いわゆる辛口の日本酒って個人的には味わいが単調であまり好みではなかったんですが、合わせるつまみ次第では非常に美味しくいただけることに気づきました。
今回はそんな辛口の日本酒に合うつまみを考えていきます。
辛口とは何か
まず辛口、辛口と言いますが、一体どんなものなのか、まずは定義が必要です。
とはいったものの、日本酒業界的にはこれと言った明確な定義はないんですよね。
一応、辛口と銘打っている酒の共通点として「日本酒度が高めでドライ、つまり甘味が少ない酒」ということは概ね言えると思います。
というわけで、これをここでの定義とさせていただきます。
辛口の種類
辛口と一言で言っても、超ドライで舌がビリビリするような辛口らしい辛口もあれば、「むしろこれ甘口だろ!」と言えるものまで多種多様。
ただ、ざっくりとした括りとしては濃醇辛口と淡麗辛口の二種類に分けられます。
日本酒度(≒糖の量)で辛口かどうかを測る人は多いと思いますが、日本酒度が高くてもその他の数値、酸度やアミノ酸度によっては全く味わいが変わります。
濃醇辛口と呼ばれるものは、山陰の酒に代表されるような完全発酵で酵母が糖を食いつくして非常にドライなんですが、酸度やアミノ酸度も高いため味わいとしてはうま味がめちゃくちゃ強いタイプです。
一方で淡麗辛口はかつての新潟酒のようなクリアで水のようなお酒ですね。味わいとしては濃醇辛口とは逆にうま味が少ないタイプです。酸に関してはそこそこ高いものもありますが、概ね低い、つまりさらっとしていて起伏がないシンプルで平坦な味わいと言っても差し支えないでしょう。
もちろん、単純に二分することはできません。その間を行く辛口も多く存在します。ここでは便宜上、普通の辛口と呼ばせていただきます。
ペアリングの方向性
今回は淡麗辛口と普通の辛口をメインに考察したいと思います。
濃醇辛口のほうはうま味の強さもあって、ペアリングの幅が広いんですよ。あんまり深く考えなくても合う料理は多いんですね。なのでここでは対象外とします。
方向としては大きく4つ。同調、寄り添い系、引き立て系、ウォッシュです。
1.同調
同調は日本酒ペアリングの基本です。しかし、淡麗辛口で1対1の同調は非常に難しいのです。
というのも、これに同調させるとなると、かなり薄味でさらっとした味付けの料理ということになりますが、それってあんまり多くないですよね。
ひとまず思いつくのは、白身魚の刺身、冷奴、天ぷらあたりでしょうか。いずれも醤油ではなく塩で召し上がってください。
基本的には素材の味を生かす方向で極々シンプルに味付けしましょう。豆や芋類は特に扱いやすいです。
そうすれば、淡麗辛口であっても素材の味と繊細に同調して、より旨味を引き出すことができます。
2.寄り添い系
変なネーミングですが、要するに料理の邪魔をしない方向でのペアリングということ。
昔ながらの料亭や寿司店などでは日本酒にこういった役割を求めることが多かったようです。
同調は両者が同格のペアリングであるのに対して、こちらは料理が主役で酒は脇役。料理に酒のうま味が若干付加されるイメージ。
ですから、料理の味が多少酒より強くても問題ありません。
3.引き立て系
塩辛い味のアテで、酒の甘みを引き出すペアリングです。
古式ゆかしき日本酒ペアリングの手法と言っていいでしょう。
味噌、塩辛、魚卵、スルメ、その他珍味系など塩味とうま味が強いものが最適。
塩気による対比効果で日本酒の甘みが際立つようになります。
こちらは寄り添い系とは逆に、酒が主、料理が従です。
4.ウォッシュ
油っぽさを流し、臭みを消すペアリング。
揚げ物とビールが最も分かりやすい例でしょう。
チーズ、アヒージョ、揚げ物、鰹、青魚、塩辛など、油っぽい、または臭みがある料理に対して酒を流し込むように飲むと口中がスッキリします。
油っぽい料理に関しての説明はいらないと思います。
魚の臭みについてはトリメチルアミンという物質が原因なのですが、日本酒にはそれを中和する効果があります。
ちなみに、ウォッシュと言っても五味のうちどこか一点は同調している必要があります。例えば、フライにかけたレモンの酸味と日本酒の酸味を繋げるとか、チーズと日本酒のうま味を重ねるとか。
完全に味わいがちぐはぐだと、ただ不快な口中を流すだけの実に味気ないペアリングになります。それこそビールやレモンサワーでいいじゃん、となっちゃいます。
日本酒でこのペアリングを狙う以上は、その点に注意してください。
メニュー例
どれも超簡単なもので考えてみました。
塩辛じゃがバター
狙い
塩辛の塩気で日本酒の甘みを引き出し、じゃがいものシンプルな味わいと酒全体が同調。さらにバターの脂っぽさをウォッシュしたうえで塩辛の臭みを日本酒が中和し、うま味だけが残る。
作り方
1.ジャガイモを半分に切る
2.濡らしてからラップで包みレンジで3分
3.バターと塩辛を乗せる
カマンベールなめろう
狙い
味噌の塩辛さで酒の甘味を引き出し、チーズのうま味を同調させる
作り方
1.ネギをみじん切りにする
2.ネギと味噌と日本酒ほんの少しをまぜまぜする
3.カマンベールチーズを4つ割にする
4.カマンベールに2を乗っける
あさりのナンプラー酒蒸し
狙い
ナンプラーの塩辛さで日本酒の甘みを引き出し、同時に魚臭さは日本酒が中和。さらにナンプラーとアサリのうま味が同調。
作り方
1.洗ったあさりを耐熱容器に入れて酒大さじ1をかける
2.ニンニクをスライスして適当に散らす
3.ラップしてレンジで3分。※様子見つつ口が開いたら止めてOK
4.ナンプラー小さじ1を回しかける
※お好みでネギやパクチーなどを散らす
梅醍醐
狙い
梅干しの塩辛さと酸味が日本酒の甘みを引き出し、カマンベールのうま味が同調する。
作り方
1.梅干し1個をたたく
2.カマンベール1/4と梅干しを一体化するまでしっかり混ぜる
3.大葉の上に盛り付ける
まとめ
スーパーなどでは日本酒初心者を翻弄するがごとく辛口の二文字が跋扈しています。
そのわりにペアリングについてあまり深く考察されることは少なかったのではないでしょうか。
間違いないのは昔ながらの「引き立て系」ですね。塩辛いつまみを合わせれば確実に失敗はしません。
しかし、それだけじゃ面白くないので、この記事をヒントに辛口にも合う料理を各々考えてもらえれば幸いです。
それではまた!