に理屈を超えたところでの感覚。
最近いかんなと思うんですが、どうも感覚的にペアリングを考えるようになってきてしまって。
それでは自分以外の他者にノウハウを伝えることができず、このサイトの存在意義に関わります。
なので、ここから後付けで無理やりにでも理論化していくことにしましょう。
方向性
まず、狙う方向性は無難に「同調」でいいでしょう。
甘酸っぱい料理には甘酸っぱい酒ということで簡単に合わせられます。
酢酸とフルーティさ
さらに、この料理にフルーティさが加わったらどうでしょう。
例えばレモンを一搾り。もしくは酢豚のようにパイナップルを添えてみるとか。
うん、いいじゃないですか。間違いなく合います。
これは酢酸の爽やかさに起因するものですね。
酢酸はいわゆる冷旨酸系の酸味なので、同じく冷やして美味しいフルーツ系の風味とは相性がいいんです。
そんなわけで案外さくっと裏付けもとれたので、ここはフルーティな日本酒を合わせることにします。
赤武 純米吟醸 NEW BORN 生酒
正直、フルーティな日本酒なら深く考えることもなくだいたい合うと思いますが今回は年々評価を高めている赤武を選びました。
これはもう単純に最近飲んだフルーティ系の中でも群を抜いて質が高かったというシンプルな理由です。
若手杜氏の挑戦
赤武は若干20代の杜氏が作る気鋭の銘柄。
蔵は岩手の大槌町にありました。この地名に聞き覚えのある人は多いでしょう。
そう、震災による津波で大打撃を受けた町です。
赤武酒造も残念ながら津波と火災で全壊、苦労の末、盛岡市内に移転してなんとか酒造りを続けることができたそうです。
そんな中、2014年に古舘龍之介氏が若干22歳の若さで杜氏に就任し、新たな酒造りを任されます。
そして生まれたのがこの「赤武」というわけ。
味わい
五味チャートは甘3酸2旨2.5苦0でごくごく平均的なんですが、逆にいうと至極真っ当にバランスがとれていて美味い。
つまり無理に尖った特徴を持たせる必要がないんですね。
立ち香はフルーティでありつつも過剰さはなく、新酒らしいフレッシュさと幅のある旨味を備えた佳酒です。
料理と合わせるとこうなりました。
甘味と酸味のバランスは逆になってますが強度的にも変に突出したところがない。
これはキレイに同調すると思われます。
実食!
カリっと揚げたばかりの白身魚にあんかけをとろりとかける。
ジュワジュワと美味そうな音を立てて衣にあんが染みていく。
あんからはケチャップと酢の酸味が立ち昇り食欲を刺激します。
一口ほおばると、まずあんの甘味と酸味を感じ、中盤から野菜と白身の旨味が一体となり幸せに包まれる。
口内に酸味と旨味が残っている段階で赤武を含むと、一度引いた甘味が再び蘇り、酸の部分で見事に同調。
次にスムーズな旨味にバトンをつなぎ、最後はごく軽い苦味を感じながらキレていきました。
まとめ
五味チャートにもあったように若干酒の酸の方が弱めだったんですが、料理の酸が弱まったところで酒が入ってくるのでちょうどよかったですね。
また、目立たない部分ですが、ピーマンの苦みと新酒の軽い苦味がリンクするので、そこも同調性を増すのに一役買ってくれました。
意外にここはポイント高いかも。
というわけで、今回もナイスなペアリングを実践できました。
料理自体は非常に簡単なのでご家庭でも試せます。なんといっても揚げたての香ばしさは最高ですよ。
それではまた!