イタリアンの定番サラダ、カプレーゼ。レシピもシンプルだし、女性にも大人気ですよね。そして、実は日本酒にもかなり合わせやすいのです。
カプレーゼ
「カプレーゼ」の意味
正しい呼称は「インサラータ・カプレーゼ」で、直訳すると「カプリ島のサラダ」という意味だそうです。「カプレーゼ」だけだと「カプリ島の」ということになりますが、そういうことを気にしだすと精神が病むのでスルーします。
しかしあれだ、カプリ島、いいところですよね。行ったことないけど。青の洞窟が有名な観光地で、レモンが名産だそうです。カプレーゼには入りませんけど。
レシピとアレンジ
レシピとしてはかなり簡単。スライスしたトマトにモッツァレラチーズとバジルをあしらって、オリーブオイルと塩コショウで整えるだけ。
シンプルな分、素材の味が前面に出てきますので、新鮮で良いトマトを使いたいところ。
応用としてバルサミコ酢を使ったり、生ハムを添えたりすることも。バジルの代わりにオレガノを使うレシピもあるようですが、オレガノだとちょっと香りが物足りないかな。
和風アレンジもしやすく、モッツァレラの代わりに豆腐を使ったり、バジルの代わりに青じそを使ったりも。ただ、豆腐と青じそとトマトじゃもはやカプレーゼとは言えないと思いますけどね。
五味の分析
いつものように合わせるべき日本酒を導き出すために五味の分析をしていきましょう。
バランスとしては塩気弱め。そのままだとトマトの酸が際立つところをオリーブオイルとモッツァレラの脂肪分でマイルドに抑えています。そしてトマトとモッツァレラの旨味。最後にごくわずかながらバジルの苦味も。
数値化すると塩1.5、甘1、酸3.5、旨3、苦0.5くらいかな。
香りの分析
なんといってもポイントはバジルの香りですよね。これをマスキングすることは不可能なので生かす方向で考えるしかありません。バジルの香りはちょっと独特なのですが、生老ねした酒に見られる「イソバレルアルデヒド」や「アセトアルデヒド」由来の青臭いような香りが似てるんですよ。私はよく「草っぽい」と表現していますが、これ人によってはオフフレーバーと感じる場合もあるんですよね。
オフフレーバーとは
ここで簡単にオフフレーバーについて解説します。
オフフレーバーってのは、分かりやすく言えば品質劣化などによる異臭・悪臭のことです。日本酒の場合は、老ね香(ひねか)と言われることが多いですが、今回のように生酒を放置したときに現れやすい草いきれのようなムレ香や、日光に当てることで現れる獣のような臭いなど様々です。
問題は、これらが微量でも入っていたらNGかと言えばそうではないことなんですね。もちろん、ひどいものは論外ですが、微量であれば人によっては好ましい香りと認識されることもあるわけです。
変な話ですが、一般的には悪臭とされるものを好んで嗅ぐ匂いフェチっているじゃないですか。あれです。あと、慣れもありますしね。
合わせるべき日本酒
閑話休題。次はカプレーゼに合わせる日本酒について考えていきます。
香り
先ほど書いたように、まずは香りに着目。バジルの香りに同調させる草感を確実に求めるならやはり生熟成の酒です。
自家熟成、もしくは開栓して時間が経ってしまった生酒でもいいんですが、やはり失敗が多くなるので、ここは蔵または酒屋でしっかり管理された生熟成の酒を狙います。
味わい
味わいとしては、旨味と酸味が突出しているカプレーゼに対して、ギャップとしての甘味を補完する方向がひとつ。
逆に甘味を完全に抑えて酸と旨味のボリュームが同程度のもので同調を図るというのもアリ。
今回に関しては、カプレーゼの旨みと酸だけでは少々立体感に乏しくなるので、やはり甘みを補完しましょう。数値化したときにカプレーゼの最高値である3.5を超えない程度のボリュームのもので。
初雪盃 純米吟醸 無濾過生原酒 槽搾り(3年熟成)
これらの条件から選んだのが「初雪盃 純米吟醸 無濾過生原酒」です。
とりあえずスペックを。
- 使用米:山田錦20%、松山三井80%
- 精米歩合:50%
- 日本酒度:+0.5
関東ではめったにお目にかかれない愛媛の銘柄です。私は大塚の地酒屋こだまさんでゲットしました。
精米歩合50%なので大吟醸を名乗っても良いクラスですが、あえて純米吟醸としているのは、やはり香りと味わいに複雑さがあるためでしょう。大吟醸には華美な香りとさらりとした味わいのイメージがついて回りますから、そうじゃないことをアピールしたかったんだと思います。
で、蔵出しは今年の一月なんですが、ラベルの裏を見ると2015BYと控えめに記載が。つまりは3年の生熟成…ちょっと!これめちゃめちゃ大事な情報だよ!もっと表にもどーんと書きましょうよ!
予想チャート
立ち香は3年熟成というほどまではクセがなく、どちらかといえば含み香でハーブ感が出てきます。甘みもそこそこあり、酸がジューシー。旨みはほどほどで濃醇というほどボディは太くない。というかやや軽い印象。
いつものように数値化すると、甘3、酸3、旨2.5、苦0.1くらいかな。予想チャートを見ても、これはちょうどカプレーゼに合いそう。
実食!
まずはカプレーゼを。トマトとモッツァレラを同時に頬張ります。バジルの独特な爽やかさに加えて、トマトとチーズの旨みが相乗効果を発揮してハーモニーを奏でます。
そこにすかさず初雪盃を。生熟成の独特な風味が違和感なくバジルの香りと融合。そして、カプレーゼにはない甘みが脳を刺激。あー、カプレーゼにはない味わいを上手く補完できてる。
酸のボリュームはほとんど同じなので気づかないうちに旨みに移行、一度下火になったカプレーゼの旨みから、今度は少しジャンルの違う日本酒の旨みが寄せては返す波のようにやってきます。旨いわあ。
まとめ
というわけで、今回も大成功。まあ、チーズと日本酒が鉄板の相性なので、味わいを合わせるのはチョロかったですが、ポイントはバジルに対してオフフレーバーであるところの生老ね香を生かす点ですね。
ちなみに、この初雪盃ですが、生酒ながら燗もかなり美味しいです。飲む機会があればぜひお試しください。
それではまた!