定番商品である奈良の春鹿 超辛口ですが、限定商品として中取りがでてたので試してみました。
インプレッション
一瞬、生かと思うような芳香、超辛口という単語に引っ張られるが、含むとアタックは極めてマイルドで同時に辛みも感じる二層構造。
酸は尖っておらず、芳醇な旨味と同化している。そしてその名に恥じぬ粛然としたキレ。
中取りゆえか雑味も少なく格の高さを感じさせる。例えるなら、伝統ある良家出身の品の良い50代男性のような。骨太さと上品さを併せ持つ逸品。
五味チャート
数値化すると甘2酸1.5旨3.5苦1。
ポイントはほどよい苦味の存在。これがあるとないとではキレが全く変わってくると思われます。
データ
アルコール度数:16%
精米歩合:60%
原料米:五百万石
※生詰(一回火入れ)・湯煎瓶燗
飲用温度
瓶燗と急冷の技術のおかげかフレッシュで生っぽい風味も残っているのでファーストチョイスは冷酒でキリっと。
でも、この柔らかさを活かすなら常温・燗も全然アリ。40℃くらいのぬる燗で、全体の流れがスムーズになり一体感が出ます。
合わせるつまみ
濃醇というほどではないですが、そこそこパンチがあるのとキレが良いことから、フライなんかいけるんじゃないかと。
そんなわけで日本酒と相性の良いアジフライにしてみましょう。
わさび漬けタルタル
で、問題はソース。ここでウスターにするか中濃にするか、はたまた醤油にするか、レモンをかけるか。ソースが違うだけで同じフライでもペアリングの結果が全く変わってきます。
今回はちょっと変化球で「わさび漬けタルタル」をかけていただきました。
作り方はわさび漬けとマヨネーズ 1:1を混ぜ混ぜ、そこに醤油を少々垂らしてさらに混ぜるだけ。超簡単。
わさびってある意味日本酒ペアリングにおけるドーピング食材なんですよね。わさびを加えるだけで、ほとんどどんな料理も日本酒と合っちゃうからずるい。
ちなみにアジフライはスーパーの総菜です。家で揚げるなんて面倒でやってられない。暑いし。
トースターで温めれば余分な水分が飛んで揚げたてみたいにサクっとしますので、これで充分!
ペアリングの所感
まず食感が面白いですね。アジフライのサクサク感と刻みわさびのカリっと感が同時にやってきて脳を刺激します。
やや遅れて、わさびのツンとした香味。これがあるだけで日本酒を引き寄せますねえ。やっぱりわさびはずるい。
酒を含むと旨味の部分で同調し、最後の脂っこさを軽い苦みとキレでスッと流してくれます。
両者を合わせた五味チャートを見てわかる通り、強度がぴったり合っていてバランスが取れていますね。
表向きは塩気と甘みが絡み合って、その後に旨みがピタッと同調する構造ですが、裏方というか土台として酒の酸とマヨネーズの酸がリンクしているのがポイントです。
この土台がないと上に乗っかる味わいがチグハグになってしまいますから、目立たないけどとっても大切。
まとめ
濃すぎず、中くらいの強度でなおかつキレがいい日本酒は魚のフライによく合います。
フライっていうと、サクサクのテクスチュアと最後のウォッシュ効果から、安直に発泡系の活性濁りなんかを合わせがちですが、今回のように春鹿とか船中八策のようないわゆる超辛口を合わせるのもおすすめですよ。
ソースはお好みに合わせてウスターや中濃などをチョイスしても問題ありません。
酒が思いのほかフルーティだったりする時はレモンをかければ相性が高まりますから、うまく調整してみましょう。
それではまた!