料理雑誌の「料理王国」で「SAKE JOURNAL2019-2020」と題して日本酒特集が組まれていましたので読んでみました。
そこから考えたことなどを。
特集:SAKE JOURNAL2019-2020
- Chapter1/ニューワールドSAKEの台頭
- Chapter2/進化するペアリング、次の行方
- Chapter3/自然派ワインとクロスする美学
以上3つのチャプターに分けて構成されています。
どれも最先端の日本酒事情を知るという意味では大変面白いんですが、すべてについて書いていると非常に長くなるので、ここでは「Chapter2/進化するペアリング、次の行方 」のみ取り上げます。
Chapter2/進化するペアリング、次の行方
独創的で自由な発想
ペアリングの実例が紹介されているのは中目黒の「日本酒とうなぎ 翏(りょう)」、下北沢「サーモン&トラウト」、日本酒ソムリエのてるじい氏が手掛けた春霞とのイベントの再現レポートなど。
皆さん、さすがに百戦錬磨の手練れというか。豊富な経験に裏打ちされた独自のペアリングの理念を持ってらっしゃる。
特に目を引いたのが洋酒とのブレンドや異なる日本酒のブレンドなどが多く紹介されていたこと。
日本酒ペアリングはどんどん自由になってきているなあ。すごい。
千葉麻里絵氏の対談
そして、日本酒ペアリングの第一人者である千葉麻里絵さんとコーヒーのスペシャリスト丸山健太郎さんとの対談も非常に興味深い内容。
彼女が最近凝っているのが日本酒でコーヒーをドリップすることとか。
自分もコーヒー燗くらいはやるけど、ここまで行くとフリーダム極まれりだわ。
で、そのあたりを軸にコーヒーのスペシャリストとペアリングや成分についての話が展開されます。
日本酒に限らずペアリングに興味がある人ならこれは必読です。
感じたこと
高度なペアリングに対する違和感
全体を通してペアリングを研究する人間としては非常に勉強になりました。
いずれも垂涎ものですぐにでも食べに行きたい気持ちに駆られます。読んで味を想像するだけでも楽しいし。
でも、どこか違和感がぬぐえない。なんだろう?
そもそも、食に対してハイブローな層を狙った雑誌なので当然と言えば当然ですが、ここではその店でしか味わえない高度なペアリングがたくさん紹介されています。
ハイレベルかつピンポイントなペアリングを創造していく取り組みは先駆的チャレンジという意味でも有意義なものです。
上の枠をどんどん押し広げていくことで、道ができ、後から追従することが容易になりますからね。
しかし、紹介されているお店は決して気楽に行けるような大衆的な店ではありません。地理的にも訪問が難しい人は多いでしょう。
うーん、果たしてそれでいいんだろうか?
店のペアリングは自宅で再現ができない
仮に店に行けないなら家で再現すればいいじゃん、とも思いますが、それは事実上不可能です。
紹介されているのと同じ酒を買って、同じような料理を作ったとしても針の穴を通すようなギリギリのバランスで成り立ったペアリングゆえ、同じ味わいになることは絶対にありません。
まあ、だからこそ店に行く理由にもなるのですが。
誰もが気軽にできるペアリングを
これじゃ、せっかくの素晴らしいペアリングであっても、限られた人だけが享受するだけで終わってしまう。それは非常にもったいない。
ここが違和感の原因でした。
そこで、はたと気が付きます。私がすべきは、これらのペアリングからヒントを読み取って標準化することだと。
目指すべきペアリングの方向性
日本酒ペアリングの楽しさをより多くの人に知ってもらい、誰もが気軽に楽しめるようになって初めて日本酒のぺアリングが一般化し、広がりを得るはず。
それを念頭に置けば、ハレの日に行くレストランでしか味わえないペアリングよりも、晩酌で気軽に楽しめるペアリングにこそもっと力を入れていくべきなんじゃないかと。
もちろん、再現性があって合わせる幅が広いペアリングは、簡単である反面、店に比べて味のレベルは落ちるでしょう。
そこはトレードオフなので仕方ないですよね。
店には店の役割があるし、大衆的なペアリングには大衆向けなりの役割があるんだから、同時並行で進んでいけばいい。
というわけで、今後は分かりやすいカジュアルなペアリングを多く紹介していきたいと、あらためて思った次第。
それではまた!