スパイス/エスニック

パクチー嫌いがバインミーと日本酒を合わせてみた

banhmi

最近、じわじわと人気が出てきている「バインミー」。これが意外にも日本酒と好相性なんです。

バインミー

というわけで、今回の日本酒異種格闘技戦はベトナムのサンドイッチ、バインミーです。私も初めて食べます。

実は私、パクチーが大の苦手でありまして…。パクチーとゴキブリはこの世から消え去ってほしいと常日頃から神に願っているくらい嫌いなんですが、実はパクチーと日本酒は合うという噂を聞きつけたため、日本酒ペアリングの発展に繋がるならと身を挺してバインミーに挑んだわけです。不安しかねえ。

バインミーという名前の意味

まずバインミーの意味ですが、ベトナムでは本来「フランスパン」の総称で、今回取り上げるようなサンドイッチは「バインミーサンドイッチ」と呼ばれることが多いようです。

バインミーってどんなもの?

定義としては、チャーシュー、レバーペースト、ベトナムハム(魚肉ソーセージやスパムっぽい軽い食感の豚肉のハムでチャールアとも言う)、など肉系の具材ときゅうり、なますなどの野菜を柔らかいフランスパンで挟んだものということになりますか。

調味料にはベトナムの魚醤ニョクマムを使うこともあるようですが、必ずしも必須条件ではないとのこと。

これといった決まりはないようですが、大体上記のような構成になっていることが多いようです。ちなみに具材のポイントになるのは「なます」じゃないかと思うんです。肉のややしっかりした味に対して、すっきりしたなますが良いバランスを生むはず。

そして、忘れちゃいけないのがヤツの存在。そう、パクチー。これが入ってるだけで、世界のすべてが激臭に支配される恐怖。日本酒ペアリングの発展のためとはいえ本当に耐えられるんだろうか…。

O Banh Mi | オーバインミー

今回使わせていただいたのは、昨年11月にオープンしたばかりという、板橋区の大山にある「O Banh Mi」さんのもの。

住所は板橋区大山東町52-14。

オーダーしたのは 「ベトナムハム&チャーシュー(Sサイズで380円)」 。

スタッフは全員ベトナムの方らしいので、どうせ食べるなら味のほうも本格的であることを期待します!パクチーも含めて!チクショーかかってこいや!

とにかく食ってみる

とにかく食べた経験がないので、まずは日本酒のことは忘れて食ってみましょう。

パクチーが怖いので、まずはバゲットだけ少しちぎって食べてみます。外側はパリッとして香ばしく、フランスパンでありながら中はもっちり柔らか。あ、これは美味いかも。現時点では。

しかし、まだ食ってもいないのに、ヤツがふんわりと香って存在をアピールしてきやがる…。俺はここで死ぬのか、まるで戦場で敵に突っ込んでいく前の兵士の心境だ(知らんけど)。いや、ここで怯んだら男がすたる。ええい、ままよ!どうにでもなれ!意を決し、4分の1ほどを口の中に突っ込んで勢いよく噛み切ります。

うわー!!!きたきたくっせー!!これカメムシだろ!!俺いまカメムシ食ってる!!!

と、ここで迷いなく吐き出すのが今までのパターンですが、あれ?いつもと様相が違う。あれ?中の具と一緒に咀嚼すると意外に食える。あれ?どういうこと?

確かに苦手なあのヤバい臭いはあるんだけど、そのままオエっと吐き出すほどじゃない。ていうか、むしろこの不思議な感覚の謎を解くためにもう一度食べたいとさえ思える。どうしたんだ俺!これはもしや克服した?

この謎を解くために、もう一度バクリ。ああ、やっぱり同じだ。しかも二回目で少し慣れてきた。はっきりした理由は不明ですが、どうもパンや具と一緒に食べると気にならなくなるようです。

ベトナムハムに若干エスニックな旨みを感じるのでニョクマムが練り込まれてる感じがあるんですが、もしかしたら、このニョクマムの風味がパクチーと同調して何らかの作用をもたらしている可能性はあります。

ベトナムハムもチャーシューもやや控えめな味付けですが、パンが優しい味なので個人的にはこのくらいがちょうどいい。

そして、思った通りなますがポイントになりますね。日本の正月に食べるようなやたら酸っぱいものではなく、どちらかといえば塩味メインで、こちらもまた優しい味付けなので全体の調和がとれています。

バインミー 五味チャート

一応、いつものように五味を数値化すると塩2 甘1.5 酸1.5 旨3 苦0 って感じですか。

合わせる日本酒を考える

味自体はこれといって突出しているところがなく、むしろ和食にも通じる繊細さがあるため、合わせられる日本酒は多そうです。

なんだかんだ言って、やっぱりキーになるのはパクチーなんですよね。この香りをどう生かすか。もともと避けてきた食材なので、こいつに対する知見は全くないのですが、ハーブには華やかな香りを持つ日本酒を合わせるというセオリーに沿って素直にセレクトしましょう。

というわけで、今回の条件は華やかかつ、濃醇すぎないバランスのとれた酒ということになります。生酒だとボリューム的にも存在感という意味からもバインミーを抑え込んでしまいそうなので、ここは火入れにしてみます。

そして相当広い選択肢から今回選んだのは「六根 純米吟醸 ルビー」

六根 純米吟醸 ルビー

青森県弘前市にある松緑酒造のお酒。六根シリーズは全て宝石の名前がつきます。

火入れにしては香りが華やかでフローラル、そして酸のジューシーさが特徴。開栓直後は甘み抑えめですが、2日ほど置くとぐっと甘みが増して広がります。開けたては開けたての良さがありますが、少し置いて甘みを生かしたほうがバインミーの豚肉と合うだろうと判断しました。

五味チャートは甘3 酸3 旨3 苦0.5。バインミーと合わせるとこんな感じ。うーん、若干味がごちゃつくかな。でもボリュームのピーク値は揃ってるので問題なさそうな気も。

実食!

もうパクチーは怖くないので、一気にかぶりつきます。パンの香ばしくパリッとした食感が気持ちいい。ほどなくして例のパクチーの香り、一瞬ひるむも、やはり中の具と一緒だと不思議とそこまでは気にならないんだよなあ。そして、カメムシの香りが充満している口内にすかさず六根を流し込む。

華やかに香るフローラルな含み香とミックスされることでパクチーがまた別のものになる感覚。おおお、これはいいぞ!パクチーと日本酒が合うというのはウソではなかった!

味としては酒の程よい甘みが豚肉と調和。酸がそれなりにあるので、ここだけ若干同調性に欠ける印象ですが、全体的にはボリュームがそろっているので、嚥下した後はバランスがとれました。

うん、まあまあですね。欲を言うなら、もう少し酸が弱い日本酒だったら完璧だったかも。もしくは、なますの酸がもう少し強ければ、六根の酸と完璧に同調できたかもしれません。

※あくまで、この六根と合わせるという観点での話です。このバインミー自体は非常にバランスが良く美味しい味付けですので。念のため。

まとめ

ベトナム料理は案外繊細なので、日本酒とのペアリングは非常に可能性を感じます。バインミー自体、都内でもいろいろお店があるようなので機会があれば食べ比べてみたいと思います。

そして、個人的にはパクチーを克服できた(かもしれない)のが一番のトピックですね。まだ自分でもちょっと半信半疑なので、少しずつチャレンジしていきたいなと。

それではまた!