飲兵衛の皆さんは、自分も簡単にアルコール依存症へ陥る可能性があることは、なんとなくご存知のことと思います。
では、実際どの程度までなら問題はないのか。今の自分の飲み方で依存症になる危険性はあるのか。知りたいところですよね。
アルコールの毒性
アルコールが危険な飲み物であることは私なんかに言われるまでもなく重々ご承知のことでしょうけど、今一度簡単におさらいしてみましょう。
健康障害
肝臓でアルコールが代謝される際に中性脂肪が蓄積し、脂肪肝や肝硬変などの肝臓障害が引き起こされます。これは良く知られたところです。
しかし、これに留まらず、糖尿病や膵(すい)炎などの膵臓障害のほか、消化管、循環器系、脳、末梢神経障害など、全身の臓器に障害が現れます。
もちろん、これは行き着くところまで行った結果ではありますが、知らない間にじわじわと進行していき気が付いたら手遅れになっていることが非常に多い。これが実に厄介。
毎年の健康診断で何らかの異常を発見したら、まずはアルコールを疑って医師に相談されることをおすすめします。
精神障害
健康障害はもちろん恐ろしいですが、さらに脳が委縮し、合併症として精神にも多大な悪影響を及ぼすのが困りものなんです。うつ、不眠、妄想、徘徊、不安障害、幻覚、自律神経失調、摂食障害などなど、まさにオンパレード。
こうなると社会的な影響も大きく、家庭や仕事を失うことも珍しくありません。
これらも健康障害と同じく、いつの間にか進行して気づいたら手遅れ、泥沼から抜け出せなくなっているので非常に怖い。
ですから、そうなる前に自分の酒の飲み方をちゃんと把握して、危険水域には足を踏み入れないようにすることが肝心なのです。
ボーダーラインを知る
では、どこからが危険水域となるのか。
これは人によるので一概には言えませんが、ある程度の指標はあります。
医学的な推奨値
医学的には日本酒換算で1日1合までが健康維持のための推奨値とされています。
長期に渡ってこの推奨値を超えた飲酒を続けることで、じわじわと体が蝕まれ、様々な疾患へのリスクが飲まない人に比べて何倍にもなります。
ちなみに、毎日3合程度を10年間飲み続けると、確実にアルコール依存症になるという説もあります(高齢者・女性の場合はもっと少量)。
推奨値は確率論
先ほど書いたように長期的な視野に立って健康上のリスクを考えれば、1日1合以上飲むべきではありません。
とはいえ、飲兵衛としては正直1合なんてあり得ないですよね。こんな量だったらむしろ飲まないほうがマシ(←じゃあ飲むな)。
飲むための言い訳めいてきますが、これはあくまで「確率論」なので、普段から推奨値以上の量を飲んでいても特に病気にもならずに天寿を全うする人だって少なくないわけです。
なので、どうしても飲みたい私のような呑み助はもう割り切って、病気になったら運が悪かったと思うしかないですね。だって酒が好きなんだもの。
まあ、軽度の健康障害であれば、まだ治療法もあるし、何とか取り返しがつくので騙し騙し飲み続けることは可能です(重篤であれば一発アウトですけど)。
ただ、「依存症」となると話は別。こっちはもっとわかりやすく早いタームで精神が蝕まれますし、一度依存症と診断されて治療に移れば、一生酒を飲むことはできません。
ということで、以下より「依存症」にならないためのラインを探っていこうと思います。
依存症の定義
診断テスト
そもそもアルコール依存症の診断基準は何なのでしょうか。いろいろな診断テストが存在しますが、ほとんどは予防的観点からも厳しめに作ってあります。
(「アルコール依存 診断テスト」 などでクググればたくさん出てきます)
それらに依ってしまうと、酒好きはほとんど依存症認定されてしまうので、ここではあえて私の経験を基にした独自の判断でいきます。
飲酒のコントロールができない
依存症を一言でいうなら「飲酒のコントロールができない状態」です。
今は飲むべきじゃないと頭ではわかっていても我慢できない。
ひどい例では仕事中に隠れて飲んでしまうなんてケースもあります。さすがにそこまでじゃないよー、という人も安心はできません。
1杯だけ、と決めていたのにもう1杯飲んでしまうのも、コントロールができていない状態と言えます。そんな大げさな(笑)と思うでしょ?でも、この状態はすでに依存症の入り口に足を踏み入れているのです。
アルコール依存症は否認の病
アルコール依存症の人って自分が依存症だと認めようとしないんですよ。心の中では「もしかしたらヤバいかも…」と思っているんですが、怖いし認めちゃったら飲めなくなるから、まずもって認めない。
いつでも止められるし~とか、毎日飲んでないから大丈夫~とか、知人のもっとひどい酒飲みを引き合いに出して、アイツに比べたら可愛いもんだ、とか。そんな様々な理由をつけて飲み続けるんです。
これ、ヤバい傾向ですからね?思い当たる節ありませんか?
個人の性格は関係ない
なお、かつては、個人の意志の弱さや道徳性の欠如によって依存症になると言われてきましたが、近年では否定されています。
依存症はアルコール摂取そのものが引き起こす病。つまり、アルコールを飲む人であれば誰しもがなる可能性があるのです。
ですから、自分は意志が強いほうだし、しっかりしてるから大丈夫!なんてのは通用しません。
危険なサイン
その他にも危険なサインはいくつかあります。以下のいずれかに当てはまるようなら、自分は依存症に片足を突っ込んでいるものと思ってください。
- 決めた量で止めることができない。
- 最近、飲酒量が増加してきた
- 以前より酔わなくなってきた
- 飲酒が習慣化してきた
- 普段からなんとなく不安感や焦燥感、イライラ、緊張などがあるが飲むとそれが薄れて楽になる
- 寝る前に飲むとよく眠れる
それぞれ解説していきましょう。
1.決めた量で止めることができない。
これは前述した通り、コントロールを失っている状態ですね。
プラス一杯程度で済むならいいんですが、たいていの場合はエンドレスに飲み続けて手元の酒がなくなるか、泥酔してダウンするまで飲んじゃう。
こういう人、結構いますよね。
実は私もこれに当てはまるんですが、もうアルコールに脳がやられはじめている証拠です。マジで危機感を持ちましょう。
2.最近飲酒量が増加してきた
健全な飲酒をしている人の場合、機会によって多少の前後はあっても、だいたい飲む量は一定です。
しかし、最近やけに量が増えたなあ、という人は要注意。耐性がついて以前と同じ量では酔わなくなっているために、ついつい量が増えていきがちなんです。
3.以前より酔わなくなってきた
これも同じです。耐性がついてしまったということ。
酒に強いほどアルコール依存症になりづらいかというと決してそんなことはありません。飲めば飲んだだけリスクは上がります。むしろ、弱い人のほうが少量で済むので体には優しいのです。
酒に強くなった!って喜んでる場合じゃないですよ?
4.飲酒が習慣化してきた
以前は飲み会の時しか飲まなかったのに、今は日常的に飲むようになってませんか?
晩酌くらい普通だろ?って思いますよね。確かに、適量を守ってコントロールできていれば問題はありません。
しかし、飲酒が習慣化するとそこから耐性(また出た!)がついて、徐々に量が増えていくことが多いのです。そもそも日常的に飲むということは累積の量としては明らかに増加するわけですから充分気を付けてください。
5.普段からなんとなく不安感や焦燥感、イライラ、緊張などがあるが飲むとそれが薄れて楽になる
これに当てはまる人は相当危ない域にいると認識したほうが良いです。
友人との楽しみのためとか、食事をより美味しくいただくためとか、そういうポジティブな理由であれば、まだ抑制が効きやすいんですが、こういった不快な気分を緩和するために飲むのは完全に依存へのプレリュードであり、これが根底にある場合、抜け出すのが困難になります。
人は不安や辛いことから逃れたいと思う生き物です。
アルコールにはリラックス(弛緩)効果があり、そういった不快な気分が一時的にでも緩和するので、ついつい飲んでしまう。
わかります。わかりますが、そこが落とし穴。
アルコールの弛緩効果はあくまで一時的なもの。むしろ、長期的には肉体にも精神にも悪影響しかありません。
嫌なことがあると「飲まなきゃやってられない!」とヤケ酒をあおったりしますが、たまにならまだしも、これが常態化するとどんどん量が増えて依存症まっしぐらなので、別のストレス解消方法を見つけるようにしましょう。
6.寝る前に飲むとよく眠れる
ナイトキャップってやつですね。
確かに寝入りは良くなるんですが、睡眠の質は落ちます。眠りが浅くなるそうです。そして寝覚めが悪く、翌日に疲れが残りやすくなります。
でも、飲まないとなかなか寝付けないんだよなあ、という方。依存症の入り口に立ってます。
先ほども書いたように、不快な状況を解消するために飲むのは依存状態に陥るリスクが高くなります。
そして、日常的に飲酒量が増えてくるとむしろ不眠が進行します。そこに気づかない人が多いんですよね。
飲む→眠れた!→不眠が進む→眠れない→飲む→眠れた!→さらに不眠が進む
こんな悪循環に陥ってしまうのです。
取り返しがつかなくなる前に、不眠対策は別の健康的な方法を模索しましょう。
まとめ
結局のところ、具体的にどのくらいまでなら飲んでいいのかと問われれば、医学的には1日1合までだし、1日3合以上を10年続ければ、恐らく、いや確実に依存症になるというのが答えです。
長年そのくらい飲んでるけど普通に日常生活送れてる人いっぱいいるよ!って思うかもしれません。でも、そういう方々は自覚がないだけで、恐らく軽度(以上)の依存症であることがほとんどだと推測されます。
そういう方は青年期は何ともなくても、前期高齢者に差し掛かったくらいから臓器へのダメージが顕在化してくるんじゃないでしょうか。まあ、長生きはできないでしょうね。
いずれにしろ、量的な指針は別にしても、今現在でここに挙げたような危険な兆候が見られたなら、絶対に現時点での量でストップすべきです。
大好きな酒を長く楽しみたいのなら、ここからの酒量の増加はなんとしても避けなければなりません。
体のことを考えるなら、バシっと断酒するのが一番いいのですが、飲兵衛さんにとってそれは酷でしょう。
そこで、キープもしくは減酒という選択になると思いますが、それって実は断酒より難しかったりもするんですよね…
そのあたりのことは次回詳しく書こうと思います。
それではまた!