代々木公園近くの「酒坊主」に行ってきました。
日本酒の本や雑誌などで頻繁に取り上げられるのでご存知の方も多いと思います。以前より興味があったのですが、ようやくタイミングが合って訪れることができました。
マニアックなラインナップ
入店してまず目を引いたのが置いてある酒の銘柄。綿屋、王祿、隆、梅津の生酛、奥鹿、竹鶴、日置桜、睡龍、酉与衛門、いづみ橋、悦凱陣など。マニア受けする銘柄ばっかりで、特に燗酒好きは泣いて喜ぶラインナップ。
もともとスパイス使いが上手く無国籍な創作料理が売りと聞いていたのでさもありなん、ではありますが。
まずは冷酒から
酒のメニューはなく店員さんと相談しながら決めていくスタイル。
まずは王祿の蔵の渓 ひやおろしを冷酒で。ジューシーで凝縮感があって非常に好み。3年熟成とはとても思えない。
料理の前にもう一杯、悦凱陣 純米吟醸。これも期待通り。
仔羊のぬた
さあ、いよいよ料理をオーダー。一発目は仔羊のぬたを。生の春菊の上に乗った茹でラム肉に酢味噌がかかったもの。春菊の効果もあってラムのクセはまったく感じません。逆に物足りないと思ってしまうほど。
酒は久保本家の睡龍・おこぜの13年熟成を燗で。がっつり熟成感で安定の旨さ。ただ、意外にボディは重たすぎずぬたとよく合います。
燗酒をもう一本。日置桜の80%雄町。完全発酵系の雄ですな。甘みは当然のごとくドライ、思いのほか酸が弱めで旨みがゴツい。
ポークビンダルー
次の料理はポークビンダルー。酒とのペアリング含めて本日のハイライトでしたね。クッソ美味い。
ポークビンダルー自体、そんなに食べたことがないので正解がわかりませんが、 基本的にはワインビネガー(または酢)とニンニク、スパイスに漬け込んだ豚肉を煮こむ料理です。
で、ここのは酸味が控えめで、スパイスが強烈に刺激的(辛くはない)。ほんの少量のパクチーと一緒に食べると香りに複雑な深みが加わります。なるほど、パクチーはスパイスと合わせるとこうなるのか。勉強になるな。
ここで、これに合う酒をとお任せで選んでもらった酒がこちら。綿屋の17年生熟成。しかも燗。
そうきたか!もっとどっしりした火入れの熟成がくるかと思ったけど、まさか生熟の燗とは。最高。
で、この変態酒がポークビンダルーとめちゃめちゃ合うんだ。スパイス+パクチーに加えて、生熟ならではの香りが混然一体となって鼻から抜けます。
スパイス・ハーブは単体よりも組み合わせで相乗効果を発揮するということが身をもって分かりました。そして、やはりパクチーと生熟は相性がいい。
仔羊豆腐
次は、ちょっと軽めの料理を、ということで仔羊豆腐。いわゆる肉豆腐の肉をラムに変えたものです。味わいはあっさりしていて優しい。しかし、ラムの風味とパクチーが良いアクセントになって、一捻りある料理になっています。うーむ、やるなあ。
酒はいづみ橋の黒とんぼ生酛を燗で。酒のほうがやや強いかなとも思いましたが、これはこれで悪くないですね。
チーズ銀杏揚げ
最後、チーズ銀杏揚げ。チーズの上にわずかに散らしたコリアンダーシードが全体を調和させる役割を担っています。もともとコリアンダーシードは万能だけど、銀杏と合わせるという発想はなかったな。素晴らしい。
最後の酒は再び綿屋。今度は冷酒で。アルコール度数が17度と結構強めなので、ボディもそこそこしっかり。宮城酒にしては濃い目の味わいながら、ひやおろしならではのまろやかさも。いい酒だなー。
まとめ
噂に違わぬ名店でした。料理の美味しさは言うまでもなく、独創性やペアリングの面白さも際立っています。
何より日本酒の品ぞろえが硬派で素敵。
途中で酒屋さんが配達に来たんですが、店主さんが即開栓して味をチェック、常温保存と冷蔵保存にテキパキと振り分けていました。ここからわかるのは、少なくとも開栓直後が最高とか、何でもかんでも冷蔵保存しなきゃいけないといった固定観念は持っていないということ。まあ、そういう酒が少ないというのもあるんでしょうけど。
いずれにしろ、酒の管理が適切であることは飲めば分かります。そして、こういったことから日本酒への愛情がびしびし伝わってくるんですよね。そこが最高。
欲を言うなら店主さんとお話してみたかったですが、今回は座席位置などの関係からも話しかけることができず残念。
メニューも頻繁に更新されてそうなので、そのうち再訪したいと思います。