えーと、本日は昆虫です。昆虫に日本酒を合わせるという暴挙に出たいと思います。
そもそも、なんで昆虫なのか。未来のタンパク源とかいろいろ言われてますが、私の場合は単純に未知の世界に興味があっただけです。
母親が長野の人間なので、蜂の子とかイナゴの佃煮とかは子供のころに何度か食べてて、まあそれほど抵抗はないんですよね。ただ、弁当のご飯の上にイナゴが鎮座している姿は中学生にはショッキングだったようで、教室中が騒ぎになったことを覚えています。自分も開けるまでまさか弁当にブッこんで来るとは思ってなかったので多少たじろぎましたが。お茶目なママだぜ…。
TAKEO
さて、今回は上野から銀座線で一駅、稲荷町にある「TAKEO」さんの実店舗へお邪魔してきました。こちらの会社は以下のような思いとコンセプトで運営されているようです。
基本は「昆虫が精肉、鮮魚、青果と同じように家庭の食卓で楽しまれる社会」を目指す姿としています。
合同会社TAKEO 会社情報
なかなか先は長いと思いますが、日本酒と合うということが分かれば微力ながら昆虫食が広がる一助になるんじゃないかな、と考え今回の記事をアップさせていただきます。
稲荷町から300Mほど歩いたところにお店はあります。知らない人が見たら一瞬目を疑う立て看板。
中に入るとこじんまりとした店で、基本はこの棚とレジカウンターがあるのみ。
ディスプレイされていたゲンゴロウや幼虫ミックス、オケラは品切れだそう。あとタランチュラも買えたら欲しかったんですが、こちらも品切れ。まあ、肉や魚と違って流通量が少ないし、輸入モノですから安定供給は難しいんでしょう。
で、今回はキョクトウサソリとベーシックなコオロギを購入。サソリってどんな味なんだろう。すごくワクワクします。
コオロギアイスもなか
それから、せっかくなので店頭購入限定の「コオロギアイスもなか-しょうゆ味-」もいただきました。
見よ、このヤバいビジュアルを!店員さん!虫が!虫がついてます!交換してください!と言いたくなりますが、ここでキレるのは不条理そのものなのでぐっと堪えます。
食べてみると、拍子抜けするくらい違和感がない。もっとコオロギが主張してくるのを期待しましたが、サクサクの食感と香ばしさがしょうゆダレとマッチしてすげえ美味しい。もしお店に行くことがありましたら是非。
まずは試食
とりあえず、味が分からないことには酒を選択できませんので、試食してみます。
最初はコオロギから。カリッとした食感。ほんのり塩味にエビにかなり近い旨味。後味で若干独特のクセは感じますが、全然食べやすい味わい。
次はサソリを。基本的にはコオロギと似てますね。ただ、後味はこちらのほうがクセが強い。
うーむ、これは思った以上に日本酒と相性が良さそう。
合わせる日本酒を考える
一番のポイントになるのは、香ばしさですね。熟成系の焦げ感と相性がいいはず。
味自体はシンプルで素材の風味に塩でアクセントをつけているだけなので、あまり主張が強い酒だと昆虫が負けてしまいます。
あとは酸の存在。ここでは酸はちょっと邪魔者になる気がします。
まとめると「熟成系」「強すぎない強度」「酸弱め」という条件が出そろいました。
豊國 ひやおろし
そんなわけで、今回選んだのは福島の「豊國 ひやおろし」です。
控えめな香りと弱い酸、ひやおろしならではの熟成感。福島酒にしてはどっしり系ではありますが、それでも山陰や関西の熟成酒に比べたらずいぶん軽い。
冷酒も悪くないですが、やっぱり燗ですねえ。旨味の広がり方が素晴らしい。少し高めに燗付けすると、むしろ常温よりも軽くなってすっきり飲めます。
なお、福島には豊国酒造が二つありまして、それぞれ何の関係もない別の酒蔵です。今回のは会津坂下町にあるほうの酒造でございます。
実食!
コオロギを2匹ほどつまんで口に放り込みます。匂いも特になく、カリカリとした食感から香ばしい旨味が。先述したように、若干のクセはあるんですが、食べ続けていると馴れて全く気にならなくなります。
で、高めに燗を付けた豊國を一口。あー、めちゃめちゃ合いますね。間違いない。後味のやや焦げた感じも同調しますし、酸が主張しないのでちょうど昆虫の美味しさが引き立つ感じ。
そう、今回発見だったんですが、昆虫はちゃんと美味しいんですよ。物珍しさから始めた企画ですが、食べてみたらちゃんと旨みを持っていて素晴らしい味わい。
ちなみに、少量のカルダモンとクミンを振りかけると最高のつまみになりました。
スパイスと昆虫は相性が良い。スパイスと日本酒も相性が良い。ということは、スパイスで風味付けした昆虫と日本酒は最高ってことですよね。
実際、プレーンの状態で食べるよりスパイスを使ったほうがより昆虫の味わいを引き出せている感じがします。
まとめ
その強烈なビジュアルにひいてしまいがちですが、実際食べてみてポテンシャルの凄さに驚きました。冗談抜きで、未来の食卓の主役になっていてもおかしくない。
もちろん、日本酒との相性なんてわざわざ私が語るまでもないくらい、かなりのハードルの低さ。つまり、そんなに深く考えずとも大抵の日本酒と合ってしまうということです。
そして、再度書きますがスパイスとの相性の良さは特筆もの。ここはもっとスパイス料理の専門家が首を突っ込んで考えていくべきではないでしょうか。
私も今回のみのネタとして終わらせることなく、スパイスを絡めつつもう少し深入りしていきたいなと思った次第。
それではまた!