みんな大好きローストビーフ。近年はローストビーフ丼なんかもよく見かけるようになりました。
軽めの赤ワインと合わせるのが定石ですが、もちろん日本酒もいけます。
ローストビーフとは
調理法としては単純で、牛肉(主に脂肪の少ないモモなど)のブロックを蒸し焼きにしてスライスしたものに、グレービーソースなどをかけたシンプルな料理。
ただ、実際調理してみるとこれが意外と難しい。
ブロックの形が整ってないと火の通りにムラがでますし、肉汁を上手く閉じ込めるにもそれなりのコツが要ります。
まあ、そのあたりは各自ググっていただくとして、さっさと五味の分析にいきましょう。
五味の分析
ソースの作り方やつける量でも変わってくるのですが、大体平均的なところでは塩2甘1酸0.5旨3.5苦0くらいでしょうか。
思ったより地味なチャートだな。
牛肉ということで、なんとなくゴツっとした強い味のイメージがありますが、冷静に考えてみると味付け自体は非常にシンプルで、肉そのものを味わう料理なので案外こんなもんなんですね。
合わせる日本酒を考える
料理自体はあっさりしているので、同じく濃すぎず、それほど主張しない酒が合わせやすいところでしょう。
生酒でも合わせられなくはないですが、ロースト風味に対しては、生独特の草っぽいフレーバー(イソバレルアルデヒド由来)の扱いがやや難しい気がしますので、無難に火入れ推奨。
逆にロースト風味と相性が良いのは、ナッツやチョコのフレーバー。すなわち古酒になります。
ただ、今回に関しては古酒の出番はありません。実はすでに合わせてみたい酒が決まってるんですよ。
天遊琳 手造り純米酒 伊勢錦
それがこちら。三重の天遊琳(てんゆうりん)です。
伊勢錦という三重独自の酒米で仕込まれています。
立ち香はほのかなアルコール感、落ち着いた感じ。
甘味はそこそこで、含み香と酸からベリーのニュアンスを感じとれます。
これを肉料理とペアリングさせたらフレンチでたまに見かけるような、フルーツソースと肉の組み合わせが再現できるんじゃないかと思いまして。
なお、旨みも主張しすぎず、やや軽めなのでちょうどローストビーフと合いそう。
五味チャート
五味の数値は甘1.5酸3旨2.5苦0くらい。ローストビーフと合わせるとこんな感じ。
正直、チャートだけだとあまりピンときませんね。
まあ、旨味と酸味で二つのピークを作っているので、方向性ははっきりしていますし、どこかが突出してもいないので、悪くはないはず。
ちなみに、酒の酸の値が目立つので酸っぱい酒なの?と思われそうですが、全然そんなことはありません。
全体の印象としては、あくまで軽めの落ち着いた純米酒です。
実食!
ともかく食べてみましょう。
ローストされた肉の香ばしさがふんわりと漂う。脂は少ないが引き締まった肉の旨味が噛むほどに広がる。
ここで天遊琳を一口。あ、これは面白い。
同調するのではなく、肉にはない柔らかい酸が酒によって補完されることで、新たなバランスが生まれた。
ベリーのほのかなニュアンスも肉の旨味に彩りを添えて、少しだけ華やかさが加わる。発想としては、まさにフレンチのソースであるクーリの代わりだ。
天遊琳は、常温もしくはぬる燗だと旨みは増すが、全体的にマイルドになってしまう。
それはそれで美味しいんですが、今回のペアリングを楽しむなら、きりっと冷やすか、逆に52℃くらいの高めの燗でシャープさを出したほうがベター。
なお、ホースラディッシュ、またはわさびで臭みを消すと、より日本酒に合わせやすくなりますよ。
まとめ
難易度が高いので普段はあまりやらない「ギャップ」系のペアリングでしたが、まずまずでしたね。
これでいけるなら最初に除外したフルーティ系の生酒も案外合いそうな気がしてきたな。
古酒も含めて、もう少し深い追及が必要ですね。第二弾、第三弾もやらねば。
それではまた!