西荻窪にある燗酒と羊肉が売りの、その名も「カントニクス」さんにお邪魔しました。
土日は14時から営業という飲兵衛狂喜の酒場。
15時半にお邪魔しましたが、17時過ぎに退出するころには他に7人くらいお客さんがいて、人気の店であることがわかりました。
お通し
まずはお通し、「菜の花のワイン蒸し」。
なにこれ。のっけから美味すぎ。
その名の通り菜の花を白ワインで蒸したものですが、チーズが結構主張してくるのと、絶妙な塩気のある何かがわずかに入っている。
最初は味噌かな?と思ったんですが、聞いてみると醤油粕とのこと。
恥ずかしながら初めて食べました!
ほどよい発酵具合と塩気、粕というにはもったいないくらいの調味料ですよこれは。
で、これに合う酒ということで一発目に出てきたのが「旭菊 大地」。
いいですねえ。大好きな酒です。
クセがなくて万能型。どんな料理にも寄り添うポテンシャルがある酒。
蔵としても半年以上は熟成してから出荷しているんですが、個人的には3年くらい寝かせたほうがより柔らかさが増して好きです。
お通しのチーズの風味とばっちり合いました。
ババガヌーシュ
お次はおつまみ3種(1000円!)
右から、「ババガヌーシュ」「ティラミソ」「筋子の燻製」。
筋子はともかく、他二つはなんのこっちゃですよね。
まず、ババガヌーシュってのはシリア、イスラエル、パレスチナあたりで食されている前菜で、焼きナスをゴマのペースト、オリーブオイル、各種調味料と合わせて作るものだそうです。
当然初体験なわけですが、ポイントは何といっても上にかかっているクミンをメインとするスパイスですね。
クミンの他に何が入っているのかは聞けませんでしたが、これ好きだわ。気に入りました。
合わせたのは「杉錦 山廃純米原酒 十年古酒」。
実のところ「ティラミソ」に合う酒を、ということでオーダーした酒だったんですが、ババガヌーシュのスパイス感と完璧にマッチ。
やはり、スパイスと古酒は鉄板です。
ティラミソ
そして、気になるティラミソ。
オーダーする前に「これ、どういうものですか?」と聞いたら「ティラミスっぽい味噌です」とのこと。
そのまんまじゃねえか!全然わかんねえよ!チクショウ、とにかく食ってみろってことだな。
ということで、食してわかりました。…これはティラミスっぽい味噌です。
結構発酵が進んだ味噌に淡泊なマスカルポーネを合わせて塩辛さを和らげたものですね。
味噌の焦げっぽい風味と古酒の焦げ感が何の違和感もなくマリアージュ。さらに燗なのでマスカルポーネが程よく溶けていくんですね。
うーむ、美味いわ…。
羊のカルパッチョ
さあ、いよいよメインとも言える料理に。羊のカルパッチョです。
乾煎りしたクミンがふんだんにトッピングされており、ラムの臭みはゼロ。
噛むほどに肉の旨味が染みだして至福の時間。
これに合わせるは、当サイトでもお馴染みの「生酛のどぶ」。
もうね、スパイスと濁りってのは間違いないんですよ。
わかってんなあ、店主。
とはいえ、個人的にはクミンの存在感に対抗する別のペアリングも試したくなったので「竹鶴 生酛純米」の9年熟成を頼んじゃいました。
なるほど、これも合う。
古酒感はかなりあるものの、八反錦を使用してることもあって、思ったより軽くてキレがよかったですね。
「睡龍 涼」の古酒にも似た感覚。
羊リーダニョー
次でラスト。
ええと、リーダニョーとは何ぞや…。とりあえずホルモンであることはメニューにも書いてあったんですが、詳しくは分からない。
ググってみると、どうやらフランス語で仔羊の胸腺のことみたい。
ちなみに仔牛の胸腺はリードヴォーと言うそうです。これは聞いたことある!
で、出てきたのがこれ。4つかあ…正直、ちょっと寂しいな。
希少部位なので恐らく原価が高いんでしょう。だから仕方ないんですけどね。
ただ、味はちゃんと美味しかったです。柔らかくて、全くクセがなく淡白。レモンをかけるとまるで白子のよう。
これに合わせるは「開春 生酛 おりがらみ無濾過生」。
どっしり系の燗酒だらけのラインナップの中では、明らかに浮いてる存在。
でも、これももちろん燗です。
生酒の燗ってテクニックが必要なので、これを出してくる店はそれだけ手練れってことです。
しかも、常温で置いてあるあたりが流石ですよね。
当然、リーダニョーとばっちりの相性でした。
まとめ
料理はいずれもレベルが高く、独創性もあって楽しかったです。
酒も燗酒ファンは納得のラインナップだし、こりゃ人気出ますわ。
かつては爺くさいイメージのあった燗酒ですが、この日は女性が約半数。
店主によると、土日の昼飲みには女性のおひとり様もよく来店されるとか。
こういう店を通じて燗酒のイメージが変わりつつあるのは素晴らしいことですね。
それではまた!